その夜よるも母ははは眠ねむい眼めをこすり
妹いもうとの制服せいふく繕つくろって
茶ちゃダンスの上うえの古ふるい置時計おきどけい
眺ながめてはため息いきついて居いました
飲のんで帰かえって来こなければ
誰だれにもやさしい父ちちでした
夜風よかぜが雨戸あまどを叩たたく毎ごと
振ふり向むく母ははが悲かなしくて
幼おさない僕ぼくは蒲団ふとんの中なかで
泣なくことだけしか出来できなかった
思おもえば涙なみだの日々ひびでした
リンリンとヤカンの鳴なり響ひびく音おと
夜更よふけの静しずけさにしみ渡わたり
そそくさと寒さむい台所だいどころへ立たつ
母ははの背せが人生じんせいを語かたっていました
せめて帰かえって来くるだけで
どんなにうれしい父ちちでした
それでも母ははのくちぐせは
父とうさんはりっぱな人ひとですよ
幼おさない僕ぼくには解わからなかった
母ははの気持きもちが解わからなかった
思おもえば不安ふあんな日々ひびでした
その日暮ひぐらしをやめたなら
母ははに似合にあいの父ちちでした
ぐちの一ひとつもこぼさない
母ははの赤あかぎれ手ての平ひらに
今いまなら僕ぼくが幸しあわせを
生いきてくことの喜よろこびを
けれどもあなたはもう居いない
そのsono夜yoruもmo母hahaはha眠nemuいi眼meをこすりwokosuri
妹imoutoのno制服seifuku繕tsukuroってtte
茶chaダンスdansuのno上ueのno古furuいi置時計okidokei
眺nagaめてはためmetehatame息ikiついてtsuite居iましたmashita
飲noんでnde帰kaeってtte来koなければnakereba
誰dareにもやさしいnimoyasashii父chichiでしたdeshita
夜風yokazeがga雨戸amadoをwo叩tataくku毎goto
振fuりri向muくku母hahaがga悲kanaしくてshikute
幼osanaいi僕bokuはha蒲団futonのno中nakaでde
泣naくことだけしかkukotodakeshika出来dekiなかったnakatta
思omoえばeba涙namidaのno日々hibiでしたdeshita
リンリンrinrinとtoヤカンyakanのno鳴naりri響hibiくku音oto
夜更yofuけのkeno静shizuけさにしみkesanishimi渡wataりri
そそくさとsosokusato寒samuいi台所daidokoroへhe立taつtsu
母hahaのno背seがga人生jinseiをwo語kataっていましたtteimashita
せめてsemete帰kaeってtte来kuるだけでrudakede
どんなにうれしいdonnaniureshii父chichiでしたdeshita
それでもsoredemo母hahaのくちぐせはnokuchiguseha
父touさんはりっぱなsanharippana人hitoですよdesuyo
幼osanaいi僕bokuにはniha解wakaらなかったranakatta
母hahaのno気持kimochiがga解wakaらなかったranakatta
思omoえばeba不安fuanなna日々hibiでしたdeshita
そのsono日暮higuraしをやめたならshiwoyametanara
母hahaにni似合niaいのino父chichiでしたdeshita
ぐちのguchino一hitoつもこぼさないtsumokobosanai
母hahaのno赤akaぎれgire手teのno平hiraにni
今imaならnara僕bokuがga幸shiawaせをsewo
生iきてくことのkitekukotono喜yorokoびをbiwo
けれどもあなたはもうkeredomoanatahamou居iないnai