父ちちと共ともに 城跡しろあとから見みおろす
夕焼ゆうやけが好すきだった
息いきを切きらす 肩かたに置おかれた
手ての体温ぬくもりはもっと好すきだった
ある日ひ父ちちが いつもの気きまぐれに
僕ぼくを抱だきしめたりしたが
そのままじっと 声こえも立たてず
静しずかに泣ないたことがあった
その朧気おぼろげな 記憶きおくがいつか
重おもさを増ますと 知しるはずもなく
幼おさない僕ぼくは 何なにか恥はずかしく
崖がけの淵ふちに咲さいた
薄紫うすむらさきの花はなを じっとみつめていた
早咲はやざきのりんどうと
それは あとで 知しった
僕ぼくが父ちちの 涙なみだを見みたのは
その一度いちどきりだった
祖母そぼを送おくり 友ともを送おくり
その時ときにも涙なみだは見みせなかった
あれ程ほどに 可愛かわいがった妹いもうとが
嫁とつぐと決きめた日ひも
ただおだやかな 父ちちの姿すがたに
僕ぼくはふと あの日ひを思おもい出だした
父ちちといえど 男おとこといえど
時ときのはざまに 落おちる刻ときがある
今いまとなれば わかることがあり
そっと胸むねが つまる
花嫁はなよめの父ちちが今いま 少すこし照てれた背中せなかで
娘むすめから花束はなたばを 贈おくられているところ
薄紫うすむらさきの花はなが じっと見みつめていた
遅咲おそざきのりんどうと
それは すぐに わかった
父chichiとto共tomoにni 城跡shiroatoからkara見miおろすorosu
夕焼yuuyaけがkega好suきだったkidatta
息ikiをwo切kiらすrasu 肩kataにni置oかれたkareta
手teのno体温nukumoriはもっとhamotto好suきだったkidatta
あるaru日hi父chichiがga いつものitsumono気kiまぐれにmagureni
僕bokuをwo抱daきしめたりしたがkishimetarishitaga
そのままじっとsonomamajitto 声koeもmo立taてずtezu
静shizuかにkani泣naいたことがあったitakotogaatta
そのsono朧気oborogeなna 記憶kiokuがいつかgaitsuka
重omoさをsawo増maすとsuto 知shiるはずもなくruhazumonaku
幼osanaいi僕bokuはha 何naniかka恥haずかしくzukashiku
崖gakeのno淵fuchiにni咲saいたita
薄紫usumurasakiのno花hanaをwo じっとみつめていたjittomitsumeteita
早咲hayazaきのりんどうとkinorindouto
それはsoreha あとでatode 知shiったtta
僕bokuがga父chichiのno 涙namidaをwo見miたのはtanoha
そのsono一度ichidoきりだったkiridatta
祖母soboをwo送okuりri 友tomoをwo送okuりri
そのsono時tokiにもnimo涙namidaはha見miせなかったsenakatta
あれare程hodoにni 可愛kawaiがったgatta妹imoutoがga
嫁totsuぐとguto決kiめたmeta日hiもmo
ただおだやかなtadaodayakana 父chichiのno姿sugataにni
僕bokuはふとhafuto あのano日hiをwo思omoいi出daしたshita
父chichiといえどtoiedo 男otokoといえどtoiedo
時tokiのはざまにnohazamani 落oちるchiru刻tokiがあるgaaru
今imaとなればtonareba わかることがありwakarukotogaari
そっとsotto胸muneがga つまるtsumaru
花嫁hanayomeのno父chichiがga今ima 少sukoしshi照teれたreta背中senakaでde
娘musumeからkara花束hanatabaをwo 贈okuられているところrareteirutokoro
薄紫usumurasakiのno花hanaがga じっとjitto見miつめていたtsumeteita
遅咲osozaきのりんどうとkinorindouto
それはsoreha すぐにsuguni わかったwakatta