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年齢を重ねるごとに増す魅力。安全地帯「悲しみにさよなら」が胸に響く理由

1985年に大ヒットを記録した、安全地帯の9th『悲しみにさよなら』。リリースから30年以上経った今も愛され続ける名曲だ。歌声も、サウンドも、時を重ねるごとにさらに深みが増す。名曲を完成させる最後のピースは「人間味」なのだと思う。

大人の色気が魅力「安全地帯」

クールな大人の色気をまとう実力派バンド。それが、当時の「安全地帯」のパブリックイメージだった。

そんな彼らの「幅」をさらに広げてゆくきっかけとなった楽曲こそ『悲しみにさよなら』である。

今回は、筆者が実際に体感した「玉置浩二の歌声の魅力」についても触れながら、楽曲のもつ魅力を伝えたい。

ミュージシャン 玉置浩二


かつて玉置浩二を「日本一過小評価されているミュージシャン」だと評した音楽家がいた。

玉置にはいわゆる“お騒がせ者”のイメージがついていたし、全盛期には全盛期で、女性ファンからはまるでアイドルのような声援を浴びていた。

たしかに「ミュージシャン」としての実力が置いてけぼりになっていた感は否めない。

時代が玉置浩二に追いついた

それが今では「日本一歌が上手いアーティスト」であるとの声も聞かれるようになった。

しかし、玉置浩二はなにひとつ変わっていない。

今も昔も、身体すべてが音楽で出来ているような、ギターと音楽と仲間が大好きな少年のままだ。

時代がようやく、玉置浩二に追いついたとしか言いようがない。

身体にも心にも響く歌声


玉置浩二の歌を初めてホールで聴いたとき、身体が震えたのを覚えている。

ささやくような優しい声も、どこまでも突き抜けるロングトーンも、玉置から放たれる歌声のすべてに表情がある。

彼の歌声は、心の琴線に触れる。

3階席のすみっこで見ている私にも、目を合わせ呼吸を合わせ、音楽を届けてくれているような気がした。そんな、ひとときの夢をみられた。

どれだけ広い会場においても“たったひとり”に届く歌を歌う。

玉置浩二はそういうシンガーだ。

純粋で、愛が深くて、まっすぐな人間であるからこそ、傷ついたこともあったことだろう。歩いてきた人生のすべてが玉置の歌声を優しく、強くしている。

玉置浩二という人間が、少年のようなほほえみを浮かべ、ギターを抱えて楽しそうに歌っている。ただそれだけで、涙があふれてくるのだ。

シンプルな歌詞だからこそ胸に響く


井上陽水のバックバンドとして鍛え上げられた本格派サウンドと、バンドが放つ大人の魅力。

色気のある恋や燃え上がる愛を歌うボーカル。それが世間が思う「安全地帯」だった。

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もう 泣かないで
ひとりで
ほゝえんで みつめて
あなたの
そばにいるから
悲しみに さよなら
ほゝえんで さよなら
愛を ふたりのために
≪悲しみにさよなら 歌詞より抜粋≫
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『悲しみにさよなら』は、それまでの安全地帯のシングルレコードとは一線を画す存在であったといえる。

今だからこそ、優しいメロディラインや、散りばめられたスパイス的なコード、ラストに繰り返す壮大な転調は「玉置らしい」といえるが、当時のリリース路線で考えるとやはり異端な存在だ。

『ワインレッドの心』『マスカレード』『恋の予感』といった名曲が作り上げた「安全地帯」というパブリックイメージからの脱皮を図ったチャレンジ曲であったのかもしれない。

それでも、安全地帯が初期から持っていた神秘的な音の響きは一貫している。決して、サウンド面の方向転換ではないことが分かる。

そして『悲しみにさよなら』が持つ普遍的なメロディこそ、安全地帯が目指していたものだとかつて玉置自身が語っていた。


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夢にまで涙が
あふれるくらい
恋は こわれやすくて
抱きしめる 腕の
つよさでさえ なぜか
ゆれる心を
とめられない
≪悲しみにさよなら 歌詞より抜粋≫
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『悲しみにさよなら』は、たしかに恋の歌だ。

恋や愛がかなわない切なさは、作詞家・松井五郎も、玉置浩二も、いくつもの楽曲にしたためてきたはずだ。

しかし『悲しみにさよなら』には、明確なストーリーは描かれていない。あくまでキーワードが与えられているだけで、解釈は聴き手に委ねられている。

だからこそ何年経っても、どんな恋にも愛にも重ねることができる。共感力のある言葉のセレクトは、さすが名作詞家のテクニックだ。


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悲しみに さよなら
ほゝえんで さよなら
ひとりじゃないさ
泣かないで ひとりで
その胸にときめく
愛をかなえられたら
≪悲しみにさよなら 歌詞より抜粋≫
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『悲しみにさよなら』で描かれる愛、そして「悲しみ」は、恋愛にとどまらない。

生きていれば、悲しみは幾度も訪れる。『悲しみにさよなら』は、どんな悲しみのなかにいても、いつも寄り添ってくれる楽曲だ。

“ひとりじゃないさ”
玉置浩二が歌うこの言葉に、いったいどれほどの人が励まされたのだろう。

年齢を重ねるごとに増す魅力


リリース当時の『悲しみにさよなら』といえば、玉置がスーツのポケットの片手をつっこみながら、クールに淡々と「上手い歌」を歌っていたようにも思う。
しかし、あれから30年以上の時が流れた。いま玉置が歌うのは、ただ上手い歌ではない。魂に響く歌だ。

メンバー全員が60代を迎えたとはとても思えないほど、安全地帯の超実力派サウンドは健在である。

個人活動も精力的に行い、今年は『安全地帯 IN 甲子園球場「さよならゲーム」』の開催も決定した。

安全地帯のサウンドは、これからさらに深みが増していくことだろう。なんたって、彼らそれぞれが持ち寄った人生のスパイスが加わるのだから。

バンドは、続けること自体が難しいと聞く。

安全地帯にも、我々が知る以上の紆余曲折があったかもしれない。

それでも、5人で「安全地帯」。5人が、5人で音を楽しんでいる。

年齢の分だけシワを重ねた彼らの笑顔は、最高にかっこいい。

“生粋のミュージシャン”である安全地帯。70、80歳になってもずっと、5人の音を聴かせてほしい。

TEXT シンアキコ

▷玉置浩二・安全地帯 オフィシャルサイト ▷安全地帯 オリジナルアルバム 紙ジャケット・コレクション特設サイト ▷ユニバーサル ミュージック特設サイト

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