卒業すぎて 歌詞 山本正之 ふりがな付

卒業そつぎょうの 一いち年後ねんご ばったり会あった
駅前通えきまえどおりの 花屋はなやのあたり
自動車じどうしゃの 窓越まどごしに 僕ぼくを呼よぶ
あの人ひと二十歳はたちの お姉ねえさん

「運転うんてん免許めんきょを とりたて だから
怪我けがしていいなら お乗のりなさいな」
ハンドル握にぎった 白しろい指ゆび
ダッシュボードに コンパクト

高校こうこう時代じだいは テニス部ぶで
同おなじ電車でんしゃで 通とおってた
かいま見みる 横顔よこがおは大人おとなびて
お化粧けしょう上手じょうずの お姉ねえさん

「キミは大学だいがくどこだっけ
かわいい彼女かのじょはもういるの」
そんなの いないよ 一人ひとりだよと
あわてて つけた シガレット

あの頃ころは おはようとさよならの
あいさつだけの 人ひとだった
明あかるくて 優やさしくて 健すこやかで
誰だれもに 好すかれてた お姉ねえさん

「吉良きらの海辺うみべがすきだから
こうして時々ときどき眺ながめに来くるの」
淋さびしげに 見みつめてる 青あおい海うみ
ハードトップに 波なみしぶき

一度いちどだけ すきですと云いいたくて
日暮ひぐれのグランド 待まっていた
気きがついて ほゝえんで 長ながい髪かみ
風かぜに揺ゆらせた お姉ねえさん

「おぼえているわよ あの日ひのキミを
云いいたいことも わかってた」
そんなこと 今いまさら 気きまずいよ
走はしる自動車じどうしゃに 笑わらい声ごえ

放課後ほうかごの 校庭こうていの 銀杏いちょうの下したで
海うみほうずきの唄うた くちずさみ
夕焼ゆうやけと コスモスとセーラー服ふくが
誰だれより 似合にあってた お姉ねえさん

「お話はなししすぎて疲つかれたみたい
どこかでひと息いき 休やすみましょうか」
ちょっとだけ ほゝえんだ くちびるが
赤あかく光ひかった 日暮ひぐれどき