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【歌詞コラム】ほんとにあった体験談、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」

ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」(1973)は発表から既に40年以上経っている。しかし、そのギターリフのインパクトは健在だ。

2019年1月2日

Column

quenjiro


この記事の目次
  1. ・Deep Purple「Smoke On The Water」
  2. ・それはロックバンドのコンサートで起こった悲劇
  3. ・事件の実際の映像
  4. ・進まない作業
  5. ・ディープ・パープル一行の体験がそのまま活かされた楽曲
2016年にGuitar Player誌が発表した"史上もっとも偉大な100のギターリフ(The 100 Greatest Guitar Riffs of All Time)"でも、エリック・クラプトンの「レイラ」に次いで2位に選出されている。

ところが同曲「Smoke On The Water」の歌詞の内容は、そのギターリフほどには知られていない。

例えばそのリフに比肩するほど有名な、サビのフレーズ<Smoke on the water, fire in the sky>の意味についてもしかりだ。

これは直訳すれば<水の上にはけむり、空には炎>だが、その意を汲めば<湖にただようけむり、空はまっかっか>というようなニュアンスになる。

なぜ<water>が<湖>なのか。それはディープ・パープル自身が目撃した、湖畔で起きたある実際の事件をモチーフにしているからだ。

Deep Purple「Smoke On The Water」



We all came out to Montreux
On the Lake Geneva shoreline
To make records with a mobile
We didn't have much time


俺たちはレマン湖のある街、
モントルーに来ていた
モービルでレコードを作るために
俺達にはあまり時間がなかったんだ


ディープ・パープル一行は1971年、レコーディングのためにスイスを訪れた。レマン湖(英: Lake Geneva)を有するリゾート地、モントルーだ。

ちなみにモービル(・ユニット)とは、かつてローリング・ストーンズが所有していたことで知られる移動式録音スタジオのことである。

彼らは、このモービルの機材を利用する拠点として、同地のカジノハウスを確保していた。


それはロックバンドのコンサートで起こった悲劇

Frank Zappa and the Mothers
Were at the best place around
But some stupid with a flare gun
Burned the place to the ground


フランク・ザッパとマザーズは
そのへんでもいちばんいい場所を陣取っていたが
どこかのバカが照明弾で
一帯を丸焦げにしちまった


ちょうどそのころ、『フリーク・アウト』(1966)などで知られるアメリカの前衛ロックバンド、フランク・ザッパ&マザーズ(オブ・インヴェンション)がそのカジノでコンサートを開いていた。

そんななか興奮した観客が信号拳銃で照明弾を放ったところ、建物に火が燃え移った。火の手は見る間にカジノハウスを包んでいく。

Smoke on the water, fire in the sky
Smoke on the water


湖にはけむりがただよい、空はまっかっか

ディープ・パープル一行は、火災の煙が湖面を覆い、炎が空を赤く染め上げる光景を目の当たりにしたのである。

事件の実際の映像

They burned down the gambling house
It died with an awful sound
Funky Claude was running in and out
Pulling kids out the ground


カジノハウスは燃え落ちて
恐ろしい音を立てて沈黙した
陽気なクロードが駆けずり回って
若者たちを避難させた


<Funky Claude>とはスイス人プロモーター、クロード・ノブスのことで、同地で古くより開かれる有名音楽イベント、「モントルー・ジャズ・フェスティバル」の創始者である。

じつは、このときの火災現場の映像をYouTubeで観ることができる。ディープ・パープル公式チャンネルが2017年に投稿したものだ。



現場の様子からその火災の規模を窺い知ることができる。

しかし呆気にとられてばかりもいられない。

レコーディングの拠点として確保していたカジノハウスが燃え落ちた今、別の場所を探さなければならないからだ。

ご丁寧にもその後の顛末を語るのが、続く歌詞の内容である。

進まない作業

When it all was over
We had to find another place
But Swiss time was running out
It seemed that we would lose the race


騒動がひと段落ついて
俺たちは別の場所を探す羽目になった
だけどスイスの時間は尽きかけて
俺たちは負けちまいそうだった


<スイスの時間>のくだりは、無情にも淡々と滞在時間が過ぎていく様子を、正確な時を刻むことで知られるスイス製の時計に引っ掛けたジョークかもしれない。

We ended up at the Grand hotel
It was empty cold and bare
But with the Rolling truck Stones thing just outside
Making our music there


ついに俺たちはグランドホテルにたどり着く
そこはうつろで寒々しく殺風景
たけど外にはローリング・ストーンズの例のアレがあって
そこでレコーディングするんだ


ようやくパープル一行、そして移動式録音スタジオの落ち着く場所が見つかり、作業再開。

ディープ・パープル一行の体験がそのまま活かされた楽曲

With a few red lights and a few old beds
We make a place to sweat
No matter what we get out of this
I know we'll never forget


赤色灯と古いベッドとともに
俺たちは汗まみれで作業した
たとえここから抜け出したとしても
俺たちはこのことを決して忘れないだろう


こうして「スモーク・オン・ザ・ウォーター」は録音され、世に出たのであった。

言ってみればこの曲は、ディープ・パープル一行が目撃した惨劇とその体験の顛末を克明に綴った、一種のルポタージュだったのである。

彼らの目に焼き付いたであろう<湖にただようけむり>の光景は、あのギターリフに乗って、今も我々の耳にこだまし続ける。

TEXT:quenjiro

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