21世紀の社会を予言していたのか。井上陽水『最後のニュース』

井上陽水は、日本を代表するシンガーソングライター。

2017年3月20日




井上陽水は、日本を代表するシンガーソングライター。説明の必要がないほど有名な人ですね。2017年2月現在、68歳。現在でも『夢の中へ』がドラマ主題歌に採用されたりと、存在感を示しています。

井上陽水のシングル『最後のニュース』は、1989年にリリースされました。この曲は、『ニュース23』に使われていたテーマソング。当時の『ニュース23』は、筑紫哲也がメインキャスターを務めており、番組タイトルも『筑紫哲也 NEWS23』でした。この筑紫哲也から依頼されてできた曲です。『最後のニュース』というタイトル通り、一日の最後のニュースのための曲。様々なニュースを詩的に表現している曲です。



“忘れられぬ人が
銃で撃たれ倒れ
みんな泣いたあとで誰を
忘れ去ったの”


たとえば、ここのフレーズ。「忘れられぬ人が」ときて「誰を忘れ去ったの」としめます。「銃で撃たれ倒れ」ということから、忘れられぬ人が争いに巻き込まれて死んだことが分かります。人々がニュースを見て悲しむも、やがて忘れてしまうことを表現しているんですね。

“飛行船が赤く
空に燃え上がって
のどかだった空は
あれが最後だったの”


「飛行船」という単語がここで登場。これは、飛行船の事故として有名な1937年のヒンデンブルク号爆発事故を表現しています。『最後のニュース』シングルジャケットも、この事故の写真を使っています。この事故をきっかけに飛行船の危険性が指摘され、有人の飛行船はなくなりました。「のどかだった空は あれが最後だったの」というフレーズに、人類の夢がショッキングなニュースにより「最後」をむかえていく寂しさが表現されています。

“地球上に
人があふれだして
海の先の先へ
こぼれ落ちてしまうの”


「地球上に人があふれだして」どうなるか。「海の先の先へこぼれ落ちてしまうの」。このフレーズも良いですね。「海の先へこぼれ落ちる」という表現が非常に詩的。大昔の人が地球の果てが滝になっていると考えたことをうけつつ、人口爆発を表現しています。「海の先の先へ」という表現は、今日でも問題となっている難民を想起させますね。

“原子力と水と
石油達の為に
私達は何を
してあげられるの”


ここも、井上陽水のスケールを感じさせるポイントです。「原子力と水と石油」これらに対し「何をしてあげられるの」という歌詞を持ってくるすごさ。人間は「原子力と水と石油」といった資源をコントロールするのが当たり前だと思っています。2011年の東日本大震災で、原子力の問題があらためてクローズアップされました。21世紀は、各地で異常気象が続き水不足が世界中で問題となり、「水の戦争」が起きると言われています。人間は、これらの資源を利用して奪い合うのが当たり前だと思っている。そんな人間の傲慢さを指摘しているんですね。

“世界中の国の人と
愛と金が
入り乱れていつか
混ざりあえるの”


この歌詞も、現代だからこそより響くようになってきたのではないでしょうか。「世界中の国」「人と愛と金」が入り乱れて、いつか混ざり合えるのだろうか、という問い。愛や金は、日本でも世界でもいたるところで格差として問題になりますね。

“今 あなたに Good-Night
ただ あなたに Good-Bye”


この曲は「~の?」という疑問形が続き、最後は「今 あなたに Good-night」「ただ あなたに Good-bye」と言って締めくくられます。筑紫哲也が亡くなった際、『ニュース23』で井上陽水はこの曲を歌いました。歌詞どおりに、「さよなら」の歌になったのです。そしてこの曲は今もなお、悲しいニュースで苦しんでいる人々に対し、せめて今日はゆっくりと「おやすみ」と語り掛けているのです。

今なお、いや今だからこそ響く歌詞です。井上陽水は、今日の21世紀の社会を予言していたのでしょうか。


TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

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