「可笑おかしいねえ
年としも違ちがえば故郷こきょうも違ちがう
もとは他人たにんの男おとこと女おんなが
今いまでは夫婦めおと 鴛鴦おしぐらし
お前まえさん寒さむくはないかい
それとも想おもい出だしているのかい
ふるさとをさ」
堅気かたぎ育そだちも 重かさなる旅たびに
いつか外はずれて 無宿者むしゅくもの
知しらぬ他国たこくの たそがれ時どきは
俺おれも泣なきたい ことばかり
染しまぬ縁談はなしに 故郷こきょうをとんで
娘むすめざかりを 茶屋ちゃやぐらし
茶碗酒ちゃわんざけなら 負まけないけれど
人情にんじょうからめば もろくなる
「あんなやくざみたいな男おとこの
どこがよくって惚ほれたのさって
世間せけんの人ひとは嗤わらうけれど
お前まえさんのホントの値打ねうちは
この私わたしが一番いちばんよく知しっているのさ
お前まえさんだったら
一緒いっしょに死しねるもんねえ」
かたちばかりの おしどり姿すがた
ならぶ草鞋わらじに 風かぜが吹ふく
浮世うきよあぶれた やくざな旅たびは
どこで散ちるやら 果はてるやら
泣なくも笑わらうも ふところ次第しだい
もとでなくした その時ときは
遠慮えんりょいらずの 女房にょうぼうじゃないか
丁ちょうとはりゃんせ わしが身みを
「可笑okaしいねえshiinee
年toshiもmo違chigaえばeba故郷kokyouもmo違chigaうu
もとはmotoha他人taninのno男otokoとto女onnaがga
今imaではdeha夫婦meoto 鴛鴦oshiぐらしgurashi
おo前maeさんsan寒samuくはないかいkuhanaikai
それともsoretomo想omoいi出daしているのかいshiteirunokai
ふるさとをさfurusatowosa」
堅気katagi育sodaちもchimo 重kasaなるnaru旅tabiにni
いつかitsuka外hazuれてrete 無宿者musyukumono
知shiらぬranu他国takokuのno たそがれtasogare時dokiはha
俺oreもmo泣naきたいkitai ことばかりkotobakari
染shiまぬmanu縁談hanashiにni 故郷kokyouをとんでwotonde
娘musumeざかりをzakariwo 茶屋chayaぐらしgurashi
茶碗酒chawanzakeならnara 負maけないけれどkenaikeredo
人情ninjouからめばkarameba もろくなるmorokunaru
「あんなやくざみたいなannayakuzamitaina男otokoのno
どこがよくってdokogayokutte惚hoれたのさってretanosatte
世間sekenのno人hitoはha嗤waraうけれどukeredo
おo前maeさんのsannoホントhontoのno値打neuちはchiha
このkono私watashiがga一番ichibanよくyoku知shiっているのさtteirunosa
おo前maeさんだったらsandattara
一緒issyoにni死shiねるもんねえnerumonnee」
かたちばかりのkatachibakarino おしどりoshidori姿sugata
ならぶnarabu草鞋warajiにni 風kazeがga吹fuくku
浮世ukiyoあぶれたabureta やくざなyakuzana旅tabiはha
どこでdokode散chiるやらruyara 果haてるやらteruyara
泣naくもkumo笑waraうもumo ふところfutokoro次第shidai
もとでなくしたmotodenakushita そのsono時tokiはha
遠慮enryoいらずのirazuno 女房nyoubouじゃないかjanaika
丁chouとはりゃんせtoharyanse わしがwashiga身miをwo