ONE OK ROCKもカバーする「A Thousand Miles」、途方もない距離は悲しみの証

聴けば「ああこれ!」となる日本人におなじみの洋楽ヴァネッサ・カールトンの「A Thousand Miles」。実は、壮大な物語が隠されているのをご存知ですか?

2016年6月12日


例えば、ダニエル・パウダーの「BAD DAY」や、ジェームス・ブラントの「You’re Beautiful」と同じくらいの割合で、聴けば「ああこれ!」となる日本人におなじみの洋楽。それが、ヴァネッサ・カールトン「A Thousand Miles」の位置づけではないでしょうか。前奏のメロディーが印象的な、爽やかで美しいピアノ・バラードですよね。



ONE OK ROCKが2014年9月に横浜スタジアムで開催した野外ライブ『Mighty Long Fall at Yokohama Stadium』では、中盤に、Takaの「俺とRyotaが、今のところ世界でいちばん好きな曲」という紹介のもと、アコースティックセットで披露されたこともあります。しっとりと聴かせる、このバージョンも素敵でした。

でも、なぜこれほど多くの人に支持されるのかといえば、それはきっと、裏に悲しい意味を含んでいるから。歌詞をあらためて読むと、「A Thousand Miles」は実は壮大な失恋ソングになっているって、知っていましたか?


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Making my way downtown にぎやかな街を、ただ歩く
Walking fast, faces pass 道行く人とすれ違いながら、足早に
And I'm home bound 私は家路につく
Staring blankly ahead ぼんやりしながら
Just making my way ただ歩いていくの
Making a way through the crowd 人混みの中を通り抜けて…

And I need you あなたが必要なの
And I miss you あなたがいないと寂しくて
And now I wonder... どうしたらいいかわからない

If I could fall into the sky 空にこの身を投げ出して
Do you think time would pass me by 時間が過ぎ去るのをただ待っていたい
'Cause you know I'd walk a thousand miles 私は1,000マイルだって歩けるわ
If I could just see you tonight もしも今夜、あなたに会うことができるなら

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曲のタイトルにもなっている1,000マイル=約1,600kmのこと。日本で言うと、本州(約1,500km)の長さを想像してもらえばいいでしょう。この壮大な距離を例に出して、ヴァネッサが表現したかったもの。それは、離れてしまった二人の心の遠さです。

「遠さ」といっても、物理的な距離ではありません。1,000マイルとは、車で走破しようとすると、約1日がかりの距離。その距離を、この曲の主人公は「今夜」歩き切ると言っている。(実際にGoogleで検索してみると、約300時間=12.5日間かかるのですが…)
つまり、現実では起こりえないことを実現させてまで、熱烈に「今あなたに会いたい」という意味なんですね。

そして、英語では「A Thousand Miles」と頭に「a」があるのに「miles」と複数形を表す「s」を付けるのは、「絶対にたどり着かない距離」を表しているという解釈もできます。たとえ、その距離を歩ききっても「あなたには会えない」。つまり、何をしようと絶対に会えないくらいの心の距離が、二人の間にはできてしまった…ということなんです!

別れてヨリを戻すカップルもいるけれど、相手がガンコだと「もう会わない」という決心は岩のように固いもの。メールも電話も着信拒否されたら、それ以上傷つくのは怖くて近寄れない、という状況でしょうか…。

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It's always times like these when I think of you あなたのことを考えるとき、こんなふうにも望んでしまう
And I wonder if you ever think of me 「あなたも私のことを思ってくれる瞬間があるかな」なんて
'Cause everything's so wrong でも、そんなことあるはずない
And I don't belong living in your precious memories あなたの大切な思い出の中に、きっと私はいない

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「あなたの大切な思い出の中に、きっと私はいない」
失恋した直後は、こんなふうに必要以上にネガティブ思考に陥りがちなのもよくわかります。「私はこんなに引きずってるのに、向こうはもう別の相手がいるんじゃないか」とか。「そもそも、そんなに好かれていなかったのかもしれない…」とか。
でも、別れを告げた相手に聞くに聞けず、悶々と日々を過ごした経験は、誰しもあるでしょう。

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And I still need you やっぱりあなたが必要
And I still miss you やっぱりとても恋しいの
And now I wonder.... そして考えてしまうのよ…
If I could fall into the sky 空にこの身を投げ出したら
Do you think time would pass us by 時が私たちだけ残して、過ぎていってくれないかって

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けれど、どんなに強がっても、一人になると「寂しい」「恋しい」という本音もぽろぽろとこぼれてきます。「時が私たちだけ残して」というのは、「ずっと二人きりでいたい」ということだから、正直ちょっとだけ未練が感じられますよね。だぶん大丈夫。それが普通。
ただし、曲を最後まで歌っても、やっぱり「あなた」には会えないまま。空想は現実にならないまま。「1,000マイル歩き切る!」という意気込みはどこへやら、歩き疲れて家に帰るしかないのです。

遠距離恋愛だったら、二人の気持ちがつながっていれば何とかやっていけるかもしれない。でも、歩き切れない1,000マイルも開いてしまった、心の距離は埋められないのですから…。

ネタ明かしをすると、実はヴァネッサ本人は、インタビューでこの曲を「亡くなった祖父のことを想って作った」と語っています。でもこの「1,000マイル」が、失恋によって離れてしまった「あなた」と「私」の心の距離を表しているとしたら、どうでしょう。世にも悲しいラブソングだと思いませんか?

悲しい気持ちを、壮大な距離に例えて歌った「A Thousand Miles」。ONE OK ROCKがカバーしたことから、世代や男女問わず共感できる感情なのだということもわかります。

美しいメロディーだけでなく、意味深な歌詞も、この曲が世代を超えて歌い継がれる由縁なのでしょうね。

TEXT:佐藤マタリ

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