八ヶ岳に立つ野ウサギ 歌詞 さだまさし ふりがな付

諏訪湖すわこを渡わたる風かぜは
もう春はるの匂においがします
元気げんきですか 今日きょうも君きみは
何処どこかで歌うたっているのでしょう

六斗ろくと川沿かわぞいの
桜さくらはまだまだ遠とおいね
今朝けさほど診療所しんりょうじょに来くる鶯うぐいすが
やっと地鳴じなきを始はじめたところ

悪わるい風邪かぜが流行はやり
実じつは僕ぼくも移うつされてね
看護婦かんごふに注射ちゅうしゃして貰もらい
僻地へきちの患者かんじゃを回まわっている

一昨日いっさくじつの夜中よなかのこと
山やま二ふたつ越こえた村むらまで
呼よび出だされたら僕ぼくの方ほうが
熱ねつが高たかかった これは笑わらえるだろう?

都会とかいでは埋うもれてしまうものが
田舎いなかで暮くらせば見みえることがある
たとえば生命いのちについて
あるいは心こころについて
切せつないようでそれぞれ美うつくしい
ひとつひとつの生命いのちの重おもさ

診療室しんりょうしつの壁かべは
相変あいかわらず美術館びじゅつかん
下手へたくそだけど子供達こどもたちの
愛あいと真心まごころで溢あふれてる

みんな大おおきくなって
いつかこの町まち離はなれて
まるで僕ぼくだけ一人ひとり廃校はいこうに
取とり残のこされた教師きょうしのようだよ

花はなの季節きせつが過すぎ
短みじかい夏なつが去さって
秋あきになりすぐにまた
白しろい冬ふゆがやって来くる

僻地へきちの子供達こどもたちや
老人ろうじんの笑顔えがおに
背中せなかを押おされて小ちいさな医者いしゃは
今日きょうも一所懸命いっしょけんめいに歩あるいています

都会とかいでは埋うもれてしまうものが
田舎いなかで暮くらせば見みえることがある
たとえば生活くらしについて
あるいは涙なみだについて
切せつないようでそれぞれ美うつくしい
ひとつひとつの生命いのちの重おもさ

君きみの歌うたに出でてくる
ライオンには ほど遠とおいけれど
心こころが健康けんこうであるように
誇ほこりを忘わすれないように 今日きょうからは
「八ヶ岳やつがたけに立たつ野のウサギ」と
自分じぶんで名乗なのることにしたんだ