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文化祭ガールズバンドのありそうな風景を描く岩里祐穂の作詞術!Buono!『ロックの神様』

岩里祐穂はベテラン作詞家。2016年5月には自ら作詞した楽曲を集めたアルバム『Ms.リリシスト』をリリースしました。ももクロの『サラバ、愛しき悲しみたちよ』や大ヒットしたアニソン『創聖のアクエリオン』など、様々な楽曲の作詞を担当しています。



岩里祐穂はベテラン作詞家。2016年5月には自ら作詞した楽曲を集めたアルバム『Ms.リリシスト』をリリースしました。ももクロの『サラバ、愛しき悲しみたちよ』や大ヒットしたアニソン『創聖のアクエリオン』など、様々な楽曲の作詞を担当しています。



そんな岩里祐穂が作詞した曲の一つ『ロックの神様』。この曲はアイドルグループBuono!の楽曲の一つ。音楽をやる初期衝動を歌詞にしている、ガールズバンドの曲です。「ガールズバンドがメンバーを集めて文化祭で音楽をやる」という内容の歌詞。これは意外とありそうでありません。現実でもアニメでもガールズバンドはたくさん存在しますが、こういった「ありそうな出来事」を歌詞にすることは案外ないのです。まさにアイドルだから成立している架空の物語の楽曲。



“体育館の裏を通り抜ける風が
下手くそなギター 遠くまで運んでいくよ
あと10日で文化祭 やっと見つけたメンバー
きっとロックの神様が逢わせてくれたんだ”


この最初のAメロから曲の風景が浮かびます。「体育館の裏を通り抜ける風が 下手くそなギター 遠くまで運んでいくよ」風がギターの音色を運ぶ、という歌詞。

まず「下手くそなギター」というフレーズは、バンドをやっているとかえって出てこないフレーズ。極端に自虐になってしまうからです。Buono!は、メンバーが楽器を弾くわけではありません。だから成り立っているといえる歌詞。

また、実際にバンドで楽器をやっている人が歌詞を書くと「ギターを鳴らす」といった歌詞になるでしょう。自らが音を出して聴き手に届ける、という意識が先に出るからです。この最初のフレーズで浮かんでくる「体育館の裏の校舎からギターの練習をする音が聴こえてくる」という風景。こういった風景、俯瞰の視点は作詞家だからこそ出てくるのだと言えます。

次にくるのが「あと10日で文化祭というタイミングで、やっとバンドのメンバーが見つかった」という出来事。この出来事も俯瞰の視点ですね。「あと10日」だと練習できる日程としては、ちょっと足りないけれど、まだ何とかなるかもしれないタイミング。これも絶妙な日程ですね。

そしてここでタイトルの「ロックの神様」という歌詞が登場します。文化祭で一緒に音楽をやるメンバーを、ロックの神様が出会わせてくれた!という歌詞。たかだか文化祭のバンドメンバーが集まっただけで、「ロックの神様」は大げさじゃないか、とも思える歌詞。しかし、この楽曲ではこのフレーズが成り立っています。それは、メンバーが見つかったという喜びが、この「ロックの神様」というフレーズに集約されているから。

この歌詞も、実際のガールズバンドだとかえって具体的なイメージを想起させてしまうかもしれません。神格化されている過去のイギリスやアメリカや日本のバンドのことを指すのか、と。しかし、アイドルの楽曲だからこそ、そういったイメージから多少は自由になれます。「どんなバンドから影響を受けましたか?」と、まず聞かれないから。

“止まらない 湧きあがる 衝動メロディ
かき鳴らせ 体中で 流れ星 つかまえて My Dream 叶えたい
青空にド根性 見せつけてやれ Rock'n'roll Girls”


このサビの歌詞「止まらない 湧きあがる 衝動メロディ」も、実際に作詞作曲するガールズバンドからはなかなか出てこないかもしれません。メロディや歌詞が浮かばない、ということがよくあるからです。また「青空にド根性 見せつけてやれ Rock'n'roll Girls」のフレーズも、この曲ならでは。自らロックンロールガールズと名乗り歌詞にするようなバンドもないでしょう。ましてや「流れ星 つかまえて My Dream叶えたい」というフレーズも、バンドをやっているとかえって、恥ずかしてくて出てこないはず。

このサビのフレーズから、青空のもとでガールズバンドが演奏している風景が浮かびます。流れ星をつかまえるようなキラキラ感もアイドル楽曲ならでは。ある種のキラキラした青春のガールズバンド物語を作詞家が描いています。この描写力こそ作詞家の力。

この楽曲は、作詞も作曲も実際に歌う人もバックで演奏する人も全て異なります。分業である種の世界観を作っているからこそ、全てのガールズバンドへの応援歌のようになっているんですね。


TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

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