スピッツ「ロビンソン」の裏にはある人物の存在があった

スピッツの音楽はいつかの記憶を掘り起こしたような、懐かしい空気を感じさせてくれる。それはフィルムのように記憶の中に保管され、色褪せる様子を見せない。 遥か昔に聞いていたとしても、心の琴線に強く触れた感覚は残る。スピッツの音楽が普遍的なものとして、心にとどまり続けている人も多いはず。

2017年6月19日


この記事の目次
  1. ・「ロビンソン」の詞を紐解く
  2. ・リスナーの記憶に音楽を定着させる
彼らは始めた頃、売れようとしていなかったという。そのスタイルも現在とは掛け離れている。十分に魅力を備えていたが、その音楽にメジャー性は感じられなかった。

彼らがブレイクするきっかけとなったのは、11枚目のシングル「ロビンソン」である。始めた頃より、確実に彼らの才能や個性は人々に伝わっているのだ。

「ロビンソン」の詞を紐解く

実は、スピッツの音楽を「人々に伝える」のに一役買った人物がいる。その人物はプロデューサーでありアレンジャーでもある笹路正徳だ。彼は松田聖子にTHE YELLOW MONKEY、コブクロなどを手がけている。
多くの人々の記憶に残るスピッツの音楽も、笹路正徳の力がなくてはなかった。今回は「ロビンソン」の詞を紐解きながら、笹路正徳を含めたスピッツの魅力に迫っていきたい。


“新しい季節はなぜかせつない日々で
河原の道を自転車で走る君を追いかけた
思い出のレコードと大げさなエピソードを
疲れた肩にぶらさげて しかめつら まぶしそうに”



ボーカル草野の書く詩はスピッツの大きな魅力とされている。時に難解で色調が暗い詩も多く存在する。「ロビンソン」では草野の独自性を崩さないまま、リスナーに詰め寄ってはいない。
ロビンソンは描写としての世界観、言い換えれば「見られる」風景としての一体感を大切にしているのだ。笹時正徳が作詞に関わったかどうかは定かではないが、彼はリスナーとのバランスを保つことをスピッツに意識させたはずだ。


“誰も触われない 二人だけの国 終わらない歌ばらまいて
大きな力で空に浮かべたら ルララ 宇宙の風に乗る”


リスナーの記憶に音楽を定着させる

多くの人々が口ずさめるサビにも工夫が見られる。AメロやBメロで少し抽象的な表現を使っていたとしても、サビの冒頭部分では「誰も触れない 二人だけの国」とキャッチーな表現を使用する。
また「二人だけの国」「宇宙の風になる」などの詩からメルヘンな雰囲気をも演出していると理解できる。しかし、これだけでは重要な部分が欠けている。イメージや構想を意識し詩を作ったとしても、やはりボーカルに魅力がなければその真意は伝わらない。
美しいガラス玉のようなボーカル草野の声は唯一無二である。潜在意識に入り込むその歌声が、リスナーの記憶に音楽を定着させるのだ。


“片隅に捨てられて呼吸をやめない猫も
どこか似ている 抱き上げて 無理やりに頬寄せるよ
いつもの交差点で 見上げた丸い窓は
うす汚れてる ぎりぎりの三日月も僕を見てた”



「うす汚れてる ぎりぎりの三日月も僕を見てた」という詩はボーカル草野らしさが表れている。一般的に爽やかと思われているスピッツであるが、決してその一面だけではない。草野の描いた詩を味わえば、爽やかさの奥に潜む混沌も垣間見えてくるはずだ。
ただ、混沌は人に伝わりにくい。その混沌を抽出し、多くの人々に伝えたのがプロデューサー笹路正徳だったのではないだろうか。数々の名曲を生み出したのは、スピッツの力だけではないのだ。

出会いや別れは新たな心を作る。それはスピッツも例外ではない。音を通じて、心が生んだ詩を人々の記憶や感情へと到達させる。

スピッツの曲を耳にするというのは、彼らの美しく繊細な心を覗くのと同じ行為なのである。


「瞳に映らない」彼女は何者? indi…

あなたの心が色づくことは間違いない!8…