クドカンが惚れるジャニーズの世界

脚本家をはじめ、監督や演出のほかバンド活動など、多岐に渡る活躍を見せる「クドカン」こと宮藤官九郎。彼は自らのバンド、および脚本作品の劇中歌の作詞を手掛けていることも多く、近年では朝ドラ「あまちゃん」でもその手腕を発揮していた。

2016年8月1日

Column

祈焔




脚本家をはじめ、監督や演出のほかバンド活動など、多岐に渡る活躍を見せる「クドカン」こと宮藤官九郎。彼は自らのバンド、および脚本作品の劇中歌の作詞を手掛けていることも多く、近年では朝ドラ「あまちゃん」でもその手腕を発揮していた。

そんな宮藤と密接に関わってきたのがジャニーズだ。彼の連続ドラマデビュー作「池袋ウエストゲートパーク」以来特にTOKIO長瀬智也とは仕事をする機会が多いが、ほかドラマ「木更津キャッツアイシリーズ」や映画「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」などで他のジャニーズタレントも多数起用している。

そんな彼は劇中歌にとどまらず、ジャニーズグループのCDシングル作品へも幾つか作詞提供しており、そこでも遺憾なく「クドカンワールド」を発揮している。今回はそれらを紹介していきたい。


まずTOKIO『ラブラブ♥マンハッタン』

長瀬との作品を多く手掛けている宮藤だが、こちらは同じTOKIOでも松岡昌宏の主演ドラマ「マンハッタンラブストーリー」の主題歌となっている。
曲と作品のタイトルのみ見るとニューヨークと何か関連しているのかと想像するが、この場合の“マンハッタン”とは作品内に登場する純喫茶の名前を指している。

――――
大学の図書館で君に逢う夢を見た
大学なんか行ったこともないのに

君はマンハッタンの夜景よりもキレイだった
マンハッタンなんか行ったこともないのに

恋はいつでも 現実離れ
だから今夜も 妄想ばかり
――――


歌詞を見ていけば分かる通り、何の根拠もない妄想ばかりしながら恋する相手を見つめている……という歌である。“僕に出来ることなんか いつもの喫茶店で コーヒー飲みながら 君を待ってるだけ”というフレーズがあるが、“待っている”どころかまだ関係性さえほとんどない相手だというのが描かれている。

――――
「ごめんね
 君より好きな人 見つけちゃったんだ
 ビックリした? するわけないか
 僕たちまだ、喋ったこともないんだもんね」
――――


台詞混じりに歌われるこの部分などで、“まだ喋ったこともない”というのがわかる。
サビでも“今すぐ飛んでって抱きしめたい”や“タクシー飛ばしたい”“謝りたい”というフレーズが出てきては、「けど出来ない」というふうに続いている。結局彼は夢想に耽っているだけであり、ひとまず誰にも迷惑をかけることもなく、ただコーヒーを飲んでいるだけなのである。もし何かと実行に移していたならそれはただのストーカー紛いだが、妄想するのはタダ、というわけだ。

しかし、この曲のオチはこうなっている。
“昨日いきなり君から話しかけられた 今度は夢じゃなかったけど…”

最後に前向きな“現実”で締め括られているのが、なんとも粋ではないだろうか。ここで曲は終わってしまうが、物語はここから始まるような希望を残す。ただの妄想恋愛ソングで終わらせない、脚本家ならではの構成だ

……まぁ“話しかけられた”先が必ずしも希望とは限らないわけだが、それを含めてオチである。


次に、関ジャニ∞の『言ったじゃないか』

こちらも錦戸亮主演ドラマ「ごめんね青春!」の主題歌として書かれている曲だ。
「言ったじゃないか!」という錦戸の叫び台詞から始まるのが印象的な曲だが、一話の脚本を書いている最中に「台詞きっかけで主題歌を書けないだろうか」と思ったところ脚本にそのような台詞が書いてあったため、「ここで絶対に主題歌がかかるはずだ」と思いそれをそのまま歌詞にしたと宮藤が自ら某番組にて語っている。

――――
携帯持ってないって 言ったじゃないか
お婆ちゃんが病気だって 言ったじゃないか
ハムスターが死んだって 言ったじゃないか
でも行けたら行くって 言ったじゃないか
――――


二番のメロは歌番組では歌われないだろうと思って少しふざけた、とも語っているが、歌詞をドラマの内容に沿うだけでなくテレビで披露する時点のことまで考えて書くというのが、バラエティ番組の構成作家なども務めていたという経歴を持つ宮藤らしい作詞方法である。

――――
(らららららライアー) 懺悔したほうがいいよ
(中略)
(らららららライアー) お祓いした方がいいよ
(中略)
本当のことが知りたいの (神さま)
本当のことなんか知りたくはないの
本当のことを教えてよ (仏さま)
本当のことを言わないでくれよ
――――


○○って言ったじゃないか=嘘、にかけて“ライアー”というフレーズを入れ込んだり、“懺悔”“お祓い”や“神さま”“仏さま”と神仏混合にしてドラマ内の「仏教系男子校が近隣のカトリック系女子校と合併することになる」という設定をも取り込みつつ、メロディーの繰り返し部分を言葉遊びによって味わい深くしている詞だ。
そして最後の“好きって 好きって 好きって 言うたやんか”と繰り返すくだり。更に最後には“…言ってないか”と逆説のオチがついている。夢想から現実への物語が描かれた『ラブラブ♥マンハッタン』とは違い、『言ったじゃないか』では言ったと思っていたことが結局言っていない、という話だ
だがそもそも、“誰とも付き合わない”はイコール“好き”ではない。確かに好きとは言っていない。そう考えると、妄想や勘違いから抜け出し現実を見つめた……という意味では、『ラブラブ♥マンハッタン』と同じ構造になっているともいえる。


最後に、SMAPの夏の定番曲ともなっている『BANG! BANG! バカンス!』

これは前述の二曲と違いドラマ主題歌ではなく、かつSMAPのアルバムにも未収録の曲となっている。普段は作詞をしてから曲をつけてもらうという方法が多い宮藤だが、これは曲先で詞を書いた初めての曲だったという。
曲を聴いた際に仮歌に「バンバン」と入っていたから、とそこからの着想でバカンスになり、「バカ」をキーワードに書いたというだけあって、深い意味などはあまりなさそうだ。しかし意味などなくてもいいのだ。頭を空っぽにして聴くのがいい。そんな「バカな夏」へ誘ってくれる曲だからである。
“バイクの免許欲しい”というフレーズを軸に一番と二番では違う話をしているように見えて、同じことを二度言っている。そもそもバイクも持っていないのにうだうだとそんなことを何年も考え続けている「バカ」を表現した部分だ。

コモリタミノルのメロディーの力もさることながら、ひたすら浮かれたバカな夏の空気を演出する宮藤の歌詞。特にそれを感じるのが次の部分である。

――――
バカンスって言葉の半分は バカ バカ バカ
どうせバカなら元気なバカがいい
(中略)
計画どおりなんか進まない それがバカのバカンス
家に着くまで 元気なバカでいい
――――


サビでも“スーツで海に飛び込んで”“海パンで国際線乗っちゃって”と浮かれぶりをふんだんに盛り込んだ詞になっているが、直接的に“バカ”を連呼させるところがまさに「浮かれている」雰囲気を増幅させている。特に中居のソロパートである“バカ”三連発の歌い方は、まさにぴったりのふざけ具合で聴きどころだ。
“さあ 写真は基本Vサイン で 後悔と反省がお土産”
最後にきちんとバカになった夏の代償をオチとして持ってきた上、しかもそれを“お土産”と表現するところが、まだ少し旅行気分が残っている感じを醸し出して最後まで“バカ”を忘れない。たとえ意味がさほどないパーティーソングでもしっかり物語を完結させる、それが宮藤の手腕であろう
このフレーズの部分では、普段はあまりないことだがSMAPが揃ってVサインをする。それは歌詞に合わせた「振り付け」の一部ともいえるが、この曲がこんなにも“バカ”になれる良い意味でふざけた曲だからこそSMAPのピースな珍しい「集合写真」が見られるのではないだろうか。この曲はファンにとって、毎年聴きたい、そして見たい曲に違いない。


公開中の長瀬智也主演映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」や生田斗真主演舞台「Vamp Bamboo burn~ヴァン・バン・バーン~」などでこの夏以降もジャニーズとの仕事予定が続いている宮藤。どちらの作品も劇中歌を担当している。
これまでに仕事をした経験のあるタレントはもちろん、まだ宮藤と関わったことのないジャニーズタレントが彼と仕事をしたら一体どんな化学反応が起こるのか。今まで名曲や名作を多く生んでいる組み合わせなだけに、今後も様々な展開を期待したいものだ。

TEXT:祈焔( https://twitter.com/kien_inori )

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