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くるりの原点ともいえる楽曲「東京」

京都にある立命館大学の音楽サークルの活動として、「くるり」の歴史は幕を開けた。彼らの音楽のレベルが高いのは周知の事実だ。だが、ここまでの道のりに問題が一つもないわけではない。サークルからプロとして活動していく中で、意識の隔たりやクラシック音楽に挑戦した岸田の作曲方法についていけないメンバーが出てきていたのも事実だ。
岸田はあるインタビューで「思い付いて何かが動く瞬間に邪念が入らないようにしている」と答えている。

その信念がひたすらに多様性のある音楽を作っているように感じる。言うまでもなく彼らの楽曲の幅広さは底知れない。

シティポップからクラシック、オルタナティヴまで様々なジャンルの楽曲を持つ。

それらの楽曲は決して「何々風」ではなく、そのジャンルの王道であり誰もが「良い曲」と言わざるを得ない。

この多様性が多くのファンを満足させている点ではないだろうか。くるりの楽曲は共通して上質だ。

今回は、結成して20年以上経過する彼らの原点でもある楽曲「東京」を通し、その芯にあるのは何か、探っていきたい。



くるりの「東京」



“東京の街に出て来ました
あい変わらずわけの分からない事言ってます
恥ずかしい事ないように見えますか
駅でたまに昔の君が懐かしくなります”


東京に居て、財布の中身がスッカラカンの状態で遠く離れた恋人のことがどうでもよくなった時、夜風が吹き気分が高揚し同曲を作ったという。

曲の成り立ちがなんとも文学的である。「東京に上京する」とは地方の若者にとって何を意味するのか。

夢を持ち、ひと花咲かせたい者が集う都だという印象が強いはずだ。

ミュージシャンだとそのイメージを余計に強く持つのではないだろうか。

「あい変わらずわけの分からない事言ってます」という歌詞から、当時の岸田の中に東京への憧憬と畏怖が存在していたことが理解できる。

同曲の詩はその瞬間を切り取った初々しさを持つ。

リスナーを一気に引き寄せる歌詞

“雨に降られて彼等は風邪をひきました
あい変わらず僕はなんとか大丈夫です
よく休んだらきっと良くなるでしょう
今夜ちょっと君に電話しようと思った”


前出の冒頭に「東京の街に出て来ました」という歌詞がある。

この一文で「感情の揺れや情景を示し、物語を進行していく」とリスナーへ合図を送っているのだ。

上記では、「雨に降られて彼等は風邪をひきました」と印象的なフレーズを持ってきている。

どちらもリスナーを一気に引き寄せる詩なのだ。

頭の一文が結論から始まることにより「これからどんな詩が展開されるのだろう」とリスナーに期待感を持たせている。

いきなり「雨に降られて彼等は風邪をひきました」と言われてもリスナーは理解が追いつかない。

リスナーは詩を理解しようとする、そう、それはすでに同曲と向き合っていることを意味するのだ。

こういったところを見ると、くるりがハイセンスであると感じずにはいられない。

多くのリスナーへの窓口になった「東京」

“君がいるかな 君と上手く話せるかな
まあいいか
でもすごくつらくなるんだろうな
君が素敵だった事 ちょっと思い出してみようかな”


くるりの核である岸田はある時、「東京」を「自分たちの音楽ではないと考えていた」と発言している。

しかしながら、「東京こそが多くのリスナーへの窓口になったのではないか」とも回想している。

どのバンドより多様性を持つ彼らが思う「らしさ」は、私たちの想像の遥か上を行っているのではないだろうか。

それは考えることすら及ばないレベルだ。

ただ一ついえるのは、岸田はジャンルに惑わされずにそれぞれの特徴や良さを見出す力を持っているのだ。

まずはそれが「くるり」らしさに繋がっている。

TEXT:笹谷創

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