Eve初のCMタイアップ曲のテーマは生きる意味
毎度奇抜で前衛的な映像と、人気アーティストによる多彩な楽曲で話題の専門学校HALのTVCM。その2019年度CMソングに、インターネットを中心に活動するシンガーソングライター・Eve(イヴ)の書き下ろし曲『レーゾンデートル』が起用され、10月11日にはメジャー2枚目のデジタルシングルとして配信リリースされました。
タイトルに用いられている「レーゾンデートル」とは、フランス語の哲学用語「raison d’être(レーゾンデートルまたはレゾンデートル)」のことで、「存在意義・存在理由」を意味する言葉です。
生きる意味をテーマに、若者の持つ情熱や焦燥感を捉えた歌詞と疾走感のあるバンドサウンドに惹き込まれます。
それでは、さっそく歌詞の意味を読み解いていきましょう。
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漂うこの空気にストップ ただ矛盾を抱いている
今更猛スピードでスタート切ったって
どうやったって追いつきゃしないぜメーデー
強がりに嫌気がさしている
弱音も吐けないままでいる 弱音も吐けないままでいる
≪レーゾンデートル 歌詞より抜粋≫
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はじめに、主人公は自分の中に矛盾した気持ちがあることを言い表しています。
彼は同じ夢を追いかける人たちをレーサーのように例え、明らかに出遅れた自分に「今更猛スピードでスタート切ったって」と諦めを感じているようです。
とはいえ、彼も初めから夢を諦めて何もしなかったわけではないのでしょう。
スタート地点にいるということは、その夢を叶えたいと本気で思い、熱意を燃やしていたはずです。
ところが夢に近づくための肝心の一歩が踏み出せず、自分の弱さを隠そうと言い訳をして強がっています。
そんな自分が嫌なのに誰にも「弱音を吐けないままま」、諦めたくない気持ちと諦めるしかないという思いの間で揺れ動いているのです。
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損得のものさしでぽいって捨てられ
よそいきの顔してまたやり過ごす
存在もないようなもんだ 誰もわかっちゃいないや
感情論に縋ってなんて憚れば堕ちる
≪レーゾンデートル 歌詞より抜粋≫
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何でも「損得のものさし」で価値を決められてしまう社会の中では、夢を追い続けられなくなる人も少なくないでしょう。
「ぽいって捨てられ」ても、周囲に倣って気にしていないような「よそいきの顔してまたやり過ごす」ばかり。
しかし、そうしていると熱意が少しずつ冷めていき、自分の存在価値も不鮮明になって何がやりたいのか分からなくなってしまうものです。
他人に遠慮していればすぐに潰されてしまう世の中にあって、強い意思を持って自身の夢を追い続けることの難しさをはっきりと歌っています。
主人公が見つけた自分の存在意義の解釈とは?
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だけど 夢に目覚めた君は何をみるの
最低な日を超えて
最善の成る方へ
どうしたんだ 期待なんてもうしてられないから
その時をじっと待っている
≪レーゾンデートル 歌詞より抜粋≫
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この楽曲に出てくる「君」は、おそらく他者ではなく自分自身の中の夢を叶えたいと思っているポジティブな面を指していると考えられます。
確かに夢を実現させることは簡単ではありませんが、自分の夢が見つかった時、誰もがそこに美しく輝く景色を見るのではないでしょうか。
夢を叶えた自分、好きなことに一生懸命打ち込む自分を想像して心が沸き立つのを感じるはずです。
そこに周囲の目や世間の考えが入る隙はありません。
それなのに夢を叶えるために何もしないでいるなら、その人生は「最低な日」にしかならないでしょう。
世間が自身の価値を見つけてくれることを期待するのではなく、認められるチャンスが訪れる瞬間を自分自身で見つけることが必要です。
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曖昧な視界に立って
際限のない方へ
こんな気持ちさえも捨てきれないのなら
混ざって混ざって生まれ変わるまで
終わらない夢を
≪レーゾンデートル 歌詞より抜粋≫
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現実は不安ばかりで、どうしていいか分からなくなることもあります。
不安や怖さが捨てられないのも仕方がないことです。
だから捨てるのではなく「混ざって混ざって」自分の中に取り込んでいく。
弱ささえも糧にして新しい自分に「生まれ変わる」なら、夢は現実のものになっていくでしょう。
そしてそれは自身の存在意義となり、確かな生きる意味になって心を強くしてくれるはずです。
葛藤はあっても夢を持って人生を生きていく
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従わないことでしか 忌み嫌われることでしか
焦りだけでは満たされない ありのままなど見せたくはないね
ヘラヘラと今日も笑っている
弱音も吐けないままでいる 弱音も吐けないままでいる
詭弁に振る舞う 自己暗示さえ
真実に拘る 必要もない
裏切ってしまいそうな今日が かける言葉もないな
金輪際もう一生なんて憚れば堕ちる
≪レーゾンデートル 歌詞より抜粋≫
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2番では募っていく焦燥感と満たされない気持ちを告白しています。
「ありのままなど見せたくはない」から笑って他人を誤魔化して、自己暗示で自分自身も誤魔化してはまた自分を見失ってしまっているようです。
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だけど 答えなど待っても君に会えやしないと
相対 武器をとって
感情の鳴る方へ
≪レーゾンデートル 歌詞より抜粋≫
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しかし、どうするべきか迷うとしても、誰かから与えられる答えを待っていてはいつまで経っても夢に近づくことは叶いません。
弱い自分やライバルたちと戦うための自分にしかない「武器をとって」、時には感情のまま夢を追いかけてもいいはずです。
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足りないものばかりの僕ら
外見だけ取り繕った
続かないことに苛立った
他人を見下し嗤ったんだ
そうしないと もう僕の心は壊れてしまうから
≪レーゾンデートル 歌詞より抜粋≫
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「足りないものばかり」だから「外見だけ取り繕った」り、他人を見下すことで自尊心を保とうとしたりする主人公の気持ちに共感する人はきっと多いでしょう。
湧き出る自分への苛立ちで壊れそうになっている心を守るには、なりふり構っていられないこともあります。
しかし、自分の殻に閉じこもっていて本当に心が満たされる日は来るのでしょうか?
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本当はもうわかってるんだ
期待されない人生だ
根拠もないあの日のような
真っすぐな瞳は
≪レーゾンデートル 歌詞より抜粋≫
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他人に期待されていなくても、夢の実現までの道のりが遠いとしても、夢に向かって一心に行動し続けるなら不安や焦燥感以外のもっとポジティブな気持ちで心を満たせるはずです。
根拠もなくただ純粋に夢を抱いた時の「真っ直ぐな瞳」で自分の人生を見つめれば、きっと道は開けます。
“あなたの人生はあなただけのもの”
そんな力強いメッセージが伝わってきますね。
「レーゾンデートル」が人生の迷いを晴らしてくれる
Eveの『レーゾンデートル』は、自分の存在意義は自身で決めるものだという実存主義の考えが反映された楽曲です。人生の中で常に生まれる不安や葛藤を認めつつ、夢を抱くことの価値を示してくれるこの楽曲は、日本のみならず世界でも高く評価されています。
自分の生きる意味を見失いそうな時や夢に挫折しそうな時、ぜひこの曲を聴いて力をもらってくださいね。