高円寺 歌詞 中島卓偉 ふりがな付

ゴミ箱ばこをひっくり返かえしたような部屋へやで
ブリーチし過すぎた髪かみを笑わらい合あいながら
俺達おれたちはパンの耳みみかじり シャビシャビの牛乳ぎゅうにゅう流ながし込こみ
壁かべに貼はったアイツらみたいになろうぜって誓ちかった
「ヨーロピアンパパ」で買かったレコード それぞれ持もち寄よって
時ときを忘わすれ 擦すり切きれるまで聴きいた
大和町やまとちょう郵便局ゆうびんきょく前まえの横断おうだん歩道ほどうを 俺達おれたちのアビーロードだと言いった

誰一人だれひとり東京とうきょうの人間にんげんなんていなかった
お互たがい直なおらない方言ほうげんをからかいながら
「コーラル」で飲のんだバナナジュース
「七ななつ森もり」の苦にがいブレンドコーヒー
たった一杯いっぱいを粘ねばりながら大人おとなびたふりしてた
古着屋ふるぎやの店員てんいんはまるでヒッピー いつもペイズリーを纏まとって
みんな「ストーンズから消きえた男おとこ」みたいだった
愛想あいそ悪あくそうにレジで煙草たばこふかしてる姿すがたが ガキの俺おれには正直しょうじき怖こわかった
でも とてつもなくかっこよく映うつった

高円寺こうえんじ駅えきで降おりることが誇ほこりだった やっと居場所いばしょを見みつけた気きがした

これが永遠えいえんに続つづいてゆくと俺達おれたちは信しんじていた
いつまでも友達ともだちでいれると思おもってた
財布さいふも腹はらも空からっぽだった ただ大おおきな夢ゆめだけがあった
行いき場ばのなかった俺達おれたちを引ひき合あわせてくれた 高円寺こうえんじ

この街まちの外そとは全部ぜんぶデタラメに思おもえた この街まちで俺おれは俺おれでいることが出来できた
どんなに打うちのめされても「pal商店街しょうてんがい」を歩あるけば
いつも誰だれかしらに会あえて 心こころが安やすらいだ
「むげん堂どう」のお香こうを焚たきながら毎晩まいばん夢ゆめを語かたり合あい
過去かこの傷きずを打うち明あけて一緒いっしょに泣ないた
お互たがいの痛いたみ分わかち合あうことに必死ひっしだった
いつもたくさんの写真しゃしんを撮とった いつも気付きづいたら朝あさになってた

いくつもの恋こいを引ひきずり 時ときに振ふり払はらい それでも温ぬくもりが恋こいしかった

真夏まなつの扇風機せんぷうきもない部屋へやで何時間なんじかんでも愛あいし合あった
ヒーターもない部屋へやで何時間なんじかんでも抱だきしめ合あった
この街まちに一生いっしょう暮くらそうって言いった 結婚けっこんしようよって誓ちかい合あった
似にた者同士ものどうしの俺達おれたちの孤独こどくを溶とかしてくれた 高円寺こうえんじ

改札かいさつに差さし込こむ懐なつかしい夕暮ゆうぐれ 何なんで俺おれは今いまここに立たってるんだろう?
「レスポール売うっ払ばらいって もう実家じっかに帰かえるわ」
そう言いったあいつを見送みおくったあの日ひ
ここで殴なぐり合あったのが昨日きのうのことのように

好すきだった店みせが潰つぶれる度たびに また一人ひとりと去さっていく度たびに
俺達おれたちはむやみに傷付きずつけ合あうようになった
みんなで揃そろえた物ものを俺おれは全部ぜんぶ捨すてた
ライダース コンバース ラバーソウル ドクターマーチン
落書らくがきだらけの冷蔵庫れいぞうこも 写真しゃしんを貼はりまくったコルクボードも
これが永遠えいえんに続つづいてゆくと俺達おれたちは信しんじていた
いつまでも友達ともだちでいれると思おもってた
立たち尽つくした改札かいさつから見みえる夕暮ゆうぐれだけがあの頃ころのまま
黙だまって出でて行いった俺達おれたちを呼よび止とめてくれなかった 高円寺こうえんじ
大人おとなになって行いく俺達おれたちを呼よび止とめないでくれた 高円寺こうえんじ