幻でも逢いたい…Acid Black Cherry「冬の幻」に見る想いの強さ



今年は、暖かい冬と言われていた。しばらく雪を見ていないと思った人は多いはずだ。しかし、降ってしまえば情け容赦なく降り続いて、街を白で覆い尽くすだろう

冬と言えば、吹雪の中で雪女をみたという風に現実ではあり得ないようなエピソードが数多く存在する。先に逝ってしまった大切な人が迎えに来た、という話は有名だが、そのほとんどは幻として片づけられてしまうことが多い。人は体温が下がり過ぎると幻をみてしまうからだ。

そんな背景もあって、冬歌には雪だけでなく幻といったキーワードが歌詞に盛り込まれることがある。Acid Black Cherry4枚目のシングル『冬の幻』もその1つだ。イギリス産のロックと称されるUKロックを意識して制作されたこの楽曲は、激しいサウンドでありながら歌詞の世界感を邪魔しない低音で構成されている。少しくぐもった音が、冬のどんよりした感じを表しているのだ。



また、この楽曲のPVも見どころ。
シリアス調な歌詞に反し、内容は秋葉系スタイルに扮したボーカル担当のyasuがヲタク狩りに合い、病院に運びこまれるというもの。グラビアアイドル:大久保真理子も女医として出演し、エロさがミックスされた内容なので歌詞とは異なる世界を楽しみたい人におススメする。

Acid Black Cherry「冬の幻」
――――
君の写真が笑ってる
大好きだった笑顔で
11月の夜明け前
天国へ旅立った…

寒さ弱い僕のシャツに手を入れたりして
君が喜ぶから 冬が好きだった…

――――

元はファンからの手紙で、歌詞はその手紙の内容をyasuが自分に置き換えたものとなっている。恋人に先立たれてしまった男性の独白で始まる楽曲は、人が写真を見て過去と現在を行き来するような形式で進んでいく。

人は幻をみる。
それは、想いの深さゆえ、相手を追い求める気持ちがみせると聞く。この楽曲も、“冬が好きだった”というフレーズからわかるように恋人と冬に思い入れがあることから同じことが言える。

冬はその寒さゆえ、温もりが恋しくなる季節だ。できるならずっと手を繋いでいたいし、抱きしめ合っていられるならそうしたいところ。寒さが生む寂しさを埋めてくれる存在の大切さを実感する季節と言ってもいい。しかし、それは同時に孤独に苛まれやすい季節でもあるのだ。

愛しい人がくれる温かさを知ってしまっていたら、その孤独は深まるばかりだろう。いないとわかっている人を探してしまうのも、その寂しさに耐えられないからだ。


“粉雪よ止まないで”
“手の平に消えないで”
“儚過ぎる命と重なるから”
“震えた声で かじかんだ手で”
“ただ君を探し続けているよ”


幻は寂しさが、人の弱さが見させるのだろうか。ただ、「幻でも良いから逢いたい」と思うのは相手を今でも忘れずに想っているからだ。そう思えば、雪を見て恋人を想う冬があってもいいのではないだろうか。

幻は想いの強さがみせる、奇跡なのだから。

TEXT:空屋まひろ

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