無邪気むじゃきな笑顔えがおが 愛あいらしい妹いもうとは
神かみに愛あいされたから 生うまれつき幸福しあわせだった
一人ひとりでは何なにも 出来できない可愛かわいい天使てんし
誰だれからも愛あいされる 彼女かのじょが妬ねたましかった
器量きりょうの悪わるい私わたしを 憐あわれみないでよ…
「――惨みじめな思おもいにさせる、妹あのこなんて死しんじゃえば良いいのに...」
あくる日妹ひいもうとは 高熱こうねつを出だして寝込ねこんだ
ごめんなさい神様かみさま あの願ねがいは嘘うそなんです
懺悔ざんげが届とどいたのか やがて熱ねつは下さがった
けれど今度こんどは母ははが 病やまいの淵ふちに倒たおれた
母ははが今際いまわの時ときに遺のこした言葉ことばは…
「――妹あのこは他人ひととは違ちがうから、お姉ちゃんあなたが助たすけてあげてね…」
母ははが亡なくなって 暮くらしにも変化へんかが訪おとずれ
生いきる為ために私わたしは 朝あさな夕ゆうな働はたらいた
村むらの男達おとこたちは 優やさしくしてくれたけど
村むらの女達おんなたちは 次第しだいに冷つめたくなっていった
貧まずしい暮くらしだったけど 温ぬくもりがあった…
「――肩かたを寄よせ合あい生いきてた、それなりに幸福しあわせだった...」
それなのにどうして...こんな残酷ざんこくな仕打しうちを...教おしえて神様かみさま!
妹あのこが授さずかった子こは 主しゅが遣つかわし給たもうた 神かみの御子みこではないのでしょうか?
――妹いもうとが子供こどもを身篭みごもっていることが発覚はっかくした夜よる
村むらの男達おとこたちは互たがいに顔かおを見合みあわせ口くちを噤つぐんだ
重おもい静寂せいじゃくを引ひき裂さいたのは耳みみを疑うたがうような派手はでな打音だおん
仕立屋したてやの若女将わかおかみが妹いもうとの頬ほほを張はり飛とばした音おと…
――断片的だんぺんてきな記憶きおく...断罪的だんざいてきな罵声ばせい...
嗚呼ああ...この女ひとは何なにを喚わめいているんだろう? 気持きもち悪わるい
ぐらりと世界せかいが揺ゆれ 私わたしは弾はじけ飛とぶように若女将わかおかみに掴つかみかかっていた…
緋あかく染そまった視界しかい 苦にがい土つちと錆さびの味あじ 頭上ずじょうを飛とび交かう口論こうろん 神父様しんぷさまの怒声どせい
――そして...妹いもうとは最後さいごに「ありがとう」と言いった...
心無こころない言葉ことば 心無こころない仕打しうちが どれ程ほどあの娘こを傷付きずつけただろう
それでも全すべてを...優やさしい娘こだから...全すべてを赦ゆるすのでしょうね...
――裸足はだしの娘むすめ 凍こおりつくような微笑ほほえみを浮うかべ
揺ゆらめく焔ほのお その闇やみの向むこうに『仮面かめんの男おとこ』を見みていた――
無邪気mujakiなna笑顔egaoがga 愛aiらしいrashii妹imoutoはha
神kamiにni愛aiされたからsaretakara 生uまれつきmaretsuki幸福shiawaseだったdatta
一人hitoriではdeha何naniもmo 出来dekiないnai可愛kawaiいi天使tenshi
誰dareからもkaramo愛aiされるsareru 彼女kanojoがga妬netaましかったmashikatta
器量kiryouのno悪waruいi私watashiをwo 憐awaれみないでよreminaideyo…
「――惨mijiめなmena思omoいにさせるinisaseru、妹anokoなんてnante死shiんじゃえばnjaeba良iいのにinoni...」
あくるakuru日妹hiimoutoはha 高熱kounetsuをwo出daしてshite寝込nekoんだnda
ごめんなさいgomennasai神様kamisama あのano願negaいはiha嘘usoなんですnandesu
懺悔zangeがga届todoいたのかitanoka やがてyagate熱netsuはha下saがったgatta
けれどkeredo今度kondoはha母hahaがga 病yamaiのno淵fuchiにni倒taoれたreta
母hahaがga今際imawaのno時tokiにni遺nokoしたshita言葉kotobaはha…
「――妹anokoはha他人hitoとはtoha違chigaうからukara、お姉ちゃんanataがga助tasuけてあげてねketeagetene…」
母hahaがga亡naくなってkunatte 暮kuらしにもrashinimo変化henkaがga訪otozuれre
生iきるkiru為tameにni私watashiはha 朝asaなna夕yuuなna働hataraいたita
村muraのno男達otokotachiはha 優yasaしくしてくれたけどshikushitekuretakedo
村muraのno女達onnatachiはha 次第shidaiにni冷tsumeたくなっていったtakunatteitta
貧mazuしいshii暮kuらしだったけどrashidattakedo 温nukuもりがあったmorigaatta…
「――肩kataをwo寄yoせse合aいi生iきてたkiteta、それなりにsorenarini幸福shiawaseだったdatta...」
それなのにどうしてsorenanonidoushite...こんなkonna残酷zankokuなna仕打shiuちをchiwo...教oshiえてete神様kamisama!
妹anokoがga授sazuかったkatta子koはha 主syuがga遣tsukaわしwashi給tamoうたuta 神kamiのno御子mikoではないのでしょうかdehanainodesyouka?
――妹imoutoがga子供kodomoをwo身篭migoもっていることがmotteirukotoga発覚hakkakuしたshita夜yoru
村muraのno男達otokotachiはha互tagaいにini顔kaoをwo見合miaわせwase口kuchiをwo噤tsuguんだnda
重omoいi静寂seijakuをwo引hiきki裂saいたのはitanoha耳mimiをwo疑utagaうようなuyouna派手hadeなna打音daon
仕立屋shitateyaのno若女将wakaokamiがga妹imoutoのno頬hohoをwo張haりri飛toばしたbashita音oto…
――断片的danpentekiなna記憶kioku...断罪的danzaitekiなna罵声basei...
嗚呼aa...このkono女hitoはha何naniをwo喚wameいているんだろうiteirundarou? 気持kimoちchi悪waruいi
ぐらりとgurarito世界sekaiがga揺yuれre 私watashiはha弾hajiけke飛toぶようにbuyouni若女将wakaokamiにni掴tsukaみかかっていたmikakatteita…
緋akaくku染soまったmatta視界shikai 苦nigaいi土tsuchiとto錆saびのbino味aji 頭上zujouをwo飛toびbi交kaうu口論kouron 神父様shinpusamaのno怒声dosei
――そしてsoshite...妹imoutoはha最後saigoにni「ありがとうarigatou」とto言iったtta...
心無kokoronaいi言葉kotoba 心無kokoronaいi仕打shiuちがchiga どれdore程hodoあのano娘koをwo傷付kizutsuけただろうketadarou
それでもsoredemo全subeてをtewo...優yasaしいshii娘koだからdakara...全subeてをtewo赦yuruすのでしょうねsunodesyoune...
――裸足hadashiのno娘musume 凍kooりつくようなritsukuyouna微笑hohoemiをwo浮uかべkabe
揺yuらめくrameku焔honoo そのsono闇yamiのno向muこうにkouni『仮面kamenのno男otoko』をwo見miていたteita――