世界せかいを救すくいし隻腕せきわんの英雄亡えいゆうなき後あと
邪神じゃしんが封印ふういんされし地ちに街まちを築きずき
自みずからが結界けっかいの役割やくわりを果はたし
永ながき平和へいわへの礎いしずえと成なす...
誇ほこり高たかき右腕みぎうでに刻きざまれし雷の紋章あかし
彼かの者達ものたちの名なは 雷神らいじんの民たみ
伝承でんしょうの謎なぞ 紋章もんしょうの秘密ひみつ
少年しょうねんが描えがく軌跡きせき 雷神らいじんの系譜けいふ
弱よわい者ものほど徒党ととうを組くみ
身代みがわりの羊ひつじを捜さがす
愛あいを知しらない幼おさなき日々ひびは
灼やけた石いしの痛いたみ
ひとり唇噤くちびるつぐんだまま
膝ひざを抱かかえて耐たえていた
雨あめも宿やどればいづれ過すぎ去さる
嵐あらしもまた然しかり
されど輝かがやかざる紋章しるし
本当ほんとの強つよさって何なんだろう?
差さし出だされた少女しょうじょの小ちいさな手てが
とても大おおきく見みえた…
黙もくしたまま何なにも語かたらぬ歴史れきしの手ての平ひらの上うえで
出会であってしまった少年しょうねんと少女しょうじょの物語ものがたり
十年じゅうねんの歳月さいげつも一閃いっせんの雷いかづちが如ごとく
過すぎ去さってしまえば刹那せつな
今いま...黒くろの歴史れきしが再ふたたび動うごき出だそうとしている…
遠とおい空見上そらみあげて この胸むねを焦こがす
浮うかぶのは彼女かのじょの 愛あいらしい笑顔えがおだけ
適かなわぬ想おもいと 識しっていながら…
麗うるわしの君きみは何故なぜ 一族いちぞくの長おさの娘むすめ
部族一強ぶぞくいちつよき者ものの許もとへ
嫁とつぐこと定さだめしは 変かえられぬ民たみの掟おきて
嗚呼ああ...雷無ちからなきこの腕うでじゃ 君きみのこと護まもれない?
想おもいなら誰だれにも負まけないと
叫さけんでもその言葉ことば 虚むなしくも風かぜに消きえた…
期きは満みちようとしていた 長おさの娘むすめも今年ことしで婚礼こんれいを定さだめられし齢十六よわいじゅうろく
その誕生たんじょうの日ひが差さし迫せまり 一族いちぞくの猛者達もさたちは競きそって名乗なのりを上あげた
期きは満みちようとしていた 邪悪じゃあくなる波動はどうが街全体まちぜんたいを包つつみ込こみ
空そらに立たち込こめたる暗雲あんうんは <三度目さんどめの嵐あらし>の訪おとずれを告つげようとしていた…
「おぉ...何なんということじゃ 黒くろき法衣ローブを纏まといし者達ものたちの影かげが見みえる
予言書よげんしょの使徒しと 奴やつらを封印ふういんの深奥しんおうへ行いかせてはならん
邪神じゃしんの封印ふういんを解とこうとしておるのじゃ
いまや雷神様らいじんさまの血ちも薄うすれ 我われらに扱あつかえるは小ちいさき雷いかつちのみ
あぁ恐おそろしいや 天地てんちを揺ゆるがす強大きょうだいな力ちからじゃ 来くるぞ...あぁ来くるぞ…」
地ちを割わる咆哮ほうこう 天てんを裂さく爪牙そうが 烈火れっかの如ごとく燃もえさかる六対ろくついの翼つばさ
暗黒あんこくを宿やどした瞳ひとみに魅みいられただけで 勇猛ゆうもうなる戦士せんしが次々つぎつぎと倒たおれていった…
嗚呼ああ...人間にんげんとは神かみの前まえでは かくも無力むりょくなモノなのだろうか...
誰だれもが深ふかい絶望ぜつぼうに呑のまれかけていたその瞬間とき
ひと際眩きわまばゆい閃光せんこうが雷無ちからなき青年せいねんの体からだを貫つらぬいた…
「覚醒めざめよ...勇敢ゆうかんなる右腕みぎうでを持もつ者ものよ...
直系ちょっけいの雷ちからを受うけ継つぎし者ものよ...
かつて私わたしは邪神やつを封印ふういんせし折おり 雷いかづちの搶やりを放はなったが故右腕ゆえみぎうでを失うしなった
今いまその雷ちからを開放かいほうすれば 右腕みぎうではおろか全身ぜんしんが吹ふき飛とぶやも知しれぬ
御主おぬしにその覚悟かくごがあるか?
…ならば今いまこそ覚醒めざめよ<雷神らいじんの右腕みぎうで>よ!」
「ひとりでは耐たえ切きれぬ 雷ちからでもきっと
ふたりなら大丈夫だいじょうぶ 私わたしは信しんじる!」
暗雲あんうんを貫つらぬく雷いかづち あの日出会ひであった少年しょうねんと少女しょうじょは
今いま...二ふたつの紋章重しるしかさね合あわせて 輝かがやける未来ときを紡つむぐ…
「…ちゃん...ねぇ...お婆ばあちゃん...お婆おばちゃんったらぁ」
「どうしたの?それからお話はなしどうなったの?」
「おぉ...そうだったねぇ ごめんよ」
「その後あと 雷神様らいじんさまが邪神じゃしんをやっつけたんだよね?ね?」
「さて どうだったかねぇ...
昔むかしの話はなしだからもう忘わすれちゃったねぇ…」
...そう言いって微笑ほほえんだ祖母そぼの瞳めは とても優やさしい色いろをしていた
...その時ときの事ことは今いまでも印象深いんしょうぶかく覚おぼえている
...私わたしは信しんじているのだ 雷神らいじんの系譜けいふは途絶とだえていないのだと…
受うけ継つがれるモノ...受うけ継つがれざるモノ...
暗雲あんうんを貫つらぬく光ひかりを翼つばさに受うけ...その白鴉はくあは羽はばたいて往ゆく…
世界sekaiをwo救sukuいしishi隻腕sekiwanのno英雄亡eiyuunaきki後ato
邪神jashinがga封印fuuinされしsareshi地chiにni街machiをwo築kizuきki
自mizukaらがraga結界kekkaiのno役割yakuwariをwo果haたしtashi
永nagaきki平和heiwaへのheno礎ishizueとto成naすsu...
誇hokoりri高takaきki右腕migiudeにni刻kizaまれしmareshi雷の紋章akashi
彼kaのno者達monotachiのno名naはha 雷神raijinのno民tami
伝承densyouのno謎nazo 紋章monsyouのno秘密himitsu
少年syounenがga描egaくku軌跡kiseki 雷神raijinのno系譜keifu
弱yowaいi者monoほどhodo徒党totouをwo組kuみmi
身代migaわりのwarino羊hitsujiをwo捜sagaすsu
愛aiをwo知shiらないranai幼osanaきki日々hibiはha
灼yaけたketa石ishiのno痛itaみmi
ひとりhitori唇噤kuchibirutsuguんだままndamama
膝hizaをwo抱kakaえてete耐taえていたeteita
雨ameもmo宿yadoればいづれrebaidure過suぎgi去saるru
嵐arashiもまたmomata然shikaりri
されどsaredo輝kagaやかざるyakazaru紋章shirushi
本当hontoのno強tsuyoさってsatte何nanだろうdarou?
差saしshi出daされたsareta少女syoujoのno小chiiさなsana手teがga
とてもtotemo大ooきくkiku見miえたeta…
黙mokuしたままshitamama何naniもmo語kataらぬranu歴史rekishiのno手teのno平hiraのno上ueでde
出会deaってしまったtteshimatta少年syounenとto少女syoujoのno物語monogatari
十年juunenのno歳月saigetsuもmo一閃issenのno雷ikaduchiがga如gotoくku
過suぎgi去saってしまえばtteshimaeba刹那setsuna
今ima...黒kuroのno歴史rekishiがga再futataびbi動ugoきki出daそうとしているsoutoshiteiru…
遠tooいi空見上soramiaげてgete このkono胸muneをwo焦koがすgasu
浮uかぶのはkabunoha彼女kanojoのno 愛aiらしいrashii笑顔egaoだけdake
適kanaわぬwanu想omoいとito 識shiっていながらtteinagara…
麗uruwaしのshino君kimiはha何故naze 一族ichizokuのno長osaのno娘musume
部族一強buzokuichitsuyoきki者monoのno許motoへhe
嫁totsuぐことgukoto定sadaめしはmeshiha 変kaえられぬerarenu民tamiのno掟okite
嗚呼aa...雷無chikaranaきこのkikono腕udeじゃja 君kimiのことnokoto護mamoれないrenai?
想omoいならinara誰dareにもnimo負maけないとkenaito
叫sakeんでもそのndemosono言葉kotoba 虚munaしくもshikumo風kazeにni消kiえたeta…
期kiはha満miちようとしていたchiyoutoshiteita 長osaのno娘musumeもmo今年kotoshiでde婚礼konreiをwo定sadaめられしmerareshi齢十六yowaijuuroku
そのsono誕生tanjouのno日hiがga差saしshi迫semaりri 一族ichizokuのno猛者達mosatachiはha競kisoってtte名乗nanoりをriwo上aげたgeta
期kiはha満miちようとしていたchiyoutoshiteita 邪悪jaakuなるnaru波動hadouがga街全体machizentaiをwo包tsutsuみmi込koみmi
空soraにni立taちchi込koめたるmetaru暗雲anunはha <三度目sandomeのno嵐arashi>のno訪otozuれをrewo告tsuげようとしていたgeyoutoshiteita…
「おぉoo...何nanということじゃtoiukotoja 黒kuroきki法衣rôbuをwo纏matoいしishi者達monotachiのno影kageがga見miえるeru
予言書yogensyoのno使徒shito 奴yatsuらをrawo封印fuuinのno深奥shinouへhe行iかせてはならんkasetehanaran
邪神jashinのno封印fuuinをwo解toこうとしておるのじゃkoutoshiteorunoja
いまやimaya雷神様raijinsamaのno血chiもmo薄usuれre 我wareらにrani扱atsukaえるはeruha小chiiさきsaki雷ikatsuchiのみnomi
あぁaa恐osoろしいやroshiiya 天地tenchiをwo揺yuるがすrugasu強大kyoudaiなna力chikaraじゃja 来kuるぞruzo...あぁaa来kuるぞruzo…」
地chiをwo割waるru咆哮houkou 天tenをwo裂saくku爪牙souga 烈火rekkaのno如gotoくku燃moえさかるesakaru六対rokutsuiのno翼tsubasa
暗黒ankokuをwo宿yadoしたshita瞳hitomiにni魅miいられただけでiraretadakede 勇猛yuumouなるnaru戦士senshiがga次々tsugitsugiとto倒taoれていったreteitta…
嗚呼aa...人間ningenとはtoha神kamiのno前maeではdeha かくもkakumo無力muryokuなnaモノmonoなのだろうかnanodarouka...
誰dareもがmoga深fukaいi絶望zetsubouにni呑noまれかけていたそのmarekaketeitasono瞬間toki
ひとhito際眩kiwamabayuいi閃光senkouがga雷無chikaranaきki青年seinenのno体karadaをwo貫tsuranuいたita…
「覚醒mezaめよmeyo...勇敢yuukanなるnaru右腕migiudeをwo持moつtsu者monoよyo...
直系chokkeiのno雷chikaraをwo受uけke継tsuぎしgishi者monoよyo...
かつてkatsute私watashiはha邪神yatsuをwo封印fuuinせしseshi折ori 雷ikaduchiのno搶yariをwo放hanaったがttaga故右腕yuemigiudeをwo失ushinaったtta
今imaそのsono雷chikaraをwo開放kaihouすればsureba 右腕migiudeはおろかhaoroka全身zenshinがga吹fuきki飛toぶやもbuyamo知shiれぬrenu
御主onushiにそのnisono覚悟kakugoがあるかgaaruka?
…ならばnaraba今imaこそkoso覚醒mezaめよmeyo<雷神raijinのno右腕migiude>よyo!」
「ひとりではhitorideha耐taえe切kiれぬrenu 雷chikaraでもきっとdemokitto
ふたりならfutarinara大丈夫daijoubu 私watashiはha信shinじるjiru!」
暗雲anunをwo貫tsuranuくku雷ikaduchi あのano日出会hideaったtta少年syounenとto少女syoujoはha
今ima...二futaつのtsuno紋章重shirushikasaねne合aわせてwasete 輝kagayaけるkeru未来tokiをwo紡tsumuぐgu…
「…ちゃんchan...ねぇnee...おo婆baaちゃんchan...おo婆obaちゃんったらぁchanttaraa」
「どうしたのdoushitano?それからおsorekarao話hanashiどうなったのdounattano?」
「おぉoo...そうだったねぇsoudattanee ごめんよgomenyo」
「そのsono後ato 雷神様raijinsamaがga邪神jashinをやっつけたんだよねwoyattsuketandayone?ねne?」
「さてsate どうだったかねぇdoudattakanee...
昔mukashiのno話hanashiだからもうdakaramou忘wasuれちゃったねぇrechattanee…」
...そうsou言iってtte微笑hohoeんだnda祖母soboのno瞳meはha とてもtotemo優yasaしいshii色iroをしていたwoshiteita
...そのsono時tokiのno事kotoはha今imaでもdemo印象深insyoubukaくku覚oboえているeteiru
...私watashiはha信shinじているのだjiteirunoda 雷神raijinのno系譜keifuはha途絶todaえていないのだとeteinainodato…
受uけke継tsuがれるgareruモノmono...受uけke継tsuがれざるgarezaruモノmono...
暗雲anunをwo貫tsuranuくku光hikariをwo翼tsubasaにni受uけke...そのsono白鴉hakuaはha羽haばたいてbataite往yuくku…