――悪魔あくまに
魂たましいを売うり渡わたすかのように 金かねになる事ことなら何なんでもやった
問とうべきは手段しゅだんでは無ない その男おとこにとって目的もくてきこそが全すべて
切実せつじつな現実げんじつ 彼かれには金かねが必要ひつようだった...
傾かたむき続つづけてゆく天秤てんびん その左皿ひだりざらが沈しずみ切きる前まえに
力ちからづくでも浮うき上あがらせるだけの金かねが 右皿みぎざらには必要ひつようだった...
そして...その夜よるも天秤てんびんは仮面かめんを躍おどらせる……
闇やみを纏まとうように 夜よるの静寂しじまを探さぐり 瞳めと瞳めを見みつめ合あって
夢想的ロマンティックな月灯つきあかりに そっと唇重くちびるかさね 息いきを潜ひそめた...
慌あわただしく通とおり過すぎる 追おっ手達てたちを遣やり過すごし 手てと手てを取とり合あって
戯曲的ドラマティックな逃避行とうひこうに 酔よった二ふたつの人生いのち 愛あいに捧ささげた...
身分違みぶんちがいの恋こい 許ゆるされないと知しっても ♂おと♀めは惹ひかれ合あった
嗜虐的サディスティックな貴族主義きぞくしゅぎを 蹴けって檻おりを抜ぬけ出だす 嗚呼ああそれは悲劇ひげき...
運命うんめいの遊戯盤ボードの上うえで 支配力しはいりょくを求もとめて 生せいと死しは奪うばい合あった
徹底的ドラスティックな追悼劇ついとうげきを 笑わらう事ことこそ人生じんせい 嗚呼ああむしろ喜劇きげき...
楽園らくえんへの旅路たびじ 自由じゆうへの船出ふなで 逃走とうそうの果はてに辿たどりついた岸辺きしべ
船頭せんどうに扮ふんした男おとこが指ゆびを鳴ならすと 黒衣こくいの影かげが舟ふねを取とり囲かこんだ……
「娘むすめさえ無事ぶじに戻もどるならばそれで良よい、使用人おとこの方ほうなど殺ばらしても構かまわんわ」
一度いちども眼めを合あわせずに伯爵はくしゃくはそう言いった... 金貨コインの詰つまった袋ふくろが机叩テーブルたたいた...
いつも人間ひとは何なにも知しらない方ほうが幸福しあわせだろうに
けれど他人ひとを求もとめる限かぎり全すべてを知しりたがる
――何故破滅なぜはめつへと歩あゆみだす?
華はなやかな婚礼こんれい 幸しあわせな花嫁はなよめ 運命うんめいの女神めがみはどんな脚本シナリオを好このむのか...
虚飾きょしょくの婚礼こんれい 消きえた花嫁はなよめ 破滅はめつの女神めがみはどんな綻ほころびも見逃みのがさない...
嗚呼ああ...燃もえるように背中せなかが熱あつい その男おとこが伸のばした手ての先さきには何なにかが刺ささっていた
嗚呼ああ...緋あかく染そまった手てを見みつめながら 仮面かめんの男おとこは緩ゆるやかに崩くずれ落おちてゆく...
嗚呼ああ...その背後はいごには娘むすめが立たっていた 凄すさまじい形相ぎょうそうで地ちに臥ふせた男おとこを凝視ぎょうししていた
嗚呼ああ...一歩後いっぽあとずさり何なにか叫さけびながら 深ふかまりゆく闇やみの彼方かなたへ走はしり去さってゆく...
――徐々じょじょに薄うすれゆく意識いしきの水底みなぞこで 錆付さびついた鍵かぎを掴つかもうと足掻あがき続つづける
扉とびらは目めの前まえにある 急いそがなければ もうすぐ もうすぐ約束やくそくした娘むすめの―
――悪魔akumaにni
魂tamashiiをwo売uりri渡wataすかのようにsukanoyouni 金kaneになるninaru事kotoならnara何nanでもやったdemoyatta
問toうべきはubekiha手段syudanではdeha無naいi そのsono男otokoにとってnitotte目的mokutekiこそがkosoga全subeてte
切実setsujitsuなna現実genjitsu 彼kareにはniha金kaneがga必要hitsuyouだったdatta...
傾katamuきki続tsuduけてゆくketeyuku天秤tenbin そのsono左皿hidarizaraがga沈shizuみmi切kiるru前maeにni
力chikaraづくでもdukudemo浮uきki上aがらせるだけのgaraserudakeno金kaneがga 右皿migizaraにはniha必要hitsuyouだったdatta...
そしてsoshite...そのsono夜yoruもmo天秤tenbinはha仮面kamenをwo躍odoらせるraseru……
闇yamiをwo纏matoうようにuyouni 夜yoruのno静寂shijimaをwo探saguりri 瞳meとto瞳meをwo見miつめtsume合aってtte
夢想的romantikkuなna月灯tsukiakaりにrini そっとsotto唇重kuchibirukasaねne 息ikiをwo潜hisoめたmeta...
慌awatadaしくshiku通tooりri過suぎるgiru 追oっxtu手達tetachiをwo遣yaりri過suごしgoshi 手teとto手teをwo取toりri合aってtte
戯曲的doramatikkuなna逃避行touhikouにni 酔yoったtta二futaつのtsuno人生inochi 愛aiにni捧sasaげたgeta...
身分違mibunchigaいのino恋koi 許yuruされないとsarenaito知shiってもttemo ♂oとto♀meはha惹hiかれkare合aったtta
嗜虐的sadisutikkuなna貴族主義kizokusyugiをwo 蹴keってtte檻oriをwo抜nuけke出daすsu 嗚呼aaそれはsoreha悲劇higeki...
運命unmeiのno遊戯盤bôdoのno上ueでde 支配力shihairyokuをwo求motoめてmete 生seiとto死shiはha奪ubaいi合aったtta
徹底的dorasutikkuなna追悼劇tsuitougekiをwo 笑waraうu事kotoこそkoso人生jinsei 嗚呼aaむしろmushiro喜劇kigeki...
楽園rakuenへのheno旅路tabiji 自由jiyuuへのheno船出funade 逃走tousouのno果haてにteni辿tadoりついたritsuita岸辺kishibe
船頭sendouにni扮funしたshita男otokoがga指yubiをwo鳴naらすとrasuto 黒衣kokuiのno影kageがga舟funeをwo取toりri囲kakoんだnda……
「娘musumeさえsae無事bujiにni戻modoるならばそれでrunarabasorede良yoいi、使用人otokoのno方houなどnado殺baraしてもshitemo構kamaわんわwanwa」
一度ichidoもmo眼meをwo合aわせずにwasezuni伯爵hakusyakuはそうhasou言iったtta... 金貨koinのno詰tsuまったmatta袋fukuroがga机叩têburutataいたita...
いつもitsumo人間hitoはha何naniもmo知shiらないranai方houがga幸福shiawaseだろうにdarouni
けれどkeredo他人hitoをwo求motoめるmeru限kagiりri全subeてをtewo知shiりたがるritagaru
――何故破滅nazehametsuへとheto歩ayuみだすmidasu?
華hanaやかなyakana婚礼konrei 幸shiawaせなsena花嫁hanayome 運命unmeiのno女神megamiはどんなhadonna脚本shinarioをwo好konoむのかmunoka...
虚飾kyosyokuのno婚礼konrei 消kiえたeta花嫁hanayome 破滅hametsuのno女神megamiはどんなhadonna綻hokoroびもbimo見逃minogaさないsanai...
嗚呼aa...燃moえるようにeruyouni背中senakaがga熱atsuいi そのsono男otokoがga伸noばしたbashita手teのno先sakiにはniha何naniかがkaga刺saさっていたsatteita
嗚呼aa...緋akaくku染soまったmatta手teをwo見miつめながらtsumenagara 仮面kamenのno男otokoはha緩yuruやかにyakani崩kuzuれre落oちてゆくchiteyuku...
嗚呼aa...そのsono背後haigoにはniha娘musumeがga立taっていたtteita 凄susaまじいmajii形相gyousouでde地chiにni臥fuせたseta男otokoをwo凝視gyoushiしていたshiteita
嗚呼aa...一歩後ippoatoずさりzusari何naniかka叫sakeびながらbinagara 深fukaまりゆくmariyuku闇yamiのno彼方kanataへhe走hashiりri去saってゆくtteyuku...
――徐々jojoにni薄usuれゆくreyuku意識ishikiのno水底minazokoでde 錆付sabitsuいたita鍵kagiをwo掴tsukaもうとmouto足掻agaきki続tsuduけるkeru
扉tobiraはha目meのno前maeにあるniaru 急isoがなければganakereba もうすぐmousugu もうすぐmousugu約束yakusokuしたshita娘musumeのno―