聴く人の感情を動かすような、情緒的なサウンドを作り出す「エモいコード進行」。
難しいイメージがありますが、実は細かなテクニックや構造を知るだけで安定して作れるようになりますよ。
この記事のもくじ
バンドサウンドにピッタリのエモいコード進行
ライブや配信用にエモいロック曲を作りたいけれど、思うようなサウンドにならないと悩む人も多いのではないでしょうか?
演奏の勢いや音作り、メロディなども大切ですが、コード進行を意識して作曲すると、よりエモくイメージに近い曲に仕上がりますよ。
はじめに、バンドサウンドにピッタリのエモいコード進行を、理論ネタを交えながら紹介します。
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小室進行にテンションをプラスした進行
「Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」の小室進行にテンションをプラスし、エモい雰囲気にしたものが上記のコード進行です。
この進行はNovelbrightの人気曲「Walking with you」の冒頭を参考にしたもので、テンションが加わることで爽やかでエモーショナルな雰囲気になっています。
Ⅳはトライアドに9thをプラスし、広がりのある響きにしたadd9コード。
Ⅴ7は解決感を弱めるために、3rdを4thに置き換えたsus4コードになっています。
シンプルな進行ですが、中央部分で9thや4thの響きを演出することにより、エモい雰囲気になっているコード進行です。
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上昇するベースラインがエモいコード進行
上記のコード進行は、TVアニメ「マクロス⊿」に登場するユニット・ワルキューレの「ワルキューレは裏切らない」のサビ部分を参考に作成したものです。
オンコードにより、ベースラインが半音ずつ上昇する構造になっているのが前半部分の特徴。
この上昇ラインによりハーモニーに推進力が生まれ、加速していくようなサウンドになっていますよ。
後半部分はシンプルな構成で、最後にⅠmに対応するマイナーツーファイブが挿入されています。
パワフルでエモい響きが魅力なので、アップテンポな曲が好きな人はぜひ参考にしてみてくださいね。
ノスタルジックで切ない泣ける雰囲気のエモいコード進行
エモいコード進行を使えば、胸に刺さるような雰囲気、切なさ全開のサウンドも演出できるようになります。
もちろん、メロディやアレンジも重要ですが、土台となるのはコードです。
土台を工夫しておけば曲作りの幅が広がり、エモくするのも簡単になりますよ。
次は、バラードや切ないロック曲にピッタリの、ノスタルジックで切ない泣ける雰囲気のエモいコード進行を紹介します。
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マイナーツーファイブと代理コードがエモい進行
上記はuruの人気バラード曲「フリージア」を参考に作成したエモいコード進行です。
2小節目に、Fm7に対するマイナーツーファイブの「Ⅶm7(♭5)→V7/Ⅵ」が挿入されているのが特徴。
部分的にFマイナーキーの進行にもなっているので、マイナー感が強い響きになっていますよ。
4小節目の代理コードも特徴的で、普通はトニックのAmaj7を置く場所に、トニックの代理コード・#Ⅳm7(♭5)を配置し安定感を薄めています。
ノンダイアトニックコードを上手く使い、切なくエモい雰囲気を演出しているコード進行です。
ベースラインの上昇・下降をうまく使った切ない進行
滑らかなベースラインが好きな人におすすめなのが、坂本真綾とSchool Food Punishmentのコラボ曲「Buddy」を参考にした上記のコード進行です。
前半部分はベースラインが半音、または全音で下降、後半はB♭からD♭にかけて上昇する構造。
この動きにより、切ない雰囲気から一気に加速していくサウンドが生まれています。
上昇と下降のサウンドの違いを楽しめる、切なくエモいコード進行です。
おしゃれで落ち着いた雰囲気のエモいコード進行
近年のヒット曲に多く見られるのが、おしゃれでエモいコード進行です。
落ち着いた雰囲気を保ちつつも、個性的なサウンドのコードを織り交ぜてエモさを演出することで、多くのリスナーを魅了しています。
切ない泣ける進行の次は、今注目されているおしゃれで落ち着いた雰囲気のエモいコード進行を紹介します。
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4563進行
おしゃれかつシンプルで、エモいコード進行を知りたい人におすすめなのが、王道進行の変形タイプの4563進行です。
上記の進行はAwesome City Clubの「勿忘」のサビ部分を参考に、4563進行にテンションを加えて作成しました。
基本の構成は変わりませんが、Ⅳmaj7は13thが加えられたテンションコード、Ⅴ7は3rdを変更したⅤ7sus4コードになっています。
緊張感のある音が加わっているので、おしゃれでエモい雰囲気になっていますよ。
ポップスやR&Bなど、幅広く使える便利なコード進行なので、ぜひ使ってみてくださいね。
循環コードをアレンジした進行
上記の進行はポップスやジャズの定番の循環コードを、R&Bシンガー・John Legendの「All of Me」を参考にアレンジしたものです。
普通の循環コードは「Ⅰmaj7→Ⅵm→Ⅱm7→Ⅴ7」ですが、2小節目には11thが追加された、広がりのあるサウンドのコードが使われています。
4小節目には「ハイブリッドコード」と呼ばれるあいまいな響きのコードが配置されており、サブドミナントとドミナントの中間のサウンドを演出していますよ。
シンプルながらも、リスナーを飽きさせない工夫が光るおしゃれでエモいコード進行です。
ノスタルジックでチルな雰囲気のエモいコード進行
ノスタルジックで気だるいチルな雰囲気ながらも、エモさを演出してリスナーを引きつけるコード進行もたくさんあります。
他のパターンと比べるとシンプルな傾向がありますが、少ない工夫で曲のチルな雰囲気を効果的に演出しているのが特徴です。
次は、初心者でも気軽に使える、ノスタルジックでチルな雰囲気のエモいコード進行を紹介します。
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トニックとサブドミナントのみで構成された進行
作曲には欠かせない「ドミナントコード」を使わずに作られているのが、上記のトニックとサブドミナントのみで構成されたコード進行です。
björkの「jóga」のサビ部分の進行を参考に作成しています。
トニックとサブドミナントを行き来するという進行で、ドミナントからトニックという強い進行がないため、浮遊感が全開のサウンドになっているのが特徴。
テンションコードやノンダイアトニックコードが無いシンプルな構成ですが、チルでエモい雰囲気が作れるコード進行です。
9thコードを上手く使った浮遊感のある進行
上記はアメリカのシンガーソングライター・Alicia Keysの「3 Hour Drive」を基に作成したコード進行です。
セブンスコードに9thをプラスした「9thコード」を多用しているのが特徴で、最後のコード以外の全てに9thの音が加えられています。
サブドミナント中心の進行にテンションが加えられているので、浮遊感の強いノスタルジックなサウンドになっています。
モダンなヒップホップやR&Bにピッタリのサウンドなので、グルーヴィーな音楽が好きな人はぜひ参考にしてみてくださいね。
夜っぽい雰囲気のエモいコード進行
おしゃれでダークな雰囲気が好きな人には、マイナーコードの響きを上手く使い、エモさと夜っぽい雰囲気を演出しているコード進行がおすすめです。
こちらのパターンも近年ヒットしている曲に多く使われているので、上手く作曲に盛り込めば今風のポップスが作れるようになりますよ。
チルな雰囲気の次は、夜っぽい雰囲気のエモいコード進行を紹介します。
6251進行
循環コードに似た構造を持つ6251進行は、手軽にジャズっぽいサウンドを演出できるコード進行です。
米津玄師の「感電」やBTSの「Dynamite」など、近年のポップスでもよく使われています。
全てのルートの動きが「Ⅴ→Ⅰ」と同じパターンになっているため、親しみやすいサウンドになっているのが特徴。
上記ではポップな雰囲気にするためsus4コードを入れていますが、7thやテンションを加えるとよりジャジーでエモい響きになるので、ぜひ試してみてくださいね。
ダークなアレンジの王道進行
上記の進行は、YOASOBIの「怪物」のBメロ部分のコード進行を参考に作成したものです。
前半部分は、マイナーキーらしいダークな雰囲気の進行になっています。
5〜6小節では、Bメジャー(G#mの平行調)の王道進行「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅰm」のⅢmを、G#ハーモニックマイナーから借用したdim7コードに変えたパターンが登場。
最後は前半と似たパターンで終わっています。
ポイントは、dim7の挿入でルートが上昇するパターンを作り、ダークな世界観を保ちつつも、スピード感のあるエモい雰囲気が演出しているところ。
ダークな雰囲気とメロディアスなサウンドの両方を併せ持った、エモいコード進行です。
作曲でエモいコード進行を作るコツ
コード進行の例だけではエモい進行を作るイメージが沸かないという人も多いはず。
感覚だけで作ってもエモくならないときは、独特なサウンドが作れる音楽理論をピンポイントで学んでみるのがおすすめです。
最後に、エモいコード進行を作るコツを役立つ音楽理論と共に紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
テンションコードを使う
エモいコード進行を作るコツは、テンションコードをエモくしたい部分に使うことです。
テンションコードとは「1st・3rd・5th・7th」のセブンスコードに、緊張感のある9thや11th、13th足したコードのこと。
トライアドやセブンスコードほどの安定感はありませんが、ハーモニーやメロディを豊かにしてくれるので、上手く使えば個性的でエモいメロディが作れますよ。
トライアドに9thを加えた「add9」や6th(13th)を加えた「6コード」、3rdを4thに変えた「sus4」なども似た効果が狙えるので、好みや楽曲に合わせて使い分けましょう。
ベース音を工夫する
オンコードを使ってベース音を工夫すれば、エモいコード進行を作りやすくなるのでおすすめです。
「C/E・Am/E」のように、ベース音を他のコードトーンに変えるだけのシンプルなテクニックですが、普通のコードには無い独特な響きを演出できます。
また「C→G/B→Am7→Em/G」と滑らかに下降するパターンや「C→G/D→Am/E→Dm/F」などの上昇パターンが作れるのも特徴。
基本コードだけでは作れない「独特なサウンドを演出できるテクニック」なので、ぜひ使ってみてくださいね。
ノンダイアトニックコードを混ぜる
エモいコード進行の多くに使われているのがノンダイアトニックコードです。
ノンダイアトニックコードは、キーに対応したメジャー・マイナースケールには無い音を含んでいるので、手軽に転調感やエモさを演出できます。
特定のコードをⅠと考えて、Ⅴ7コードを挿入する「セカンダリードミナント」を使うのが定番。
他にも、マイナーキーやルートが同じモードからコードを借りる「モーダルインターチェンジ」やdim7の挿入、ルートが半音違うコードでの代理などがありますよ。
少し難しいですが、基本理論をマスターした人にはおすすめのテクニックです。
エモいコード進行を覚えて作曲に使ってみよう!コツを意識してアレンジしてみるのもおすすめ
エモいコード進行を安定して作れるようになるためには、実際に弾いて響きを感じたり、気になる進行を作曲に取り入れたりする練習がおすすめです。
紹介した理論を意識しながら、既存の曲をアレンジするのもコツをつかむ良い練習になりますよ。
はじめは難しいかもしれませんが、徐々に頭の中でサウンドをイメージできるようになるので根気よく続けていきましょう。
この記事のまとめ!
- ロック系でも、テンションやベースラインを意識すればエモいコード進行が作れる
- 切なくてエモいコード進行を作るコツは、ノンダイアトニックコードの使用とベースラインの工夫
- チルな雰囲気のエモいコード進行を作りたいなら、テンションやサブドミナントを多用しよう
- おしゃれな雰囲気、夜っぽい雰囲気のエモいコード進行は、ジャズやポップスの定番進行をアレンジすると作れる
- エモいコード進行を作るコツは、テンションやノンダイアトニックコードを使おう