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25年目の虹!ラルクのメジャー・デビュー作が持つ圧倒的完成度

今年でメジャー・デビュー25周年を迎えるL'Arc〜en〜Ciel。最近ではメンバーそれぞれのソロ活動が中心で、hydeのアメリカ進出なども話題となりましたが、改めて、彼らが作り上げた美しき”虹”の原点を探ります。

「虹」の始まりとその歩み

私(筆者)が今さら述べるまでもなく、国民的な人気と知名度を誇る彼らですが、メジャー・デビュー25年という節目を迎えた今だからこそ、ざっくりとではありますが、活動初期の軌跡を辿ってみましょう。



1991年、L'Arc〜en〜Cielはベーシストにしてリーダーのtetsuya(当時はtetsu)を中心に、大阪で結成されました。

インディーズ時代から際立った人気を誇っていた彼らですが、幾度かのメンバー・チェンジを経て、1993年にsakura(Dr)が加入したことで、初期の黄金メンバーであるhyde(Vo)、ken(Gt)、tetsuya(Ba)、sakuraという面子が揃ったのです。

1993年の4月に、インディーズ時代の唯一のアルバムであり、ファースト・アルバムとなった『DUNE』がリリースされます。

本当はこの作品についても、熱烈に語っていきたいところですが・・・・・・今は割愛いたします(笑)。

『DUNE』はオリコンのインディーズ・チャートで1位を取り、彼らのインディーズにおける人気は不動のものとなりました。

程なくして、ソニー傘下で当時は新規レーベルだったキューン・ソニーレコードと、ラルクはメジャー契約を結びます。

「ビデオシングル」という特異な形態でメジャー・デビュー

ある程度、事情通のファンにとっては有名な話ですが、ラルクにとって初のメジャー流通作品は、CDシングルやアルバムではなく、ビデオシングルというものでした。



若い方にとっては全くピンとこないかもしれませんが、まだDVDが存在せず、ビデオが全盛期の時代であったので、ビデオシングルというリリースも時々あったことは事実です。とはいえ、メジャー・デビュー作品として選ばれたのは、かなり珍しい例ではありますが。

楽曲は『眠りによせて』。『Tierra』にも収録されております。

曲の素晴らしさはもちろんですが、PV映像が最高です。淡い映像の中で歌う若き日のhydeは、それこそ女性かと見紛うほどの、幻想的な美を誇っております。

本作は後年DVDとして再リリースされましたので、興味のある方々は、是非手に取ってみてください。

果てしない空と大地へ捧ぐ――「Tierra」

1994年の7月14日、メジャー・デビュー作にして、ラルクにとっては通算2枚目となるアルバム『Tierra』がリリースされました。



商業的な成果を見ると、オリコンチャート初登場7位を記録しております。

メンバーはこの結果にあまり満足していなかったようですが、リアルタイムで本作と出会った、当時中学3年生の私個人の記憶を掘り返してみると、確かにメジャー・デビュー当時のラルクは、熱烈な女性ファンが中心の、知る人ぞ知るバンドであったかもしれません。

とはいえ、本作が持つ圧倒的な完成度の高さは、25年経った今も全く色褪せることはありません。

tetsuya自身が、「ラルクの全アルバムの中でも一番時間をかけた」とインタビューで述べているように、音の細部にまで拘りを見せる隙のないクオリティは、これがメジャー・デビュー作とは到底思えないほど。私も夢中で本作を聴いたことが、懐かしく思い出されます。

本作の帯には、“果てしない空と大地へ捧ぐ”と書かれておりました。

まさに、その言葉通りの壮大なスケールと世界観を持ち合わせた、彼らだからこそ作り得た名盤なのです。

アルバムの幕開けに相応しい名曲、「In the Air」

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目を閉じた
君は背に刺さった
ナイフを羽に似せ
今、大地を蹴る
空は果てしなく
澄みきった青をたたえる
果てしなく・・・
果てしなく Oh!
≪In the Air 歌詞より抜粋≫
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印象的なtetsuyaの和音を使ったベース・ラインに導かれ、ここから何かが始まる、といったような期待に十二分に応えるオープニング・ナンバーです。



この時期のhydeの歌詞は、前作『DUNE』の路線をほぼ踏襲していて、幻想的で異国で綴られる物語のようでもあり、映画的な情景描写を得意としておりました。

後半に至るまで、一人称がほぼ出てこない、というところにも注目して頂きたいです。

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同じ傷痕をつけ同じ苦痛を
彼にも与えてあげたい
脱け出せない悪夢を今すぐ
彼にも与えてあげたい
くるいそうな恐怖を何度も
叶わぬ願い
Say so long!
自由を奪った貴方に
少しも消えない痛みは
いつまで続くのか教えて
少しも消えない殺意に
悩まされていると伝えて
≪All Dead 歌詞より抜粋≫
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続く『ALL DEAD』は、『In the Air』のアウトロとイントロが繋がっているところが面白いですが、一転してハードなギターが際立つ楽曲となります。



狂気すれすれの想いを描いた歌詞は、耽美かつ狂おしいといったような、いかにもヴィジュアル系的な世界観ではありますが、ラルクがヴィジュアル系というカルチャーに対してどのような考えを持っているのかは、微妙で複雑な話になりますので、この辺りは深く触れないようにしておきます。

バンド・アンサンブルの面だけ取り出せば、非常に洋楽的です。

同時代のオルタナティブ・ロックからの影響は明らかですし、早い段階でレディオヘッドへの愛情なども語っていた彼らならではの、他のバンドとは違うセンスを感じますね。

1stシングル曲!「Blurry Eyes」

『Tierra』リリース後から数か月が過ぎた10月21日に、リカットされた事実上の1stシングル曲です。

ライブでは、あまり過去の楽曲を演奏しないラルクですが、この曲は比較的演奏される機会も多いですし、ラルクのファンならずとも知っている方は多いかもしれません。

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めぐり来る季節に
約束を奪われそう
この両手差しのべても
心は離れて
めぐり来る季節に
大切な人はもう…
振り向いたその瞳に
小さな溜息
(Your blurry eyes)
Your blurry eyes
(Your blurry eyes)
…心は 離れて ゆく
≪Blurry Eyes 歌詞より抜粋≫
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tetsuyaのポップな作曲センスが爆発した、シングル曲に相応しい名曲です。

注意して頂きたいのが、この曲の歌詞には、やはり「僕」や「私」といった主語が一切登場しないのです。

その何処か曖昧な視点が、当時のhydeが描く世界の中心であったのかもしれませんね。

sakuraが作曲を手掛けた珍しい楽曲、「nner Core」

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The real truth I realize それは言葉を超えた
I realize 「何か」を意味する
The real truth I realize それは領域を超えた
I realize 「自己」を意味する
Where is my body where is it?
≪Inner Core 歌詞より抜粋≫
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(中略)
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「君には始まりも終わりもない
死は生であり 生は死だ!
未来も過去も意味をもたない
君が見たこともない愛を信じるように
意識は存在する 永遠に…」
≪Inner Core 歌詞より抜粋≫
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ラルクのハードかつプログレッシブな一面を象徴する楽曲で、当時のドラマーのsakuraが唯一単独で作曲を手掛けたナンバーです。

好き嫌いが分かれるタイプの楽曲ではありますが、初期のL'Arc〜en〜Cielが持っていた、目に見えない何かへの畏怖、宿命や死生観、哲学的な問いかけなどといった要素が詰まっております。

最後のhydeの語りや狂ったような笑い声は、それこそヴィジュアル系の曲に慣れていないと、驚いてしまうかもしれませんが・・・・・・。

個人的には、前作『DUNE』に収録されている『be destined』という曲と比べながら聴いてみることをおススメします。共に近しい世界観を持った楽曲です。

ラルク史上に残る大作ーー「White Feathers」

L'Arc〜en〜Ciel史上でも、最も長い楽曲とされている、7分58秒の大作。この時点での彼らの技術やセンスを全て詰め込んだような、あまりにも美しい名曲です。

こんな名曲をメジャー・デビュー作で生み出してしまった彼らは、本当に凄いと思わざるを得ません。

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白い羽根が舞いおちる部屋の中で彼は絵を画く
眺めの良い窓は閉ざしたまま 鳥の絵を
部屋のすみには足をつながれた鳥が 必死に羽ばたき
彼はそれを哀しげに見つめては
彼女に想いをはせて
≪White Feathers 歌詞より抜粋≫
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(中略)
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Will you please tell me the way to the sky
すぐそばに存るのに
Will you please tell me the way to the sky
指先さえ ふれられない
Will you please tell me the way to the sky
あの鳥のように この地につながれている
Will you please tell me the way to the sky
ああ 空は何も変わらず そこにいた
≪White Feathers 歌詞より抜粋≫
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この曲における歌詞では、hydeは「彼」と「彼女」に託して物語を紡いでいきます。

あくまで三人称の視点であって、繰り返しになりますが、一人称は出てこないのです。

たとえるなら、三人称で書かれた小説を読むような感覚に似ているかもしれません。

一人称を使った私小説ならば、読む人それぞれが自分と主人公を重ね合わせて共感することもできますが、当時のhydeはそのようなやり方を選ばなかった、ということが重要だと私は考えます。

小学生の頃は漫画家やアニメーターを目指し、イラストが得意で映画も大好きなhydeの作詞センスは、常に映像的イメージがあるのです。

『White Feathers』は、その才能が顕著に表れた楽曲なのだ、と言えるかもしれません。

L'Arc〜en〜Cielというバンドが秘めていた、様々な可能性

25年経った今でも、本作を聴いて感じるのは、メンバー個々の突出した才能とセンスです。



同時に、L'Arc〜en〜Cielというバンドは、初期の時点で様々な可能性を秘めていたのだな、ということ。

『Tierra』以降も、がらりと音楽性が変わるのではなく、作品ごとに、あらゆるジャンルを一流のセンスでもって、L'Arc〜en〜Ciel印の音楽へと昇華する鮮やかな手腕は、この時点で既に萌芽しておりました。

『Tierra』は、後に爆発的な人気を得ることになるL'Arc〜en〜Cielにとっての、輝かしい可能性に満ちた作品です。

まだこの原石のような煌めきに触れたことのない方々は、ぜひ美しい虹の世界へと足を踏み入れてください。

TEXT KOH-1

1991年tetsuyaを中心に大阪で結成。 1993年アルバム「DUNE」がインディーズ チャート1位を獲得。 1994年ビデオシングル「眠りによせて」(Ki/oon Records)にてメジャー デビュー。 1996年アルバム「True」で初のミリオンセラーを達成。 1997年12月に行われた東京ドーム(キャパシティ:5万人)のコ···

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