『幽☆遊☆白書』を形作った馬渡松子『微笑みの爆弾』の爆発力



『幽☆遊☆白書』をご存知でしょうか。1990年代に少年ジャンプに連載されていた冨樫義博の漫画です。アニメ化され、絶大な人気をほこりました。『スラムダンク』『ドラゴンボール』と共に、ジャンプの650万部という売上を作った青春オカルトバトル作品。

馬渡松子は、この幽白のOP、EDの曲を歌ったことで有名なシンガーです。この馬渡松子が歌う『微笑みの爆弾』は、『幽☆遊☆白書』のOPでずっと使われていた主題歌。タイトルもインパクトがありますが、歌詞も良い曲です。



“都会の人ごみ 肩がぶつかって ひとりぼっち
果てない草原 風がビュンビュンと ひとりぼっち
どっちだろう 泣きたくなる場所は
2つマルをつけて ちょっぴりオトナさ”


印象に残るフレーズから曲はスタート。「都会の人ごみ」「果てない草原」の対比です。この曲は『微笑みの爆弾』というタイトルからしてそうですが、こういった対比を活かしている歌詞が特徴。ちなみに「ビュンビュンと」「びゅびゅんっと」と歯切れよく歌っています。この曲の歯切れよさ、爽やかさはこういうところにも表れてますね。

「2つマルをつけて ちょっぴりオトナさ」とはどういうことでしょうか?都会の人ごみの中を歩いて、肩がぶつかっても誰も気にしないような孤独。そして、果てしない草原でたった独りで立ち尽くしているような孤独。両方の孤独を理解することが、少し大人に成長することであると言っているんですね。また「オトナ」とカタカナ表記することで、完全な「大人」ではない、少し成長した姿を表現しています。

この曲がすごいのは、『幽☆遊☆白書』という作品が持っている核の部分を歌詞にしているところ。この作品はバトルものという点以上に、青春ストーリーの側面があります。青春の裏にひそむ孤独感やそれを乗り越えていく成長を歌詞にしているんですね。

“メチャメチャ苦しい壁だって ふいに なぜか
ぶち壊す 勇気と POWER 湧いてくるのは
メチャメチャきびしい人達が ふいに 見せた
やさしさの せいだったり するんだろうね
ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・ます!”


「メチャメチャ」からサビがきます。「めっちゃめっちゃー」と歌うリズム感の良さがここでも登場。ボーカルの力で曲に説得力を持たせています。メチャメチャ苦しい壁をぶち壊す勇気とパワーがわいてくるのは、「メチャメチャきびしい人たちがふいに見せたやさしさのせい」という歌詞。主人公が、厳しい師匠のもとで修行し力を得る物語展開にも対応しています。サビの最後は、リズミカルな「ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・ます!」で終わる大胆な構成。ストレートな「ありがとうございます」では照れくさいけれど、この「・」をうったカタカナ混じりの感謝の言葉なら音にのせて歌える。そういう青春時代のこっ恥ずかしい感覚を歌にしているんですね。

“メチャメチャひとりぼっちの 人にあげる
唇の 裏側に 隠してある
ホ・ホ・エ・ミ・ノ・バ・ク・ダ・ン!”


タイトルの「微笑みの爆弾」は最後の最後に登場します。メチャメチャひとりぼっちの人にあげる「唇の裏側に隠してある」もの。それが微笑みの爆弾である。そういって曲は終わります。ラストでも「ひとりぼっち」という孤独表現が出てきました。孤独を解消するのは、誰かの微笑みなんですね。しかもそれは、普段は唇の裏に隠してあります。でもだからこそ、いざ微笑みが出てきたときは、それは爆弾のようなとてつもない力を持っている。そういう曲。この曲は、孤独とそれに相反する微笑みの感情を歌っています。それは、幽白というアニメが根底に持つ青春物語の要素に対応していたんですね。

幽白のアニメを象徴する主題歌だったこの曲。この曲の爆発力がアニメ幽白を作ったとも言えます。

TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

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