白夜の黄昏の光 歌詞 さだまさし ふりがな付

ネナナの町まちのアイス・クラシックが終おわり
アラスカに遅おそい 春はるが帰かえるけれど
なぜかあなたひとりだけが 帰かえらない

あなたが愛あいした 北きたの大地だいちにも
ユーコン川がわを 埋うめ尽つくしながら
鮮あざやかな魚さかなたちが すぐに帰かえるのに

楽たのしそうに氷河ひょうがの軋きしむ音おとを語かたりながら
竜巻たつまきのように舞まうオーロラを歌うたうように写うつした
あなたは風かぜのような物語ものがたりを駆かけ抜ぬけるように
白夜びゃくやの黄昏たそがれの光ひかりの中なかに帰かえっていった

あなたの残のこした 美うつくしい写真しゃしんを
いつか懐なつかしむ 勇気ゆうきが持もてるのかしら
ザトウクジラや白熊しろくまの親子おやこやツノ鹿しかやそれから
白しろい息いきを吐はく あなた自身じしんの笑顔えがお

地ちの果はてと思おもう どんな土地とちにでも
必かならず人々ひとびとの 生活せいかつがある
誰だれもがただ一度いちどの かけがえのない生命せいめいを生いきてる

弱よわい者ものには 弱よわい者ものなりの
生いきる術すべがきっと あるのだよと
あなたの眼差まなざしは どんなときにも暖あたたかだった

何十年なんじゅうねんかもう少すこし早はやく生うまれていたら
冒険者ぼうけんしゃはいつの時代じだいも そんな風ふうに呟つぶやくのかしら
あなたは風かぜのような物語ものがたりを駆かけ抜ぬけるように
白夜びゃくやの黄昏たそがれの光ひかりの中なかに帰かえっていった

極北きょくほくの大地だいちを 埋うめ尽つくしたカリブー
マッキンレーの 山頂さんちょうを雲くもがゆく
アラスカ鉄道てつどうが あなたまでつながればいいのに
まだあなたは 夢ゆめに来きてくれない

人生じんせいのブリザードを少すこしも怖おそれることなく
自分じぶんとは誰だれなのかを知しるために生いきぬいて
あなたは風かぜのような物語ものがたりを駆かけ抜ぬけるように
白夜びゃくやの黄昏たそがれの光ひかりの中なかに帰かえっていった

あなたの残のこした 美うつくしい写真しゃしんに
包つつまれながら 生いきているけれど
内緒ないしょだけど一番いちばん好すきな写真しゃしんはほかの人ひとが撮とった
子供こどもとあなたと私わたしの 一枚いちまいの笑顔えがお

ネナナの町まちのアイス・クラシックが終おわり
アラスカに遅おそい 春はるが帰かえるけれど
なぜかあなたひとりだけが 帰かえらない