「あなたのお姫様は誰かと腰を振ってるわ」Coccoが解き放つ強さとは



母親になっても精力的な活動を続けているアーティストCocco。誰にも取って代われないその存在感は、多くの人々を惹きつけている。

彼女は小さい頃から、バレリーナを目指しオーディションを数多く受けており、その旅費を稼ぐために受けたビクターの新人オーディションで鮮烈な印象を残し、スカウトされた。音楽以外にも絵本や小説を発表し、芸術的な感性を作品にぶつけ、世の中に送り出しているCoccoだが、繊細な感性がゆえに拒食症になったり、リストカットをしてしまった時期もあるのだという。

テレビなどの露出は少ないが、一度見ると忘れられない大きな瞳。彼女の瞳には何が写っているのだろう。そのヒントは彼女の作った歌詞にある。

Coccoが書く歌詞は決して虚構ではない。治るかどうかさえわからない心の傷をありのままにぶつけている。その傷は何にも包まれることなく、生身のまま詞に落としこまれる。彼女の楽曲から圧倒的なエネルギーを感じるのはそのためだ。

自らの精神とひっきりなしに格闘し、生まれてきた歌詞とはどのようなものか。今回は彼女の人気楽曲の一つでもある「強く儚い者たち」から見ていきたい。



“愛する人を守るため 大切なもの築くため 海へ出たのね 嵐の中で戦って
突風の中 生きのびて ここへ来たのね”


この曲は心と対話をしており、ここでの「海」とは現実社会を指し示している。Coccoは自分自身に「突風の中生きのびてここへ来たのね」と声をかける。自らが持つアイデンティティを放棄し、「愛する人を守るため」にただ海へ出るのだ。
こういった感覚は子どもを持つ母親なら共感できるのではないだろうか。この曲は1998年、Coccoが21歳の時に発売された。当時からすでに強い母性を持っていたと予想ができる。彼女の繊細な感性と先天的な奥ゆかしき母性が、この歌詞を書かせたのだ。

突風の中では利害や欲が複雑に絡み合っている。感性の強さはその世界で時に生きにくさを導く。しかし、それ以上に彼女は愛する人を守るため戦ってきたのだ。


“この港はいい所よ 朝日がきれいなの
住みつく人もいるのよ ゆっくり休みなさい 疲れた羽を癒すの” 



港というのは社会から離れ一休みする場所、言ってしまえば心の拠り所なのだろう。それは自分の中にある弱さをさらけ出して甘えられる場所でもある。人間の強さを支える一つは、帰られる場所があることだ。
気を使うことなく、大げさに言えば傍若無人に振る舞える、強さはそんな場所に支えられて成り立っているのだ。

心理の本質的な構造を感覚で捉えるCoccoは「心休まる場所」を港と表現する。その場所を訪れた者、その場所を案内する者、2つの視点を一つの曲で見事に表している。
Coccoの個性は圧倒的な主観性にあるように感じている人が多いのではないだろうか。圧倒的な個性があるのには間違いない。そして、発想や視点が人より抜きん出ており、自分の世界が俯瞰で見えすぎてしまうぐらいなのだ。上記の歌詞が歌を聴いていて身をもって迫ってくるのは、高次元での客観性が保たれているからなのだ。


“だけど飛魚のアーチをくぐって 宝島が見える頃ころ 
何も失わずに 同じでいられると思う? 人は弱いものよ とても弱いものよ”


Cocco自身、心が休まる港へ行ったり嵐の海へ出たりしている経験がすでにあるからこそエネルギーの高いメッセージを送られる。彼女は人が内面に持つ弱さと強さを身をもって知っているだけなのである。

飛魚が飛ぶ理由は外敵から身を守るためであり、彼らは生き抜くために飛んでいる。
生き抜くために飛んでいる飛魚のアーチをくぐる。「生きていく」ということをこれだけ躍動感ある言葉で表現できるアーティストが他にいるのだろうか。Coccoならではの芸術的で核心を突く一節である。


“信じて島を出たのね だけど飛魚のアーチをくぐって
宝島に着いた頃 あなたのお姫様は誰かと腰を振ってるわ
人は強いものよ とても強いものよ”



「あなたのお姫様は誰かと腰を振ってるわ」とあまりにも生々しい表現が出てくる。しかし、生々しいからこそ言葉はリスナーに刺さる。ここではCoccoは弱さをぶつける対象物をお姫様とする。前出した弱さを前面に出せる港ではお姫様に甘えられる。

しかし、その港を捨てあえて嵐へと飛び込む行為こそが生への執着なのだ。「あえて飛び込める勇気」これ以上大きな武器はない。Coccoは音楽を通してその武器を私たちに授けようとしてくれる。

人は港に寄りながら宝島を目指す。人の持つ強さと弱さを一つの旅として表現したCocco。彼女自身が誰よりも弱くて強い人間であり、そんな彼女が心身を削り生み出した作品が琴線に触れるのは当然なのだ。

惰性で生きることなく、人生に正面からぶつかる彼女から生まれる言葉はあまりにもリアルで、聴いているリスナーは逃げたくもなる。しかし、それでも耳をかたむけたとき、それが彼女の心を救えるのだ。



ライター名:笹谷創( http://sasaworks1990.hatenablog.com/

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