雪ゆきの進軍しんぐん 氷こおりを踏ふんで どれが河かわやら 道みちさえ知しれず
馬うまは斃たおれる 捨すててもおけず ここは何処いずくぞ 皆みんな敵てきの国くに
ままよ大胆だいたん 一服いっぷくやれば 頼たのみ少すくなや 煙草たばこが二本にほん
焼やかぬ乾魚ひものに 半煮はんにえ飯めしに
なまじ生命いのちのあるそのうちは
こらえ切きれない 寒さむさの焚火たきび 煙けむいはずだよ 生木なまきが燻いぶる
渋しぶい顔かおして 巧妙こうみょう噺ばなし 「すい」というのは 梅干うめぼし一ひとつ
着きの身着みきのまま 気楽きらくな臥所ふしど 背嚢はいのう枕まくらに 外套がいとうかぶりゃ
背せなの温ぬくみで 雪解ゆきどけかかる
夜具やぐの黍殻きびがら しっぽり濡ぬれて
結むすびかねたる 露営ろえいの夢ゆめを 月つきは冷つめたく 顔かお覗のぞき込こむ
命いのち捧ささげて 出でてきた身みゆえ 死しぬる覚悟かくごで 吶喊とっかんすれど
武運ぶうん拙つたなく 討死うちじにせねば
義理ぎりにからめた 恤兵真綿じゅっぺいまわた
そろりそろりと 頚くび締しめかかる どうせ生いきては 還かえらぬ積つもり
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