1. Hey!Say!JUMP『Come Back...?』に隠れた八乙女光の”遊び心”

Hey!Say!JUMP『Come Back...?』に隠れた八乙女光の”遊び心”

Hey!Say!JUMPがバンドを編成してパフォーマンスすることがあるのを知っている人はどのくらいいるだろうか。

2016年10月31日

Column

祈焔




Hey!Say!JUMPがバンドを編成してパフォーマンスすることがあるのを知っている人はどのくらいいるだろうか。知名度が上がってきた昨今でも、彼らにはまだまだ隠された武器や可能性がある。現時点でシングル曲としてバンド曲をリリースしたのは『Magic Power』の一曲のみだが、彼らの中には楽器を嗜む事のほか、作曲や作詞に携わることのあるメンバーがほとんどである。

着々と活躍の場を広げているHey!Say!JUMPの中で、今やメンバーの有岡と共にお昼の顔のひとりとして定着し始めた八乙女光。バラエティにおいて彼はモノマネを披露したり自らボケるなど三枚目な部分が多く露出しがちだが、そんな彼しか見たことのない人達にはギャップに感じるであろうもうひとつの顔がある。

彼はバンド編成ではベースを担当し、また、これまで度々アルバムやカップリングなどで作曲・作詞に携わってきており、シングル『AinoArika』ではラップ部分の作詞を担当している。

今回は彼らの3rdアルバム「smart」に収録された『Come Back...?』という曲から、普段テレビではあまり見ることのない八乙女の音楽的な一面を紹介しよう。



『Come Back...?』は八乙女が作詞と作曲を両方行なった曲。イントロとサビに使用されている印象的なリフのメロディーラインは、リリースより4年ほど前から温めていたものだという。温めてきたものをアルバムという機会で完成させるに際して八乙女が意識したのは、その時のグループの雰囲気と混ぜ合わせて「踊れる曲」にすることだった。
普段リリースされるシングル曲でも、人数の多さを武器にしたフォーメーションと息の合った振り付けのダンスを売りとしているHey!Say!JUMP。当然、ダンス曲は彼らのコンサートの中でも大きな見せ場となっている。ダンス曲を作るということは、コンサートの構成上でも重要な役割を担うということでもあるのだ。

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降りみ降らずみ行為が 恋をより混雑させる
言葉の奥に潜むそのトラップ 言うべき想い 焦る度 耽る間に
嫌な予感と勘 影へ逃げる前に 湿気た紙に書き残す 「Goodbye」
錆びついた鍵をまた 器用に昨日に戻すかのようにロック
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ラップを含んで構成されているこの楽曲は、Aメロの部分からラップで始まる。
八乙女の軸はベースラインにあると本人が語っており、歌のピッチがうまく合わない時は頭の中でベースを弾いてみてから歌うというほど。そんな彼はラップの作り方もベースを軸としており、まずベースで弾いて、尺の中で強弱をつけていくようにして、耳に残りやすい音の部分にキーワードを乗せたりして作っていく。

歌詞を見ただけではラップパートとは分かりにくく、また歌詞を見ずに曲だけ聴いてもいまいち内容がすべて入ってくるわけではない。しかしこの曲はダンス曲として作られているため、パフォーマンスを含めてこのバランス感覚で完成品なのだとわかる。

普段はバンド編成の曲や、歌詞の内容も爽やかな世界観を描くことが多い八乙女だが、『Come Back...?』ではあえて「ドロッとした恋愛」を書くことに挑戦したという。
しかしそもそも「好きな女性を恨んだりするというのが想像しにくい」と苦戦した彼は、自分が「猫」が苦手なので、「猫のような女性」をストーリーに描くことにした。加えて、恋愛のいざこざの原因と言えば「嘘」であろうということで“Cat”と“Liar”を組み合わせている。

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脳ある君は爪を隠す Cat 胸を引っ掻くような Smile
You're a liar 何回巻き戻されてるのか… また君を愛してしまう

「鈍」「廃」「奇」「美」「乱」 どうした? 君の散乱する愛
You're a liar 後悔の理論 後退の意図 Come back...? 何が?
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猫のように気まぐれにふらりとこっちへ来たり、突然居なくなったり、また戻ってきたりと、男性を振り回す女性を書いたサビだが、メロディーラインに乗せられたサビの詞も、歌詞を見ずに聴くと“能ある君は…”と“「鈍」「廃」「奇」「美」「乱」”“どうした?君の…”が似たような韻の繰り返し、まるでラップのように感じる仕組みになっている。イントロと同じサビのリフが頭の中でぐるぐる回る、まさに中毒性を生む曲だ。
そして、歌詞は読まなければ意味が分からないように作られている。“巻き戻されてる”“後悔”“後退”そして“Come Back…?”というタイトルのとおり、ストーリーの男性のみならず聴き手をも「振り回す」構成。「歌詞カードを見た時の文字のバランスも考えながら詞を書く」という八乙女ならではの、独特のバランスで成立している。

一番が出来上がり、自分にとって相当苦手な女性像を書き上げてしまった八乙女は、二番で男性が強く反撃に出るストーリーを作ったという。

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過去にフラッシュバック 君の目は冷えた心の傷に染みるだけ…
Come back...? デタラメな台詞 冗談だろ? もう溺れはしない

脳ある僕は爪跡を残すCat 飼い慣らしていたのさ
I'm a liar 何回巻き戻せてしまうのか また君を騙して笑う
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この曲は男性の意見を表す二番で、一番サビとほとんど同じメロディーと歌詞が繰り返され、そのままイントロのリフがアウトロになって終わってゆく。
Aメロのラップ、Bメロ、サビにかけて、ただ振り回されていたのではなく、嘘すら気付いていた、というような展開を見せる二番。しかし「争うばかりでなく平和な部分を残したかった」という八乙女は、“I’m a liar”というフレーズに複数の意味を込めている。ひとつは勿論、「君に騙されていた訳じゃない」ということ。だが、同時に「反論している今の僕が嘘」という、「本当は喧嘩したくない」の“意図”だ。

苦手な猫を想像してまでドロっとした恋愛を書こうとした割に、平和的でもありたいという八乙女。この曲がイントロへ巻戻るような終わり方をするように、この物語の男性は結局この「猫のような女性」に振り回され続けてしまうのではないかと思ってしまう。

歌詞カードを見て、曲を聴いて、もう一度歌詞カードを見直してしまうような歌詞とメロディー作りをした八乙女だが、もはやその聴き手の行為すらも「繰り返させられる」仕掛けとなっている『Come Back...?』。これにダンスパフォーマンスが加われば更に中毒間違いなしな一曲に仕上がっている。


普段はボケたり三枚目役としてふざけている印象の彼だが、彼の「遊び心」は人を笑わせるということのみに留まらない。アイドルとして何より重要な「楽しませる」という意味でも、彼のベーシストとしての音楽づくり、そして歌詞を書くことに「遊び心」が活かされている。
バラエティの場で彼の笑顔を見たとき、その反面にもうひとつの笑顔が隠されていることを知ってもらえると、今後の彼らをより楽しんで見ることができるはずだ。

TEXT:祈焔( https://twitter.com/kien_inori )

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