明日あすは嫁とつぐ日ひ 父とうさんと
暮くらした家いえとも 今日きょう限かぎり
あんなに反対はんたい するなんて
一人ひとり泣ないた日ひ あったけど あったけど
今いまならわかるわ 親おやごころ
まじめで頑固がんこで お人ひとよし
いつでも私わたしを 暖あたたかく
守まもってくれてた あの日々ひびも
いつか遠とおくに なりました なりました
父とうさん許ゆるして わがままを
「お前まえはわしのかわいい一人娘ひとりむすめや。その相手あいてが髪かみは茶色ちゃいろでぼさぼさ頭あたま。
破やぶれたジーパンはいて、ろくに挨拶あいさつも出来できんようなやつが、
うちの娘むすめとつきあいたいやとお!何なに寝ねぼけたことをゆうてんねん!
つきあうどころか二度にどと会あうことも許ゆるさんゆうたやろ!」
「何なんべんゆうたらわかるのん。
あの日ひはコンサートに行いく予定よていで、あんな格好かっこうやったんよ。」
「結婚けっこんしたい相手あいての家いえにあんな格好かっこうで来くるような非常識ひじょうしきや、
声こえも小ちいそうて頼たよりない。誰だれがあんなもんにお前まえやれるかい。
そもそも親おやがどんだけ心配しんぱいしてんのんか、親おやの気持きもちがわからんのんか。」
前まえまで仲良なかよし 父娘おやこ
今いまではいつも けんか腰ごし
近頃ちかごろ、娘むすめは 返事へんじもしない
親おやの心こころは 晴はれずとも
若わかい二人ふたりの 心こころは急いそぐ
早はやく一緒いっしょに なりたいと
いくら親父おやじが 気きに入いらんと
言いったところで かいもなく
娘むすめの決心けっしん ゆるぎなく
親おやに勝手かってに 式しきの日ひ決きめて
その日ひも追おった 夕ゆうまぐれ
いかに反対はんたい 口くちでは言いえど
やはり人ひとの子こ 人ひとの親おや
かわいい娘むすめの 行ゆく末すえを
気きにせぬ親おやなど いないもの
「しょうがない。
いっぺんあの男おとこがどんな店みせで働はたらいてんのんか見みにいったろう。
あっあれやな、よしわしもいっぺん一緒いっしょに行いってならんでみよか。」
嬉うれしい時ときや 楽たのしいとき
元気げんきがない日ひや 風邪かぜ引ひいた日ひは
外そとはかりっと 中なかふんわりと
食たべたら蛸たこが ええだし出だして
たこ焼やきみたいな 顔かおした男おとこが
鉄板てっぱん前まえで 大汗おおあせかいて
ちっちゃなたこ焼やき くるくる焼やいて
待まってるお客きゃくと 漫才まんざいをしながら
働はたらく 楽たのしげに。
「すんません、たこ焼やきおくんなはるか。」
「ああ、おばあちゃん、ちょっと待まってな。
お年寄としよりに長ながいこと待まってもらうんは気きの毒どくなんで、
先さきにこのおばあちゃんに、たこ焼やきあげてもよろしいですか?すんません。
はい!おばあちゃん、まいどおおきに。」
「あら、お母かあさん。またたこ焼やきもろてはる。」
「美智子みちこさん、わたしはちゃんと買かうてますよ。ほれこれで…。」
「ええ!お母かあさん、これは市しバスの老人ろうじん優待券ゆうたいけんやないの。
バスはただで乗のれてもそんなんでものが買かえるわけないでしょ。」
「これ見みせたらな…ここのたこ焼やきは売うってくれるんやで、
なぁ、たこ焼やき屋やさん。」
「うちのたこ焼やきがおいしいゆうてくれはるので、
時々ときどきちょっとだけ包つつませてもろうてますねん。おばあちゃん、
これからも元気げんきでたこ焼やき買かいに来きてな。その優待券ゆうたいけん持もって。」
「ただいま。」
「お父とうさん、お帰かえり。」
「これ土産みやげや。」
「えっえらい又また、仰山ぎょうさんのたこ焼やき。」
「あいつあいつ頭あたまは茶色ちゃいろやけど、
なかなかの心こころ優やさしいええ~男おとこやないか。」
「えーっほんならお父とうさん、これあの人ひとが焼やいた…たこ焼やき。」
「あいつやったら、お前まえの事こと幸しあわせにしてくれるやろうなぁ。」
「お父とうさん、ありがとう。ほんまにありがとうお父とうさん。
そやけど、そやけどえらい仰山ぎょうさん買かうてきたんやね。」
「ええがな~近所きんじょへもお前まえの幸しあわせおすそわけや。」
一人娘ひとりむすめの 嫁とつぐ日ひが
いつかこの日ひが 来くることは
かねて覚悟かくごは していたが
花嫁姿はなよめすがたの 娘むすめから
大おおきな瞳ひとみに 涙なみだをためて
面めんと向むかって あいさつされて
嬉うれしいような 寂さみしいような
親おやの心こころは あるけれど
花嫁はなよめになる 嬉うれしさで
前まえにも増まして 輝かがやく娘むすめ
こんがり焼やけた まん丸まる顔かおの
ええ味あじ出でている たこ焼やき男おとこ
身内みうちだけでの 結婚式けっこんしき
豪華ごうかな衣裳いしょうも 料理りょうりもないが
これが二人ふたりの 大事だいじな門出かどで
高砂たかさごやこの浦舟うらふねに帆ほをあげて
父とうさんお世話せわに なりました
心配しんぱいさせたが あの人ひとと
必かならず幸しあわせ 見みつけます
嫁よめに行いっても はなれても はなれても
私わたしはあなたの 娘むすめです
明日asuはha嫁totsuぐgu日hi 父touさんとsanto
暮kuらしたrashita家ieともtomo 今日kyou限kagiりri
あんなにannani反対hantai するなんてsurunante
一人hitori泣naいたita日hi あったけどattakedo あったけどattakedo
今imaならわかるわnarawakaruwa 親oyaごころgokoro
まじめでmajimede頑固gankoでde おo人hitoよしyoshi
いつでもitsudemo私watashiをwo 暖atataかくkaku
守mamoってくれてたttekureteta あのano日々hibiもmo
いつかitsuka遠tooくにkuni なりましたnarimashita なりましたnarimashita
父touさんsan許yuruしてshite わがままをwagamamawo
「おo前maeはわしのかわいいhawashinokawaii一人娘hitorimusumeやya。そのsono相手aiteがga髪kamiはha茶色chairoでぼさぼさdebosabosa頭atama。
破yabuれたretaジjiーパンpanはいてhaite、ろくにrokuni挨拶aisatsuもmo出来dekiんようなやつがnyounayatsuga、
うちのuchino娘musumeとつきあいたいやとおtotsukiaitaiyatoo!何nani寝neぼけたことをゆうてんねんboketakotowoyuutennen!
つきあうどころかtsukiaudokoroka二度nidoとto会aうこともukotomo許yuruさんゆうたやろsanyuutayaro!」
「何nanべんゆうたらわかるのんbenyuutarawakarunon。
あのano日hiはhaコンサkonsaートtoにni行iくku予定yoteiでde、あんなanna格好kakkouやったんよyattanyo。」
「結婚kekkonしたいshitai相手aiteのno家ieにあんなnianna格好kakkouでde来kuるようなruyouna非常識hijoushikiやya、
声koeもmo小chiiそうてsoute頼tayoりないrinai。誰dareがあんなもんにおgaannamonnio前maeやれるかいyarerukai。
そもそもsomosomo親oyaがどんだけgadondake心配shinpaiしてんのんかshitennonka、親oyaのno気持kimoちがわからんのんかchigawakarannonka。」
前maeまでmade仲良nakayoしshi 父娘oyako
今imaではいつもdehaitsumo けんかkenka腰goshi
近頃chikagoro、娘musumeはha 返事henjiもしないmoshinai
親oyaのno心kokoroはha 晴haれずともrezutomo
若wakaいi二人futariのno 心kokoroはha急isoぐgu
早hayaくku一緒issyoにni なりたいとnaritaito
いくらikura親父oyajiがga 気kiにni入iらんとranto
言iったところでttatokorode かいもなくkaimonaku
娘musumeのno決心kesshin ゆるぎなくyuruginaku
親oyaにni勝手katteにni 式shikiのno日hi決kiめてmete
そのsono日hiもmo追oったtta 夕yuuまぐれmagure
いかにikani反対hantai 口kuchiではdeha言iえどedo
やはりyahari人hitoのno子ko 人hitoのno親oya
かわいいkawaii娘musumeのno 行yuくku末sueをwo
気kiにせぬnisenu親oyaなどnado いないものinaimono
「しょうがないsyouganai。
いっぺんあのippenano男otokoがどんなgadonna店miseでde働hataraいてんのんかitennonka見miにいったろうniittarou。
あっあれやなaaareyana、よしわしもいっぺんyoshiwashimoippen一緒issyoにni行iってならんでみよかttenarandemiyoka。」
嬉ureしいshii時tokiやya 楽tanoしいときshiitoki
元気genkiがないganai日hiやya 風邪kaze引hiいたita日hiはha
外sotoはかりっとhakaritto 中nakaふんわりとfunwarito
食taべたらbetara蛸takoがga ええだしeedashi出daしてshite
たこtako焼yaきみたいなkimitaina 顔kaoしたshita男otokoがga
鉄板teppan前maeでde 大汗ooaseかいてkaite
ちっちゃなたこchitchanatako焼yaきki くるくるkurukuru焼yaいてite
待maってるおtteruo客kyakuとto 漫才manzaiをしながらwoshinagara
働hataraくku 楽tanoしげにshigeni。
「すんませんsunmasen、たこtako焼yaきおくんなはるかkiokunnaharuka。」
「ああaa、おばあちゃんobaachan、ちょっとchotto待maってなttena。
おo年寄toshiyoりにrini長nagaいことikoto待maってもらうんはttemoraunha気kiのno毒dokuなんでnande、
先sakiにこのおばあちゃんにnikonoobaachanni、たこtako焼yaきあげてもよろしいですかkiagetemoyoroshiidesuka?すんませんsunmasen。
はいhai!おばあちゃんobaachan、まいどおおきにmaidoookini。」
「あらara、おo母kaaさんsan。またたこmatatako焼yaきもろてはるkimoroteharu。」
「美智子michikoさんsan、わたしはちゃんとwatashihachanto買kaうてますよutemasuyo。ほれこれでhorekorede…。」
「ええee!おo母kaaさんsan、これはkoreha市shiバスbasuのno老人roujin優待券yuutaikenやないのyanaino。
バスbasuはただでhatadade乗noれてもそんなんでものがretemosonnandemonoga買kaえるわけないでしょeruwakenaidesyo。」
「これkore見miせたらなsetarana…ここのたこkokonotako焼yaきはkiha売uってくれるんやでttekurerunyade、
なぁnaa、たこtako焼yaきki屋yaさんsan。」
「うちのたこuchinotako焼yaきがおいしいゆうてくれはるのでkigaoishiiyuutekureharunode、
時々tokidokiちょっとだけchottodake包tsutsuませてもろうてますねんmasetemoroutemasunen。おばあちゃんobaachan、
これからもkorekaramo元気genkiでたこdetako焼yaきki買kaいにini来kiてなtena。そのsono優待券yuutaiken持moってtte。」
「ただいまtadaima。」
「おo父touさんsan、おo帰kaeりri。」
「これkore土産miyageやya。」
「えっえらいeeerai又mata、仰山gyousanのたこnotako焼yaきki。」
「あいつあいつaitsuaitsu頭atamaはha茶色chairoやけどyakedo、
なかなかのnakanakano心kokoro優yasaしいええshiiee~男otokoやないかyanaika。」
「えeーっほんならおhhonnarao父touさんsan、これあのkoreano人hitoがga焼yaいたita…たこtako焼yaきki。」
「あいつやったらaitsuyattara、おo前maeのno事koto幸shiawaせにしてくれるやろうなぁsenishitekureruyarounaa。」
「おo父touさんsan、ありがとうarigatou。ほんまにありがとうおhonmaniarigatouo父touさんsan。
そやけどsoyakedo、そやけどえらいsoyakedoerai仰山gyousan買kaうてきたんやねutekitanyane。」
「ええがなeegana~近所kinjoへもおhemoo前maeのno幸shiawaせおすそわけやseosusowakeya。」
一人娘hitorimusumeのno 嫁totsuぐgu日hiがga
いつかこのitsukakono日hiがga 来kuることはrukotoha
かねてkanete覚悟kakugoはha していたがshiteitaga
花嫁姿hanayomesugataのno 娘musumeからkara
大ooきなkina瞳hitomiにni 涙namidaをためてwotamete
面menとto向muかってkatte あいさつされてaisatsusarete
嬉ureしいようなshiiyouna 寂samiしいようなshiiyouna
親oyaのno心kokoroはha あるけれどarukeredo
花嫁hanayomeになるninaru 嬉ureしさでshisade
前maeにもnimo増maしてshite 輝kagayaくku娘musume
こんがりkongari焼yaけたketa まんman丸maru顔kaoのno
ええee味aji出deているteiru たこtako焼yaきki男otoko
身内miuchiだけでのdakedeno 結婚式kekkonshiki
豪華goukaなna衣裳isyouもmo 料理ryouriもないがmonaiga
これがkorega二人futariのno 大事daijiなna門出kadode
高砂takasagoやこのyakono浦舟urafuneにni帆hoをあげてwoagete
父touさんおsano世話sewaにni なりましたnarimashita
心配shinpaiさせたがsasetaga あのano人hitoとto
必kanaraずzu幸shiawaせse 見miつけますtsukemasu
嫁yomeにni行iってもttemo はなれてもhanaretemo はなれてもhanaretemo
私watashiはあなたのhaanatano 娘musumeですdesu