おやじ 歌詞 海援隊 ふりがな付

男おとこはやっぱり馬鹿ばかやなと思おもいます。
おやじを見みながらづくづく男おとこは馬鹿ばかやなと思おもいます。
苦にがい酒さけを苦にがい顔かおして飲のんで、
本当ほんとう馬鹿ばかやと思おもいます。
そして僕ぼくもおやじに似にてきました。
だんだんおやじに似にてきました

病院びょういんのベッドに腰こしをおろし
親父おやじは笑わらって僕ぼくを待まってた
旅たびの途中とちゅうの僕ぼくを見みつめて
親父おやじは静しずかに うなずいている

どげんしたとね! どげんしたとね!
とうちゃんくさ。あんまり酒さけば飲のむけんたい、
こげん体からだば悪わるうしようが、あんた。
近所きんじょの人ひとは皆みんな言いいよんしゃんとよ、
とうちゃんの横よこじゃタバコも喫すえんちて、
体からだん中なかにアルコールが一杯いっぱいたまっとるけん
タバコの火ひがうつって爆発ばくはつしたら大事だいじって、皆みんな笑わらいよんじゃが。
とうちゃん憶おぼえとうね、給料きゅうりょうば全部ぜんぶ飲のんで帰かえってきた日ひのことば。
俺おれらまだ小学生しょうがくせいやったよ。かあちゃん頭あたまにきて、
こげなとうちゃんやったらいらんけん、もういっそのこと、
もういっそのこと亡なきものにしてしまおうて言いったとよ。
ちょうど今いまネクタイばしめて酔よいつぶれとるけん、
母ははと子こ、力ちからばあわせて両方りょうほうからしっかり引ひっぱって、
始末しまつしてしまおうって言いったとよ。
そうばってん、俺おれら泣なきながら止とめたっちゃが。
明日あしたが小学校しょうがっこうの父親ちちおや参観日さんかんびの日ひやけん、明日あしたまで待まってちゅって、
俺おれら必死ひっしになって止とめたっちゃが。
男おとこやったら勝かたなつまらん、男おとこやったら天下てんかば取とらなつまらん、
それがとうちゃんの口くちぐせやったね。
そして最後さいごにとうちゃんいつもぽつんと言いいよったね。
お前まえはとうちゃんのごとなったらつまらんぞて、
淋さびしか顔かおして言いいよったね。
そうばってんとうちゃんがプロレス好いいとうたあ、今いまも変かわらんね、
力道山りきどうざんが一番いちばん好すきやったね、
とうちゃん力道山りきどうざんが負まけたら、ようネコにハつ当あたりして、
あんた襖ふすまに投なげつけよったろうが。
力道山りきどうざんが負まけたら、がっぱしこいて、
正義せいぎが負まけた、正義せいぎが負まけたって言いいよったろうが、
そうばってん、とうちゃん。
男おとこの正義せいぎは、あの頃ころからよう負まけよったね、
ほんなこと勝かちゃせんもんね。
とうちゃん、そうばってんやっぱ、男一匹おとこいっぴき生いきてゆくとはきつかね、
男一匹おとこいっぴき生いきてゆくとはやおいかんね。
俺おれらまだ憶おぼえとうよ、時々ときどきとうちゃんが眠ねむられんで
蒲団ふとんの中なかでタバコぼっか吹ふかしよった夜よるのことば、
そやもんね、男おとこは酒さけば飲のまな淋さびしゅうして眠ねむられん夜よるがあるもんね。
とうちゃん、俺おれもだんだんとうちゃんの気持きもちが
分わかるごとなってきたっちゃが。
酒さけば飲のむ手てつきがよう似にてきたけん、
とうちゃんの酒さけの気持きもちが分わかるごとなってきたっちゃが。

病院びょういんの窓まどから夕陽ゆうひみつめ
親父おやじは黙だまって笑わらってる
また旅立たびだつ僕ぼくをみつめて
親父おやじは静しずかに うなずいている