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T.M.Revolution「HIGH PRESSURE」にハマる3つのしかけ

“カラダが夏にナル”―。かつてこのフレーズを引っ提げ、突如日本の音楽シーンに名乗りをあげた不思議な男がいた。風にも水にも揺るがないホンモノの歌唱力を持つその男の名はT.M.Revolution。1997年7月1日、夏の訪れとともに男の革命が始まった。
97年の日本をアツくさせ、T.M.Revolutionの名を全国に知らしめた代表曲『HIGH PRESSURE』。

発売から22年が経った今なお愛され続けている。

『HIGH PRESSURE』は、ヒットするべくしてヒットした曲だ。

今回の記事では、楽曲に込められたヒットのしかけをひもといていく。

しかけ①浅倉大介サウンド×西川貴教の親和性


T.M.Revolutionのプロデューサーであり『HIGH PRESSURE』の作曲をつとめるのは、accessのキーボーディストとして知られる浅倉大介。

シンセサイザーを自在に操る浅倉による、疾走感のある「90年代」サウンドが胸を躍らせる。

リスナーの期待値を最大限に高めるイントロ、段階的に盛り上がるメロ展開、分かりやすくキャッチーなサビ…。

90年代におけるヒットの法則をきっちりとおさえている。

「よくある曲展開」と言ってしまえばそうかもしれない。

リリース当時における『HIGH PRESSURE』は、斬新なサウンドというわけではない。

しかし、西川が歌うことで浅倉のサウンドが映え、浅倉のサウンドを歌うことで西川の声が活きる。

西川特有のハスキーかつ突き抜ける歌声が、楽曲にロックのテイストと説得力をもたらす。

ポップだが軽くなく、ロックより聴きやすい。

いわば新しいジャンルの誕生だ。

しかけ②リスナーの耳に残る、秀逸な歌詞のテクニック


『HIGH PRESSURE』の作詞を担当した井上秋緒は、accessはもちろん浅倉プロデュース曲の作詞を数多くつとめており、浅倉とは名コンビといえる。

『HIGH PRESSURE』は、夏らしい解放感あふれるサウンドとはウラハラに、内向的な男を主人公としている。

このギャップも楽曲の面白いところだ。

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せめて前向きに
見せたいと
夜型の体質を 変えてる
空調のききすぎた
この部屋じゃ
発情を逃してくよ
≪HIGH PRESSURE 歌詞より抜粋≫
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歌い出しから暗い。

洒落たサウンドに乗せ“せめて前向きに”と歌い出す夏ソングを、私はほかに知らない。

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海を目指した
標識と街ですれ違う
水着の跡の
ヤラシサに身悶えて
≪HIGH PRESSURE 歌詞より抜粋≫
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すれ違う、ということは男は海とは逆の方向へと歩いている。

「海」「水着」というワードに騙されそうになるが、男は海ではしゃいでなんかいない。

ムラムラかつ悶々とした、行き所のない感情を抱える内向的な男をうまく描いた歌詞だ。


先ほど、サウンド面からみれば「ヒット必須とはいえ斬新なものではなかった」と述べた。

一方で『HIGH PRESSURE』の歌詞は実に斬新である。

これまでになかった表記、これまでにシンガーが歌ってこなかった言葉が数々見受けられる。

注目すべき聴きどころは2番だ。

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「躊躇」って漢字が
辞書なく書ける
ボクの明日はどっちだ!?
星の渚で ダンスを
いっちょ踊るような
(笑)が
一度くらいあっても
≪HIGH PRESSURE 歌詞より抜粋≫
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表記すればこのような歌詞だったと、気付かずに歌っていた人も多いのではないだろうか。

「チューチョって漢字が辞書なく書ける」
「ダンスをいっちょ踊るような」
「(笑)が一度くらいあっても。」

ユニークで実に新しい。(笑)など、この時代だからこそ生まれた歌詞であろうし、音楽に乗せた作詞家は少なくとも井上が人類史上はじめてであろう。高いワードセンスが光る。

奇抜な歌詞は「!?」や「いっちょ踊る」「。」といった微妙なニュアンスを声で表現できる、西川の技術あってこそ成り立つ。

「明日はどっちだ!?」と己に投げかけたタイミングで、楽曲はBメロへ展開する。

「(笑)が一度くらいあっても。」と決意を表したところでサビへと入る。

この、サウンド×リリック×ボーカルの合わせ技がニクいのだ。


そもそも西川の歌唱は、スバ抜けた声量と抜群のリズム感を持ちながらも実に日本的だ。

ハキハキと滑舌が良く、言葉尻をごまかさない。

だからリスナーには歌詞カードがいらない。

メロディにしっかりと言葉が乗っているからこそ、歌詞を見ると余計に歌いにくくなることもあるだろう。

メロディと歌詞をセットにして身体に覚えさせる、西川はその能力に非常に長けている。

CMタイアップであった『HIGH PRESSURE』がリスナーにウケたのも、思わず覚えてしまい、多くの人が口ずさんだからであろう。

“ウッカリ タカノリの 未熟な楽園”なんて歯切れよく楽しい歌詞、誰でも歌ってしまうに決まっている。

言葉数が多く、オリジナルワードを多数練り込んだ歌詞でも「西川なら伝えられる」という井上・浅倉の信頼が伺える。

各所で踏んだ韻も心地よく耳に残る。

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本気をタテにして
未熟な革命
夏を制する者だけが
恋を制する
もう覚悟を決めちゃって
≪HIGH PRESSURE 歌詞より抜粋≫
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歌詞に、T.M.Revolutionのプロジェクトの軸「革命」を織り込むあたり、この曲は本気の作品だ。

プロたちが、本気でヒットさせにかかっている。

そういう気概を感じさせる。

しかけ③気になりすぎるMVと個性的なキャラクター

歌詞コラムとしては蛇足だが、ヒットのしかけを語るには「T.M.Revolution」チームのプロモーション力についても触れておかねばならない。

まずはMVだ。「アイドルなのか?」と思わせる、素肌に真っ白のジャケットという出で立ち。

サビでは歌詞に合わせてフリを付け、片膝をついてスタンドマイクプレイを見せる。

風を浴び水を浴び、それでも歌い続ける姿には「本気かギャグか」と問いたくもなる(至って全力の本気である)

▲T.M.Revolution 『HIGH PRESSURE』

さらには「T.M.Revolution」という、バンドなのかソロシンガーなのか分からないアーティスト名。

この、視聴者の「気になる」をうまく利用したプロモーションが功を奏した。

むしろ、あのMVを見て気にならない者がいるなら会ってみたい。

TVにも積極的に出演し、関西弁の軽快なトークで毎回爪跡を残した。

パワフルな歌声からは想像もつかないほど華奢な身体と「近所の兄ちゃん」を思わせる親近感で、西川は一気にお茶の間の人気をつかんだ。

『HIGH PRESSURE』で一躍トップアーティストに登り詰めた以降も、派手なコスチュームや気になりすぎるMV、紅白歌合戦でさえもひるまないパフォーマンスで、いつでも観る者・聴く者を楽しませてくれた。

T.M.Revolutionというジャンル


T.M.Revolutionとは、西川貴教とはロックなのかポップなのか。

はたまた、異常に歌が上手いだけのパフォーマーなのか。

「ジャンル」などという細かな定義は、彼の前ではどうでも良いこと。

彼は唯一無二の「T.M.Revolution」「西川貴教」である。

『HIGH PRESSURE』が彩った1997年の夏から早くも22年。

彼は変わらずオリジナルを貫き続けている。

TEXT シンアキコ

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