「蛍の光」のメロディがお店で流れ始めると、誰もが「もう閉店だから帰らなくちゃ」と思ってしまうのは、なぜなのでしょうか?
この記事では閉店のBGMになっている理由や歌詞の意味、そして「蛍の光」を聞くとなぜ帰りたくなってしまうのか理由を解説します。
この記事でわかること
「蛍の光」とは
「蛍の光」は「仰げば尊し」と共に日本では卒業式でよく歌われる定番曲。
原曲は、スコットランド民謡「オールド・ラング・サイン(久しき昔)」です。
「オールド・ラング・サイン(久しき昔)」は世界にも広がり、日本では1881年(明治14年)に稲垣千頴が作詞した日本語歌詞によって唱歌「蛍の光」になりました。
まずはじめに「蛍の光」の意味と、間違われやすい別の曲「別れのワルツ」について紹介します。
蛍の光の意味
タイトルの「蛍の光」は、灯が無い夜でも蛍の光や雪に反射する光で勉強したという、中国の故事「蛍雪」に由来しています。
歌詞の冒頭は「蛍の光、窓の雪」となっていますよね。
「苦労しながらよく頑張って、勉強しました」という内容の歌なので、海軍兵学校の卒業式などで歌われるようになり、日本では卒業式の定番曲となりました。
オリジナル曲「オールド・ラング・サイン」の歌詞は、古い友達との変わらぬ友情を歌う内容になっていて、英語圏では新年やセレモニーで歌われる曲です。
閉店BGMは蛍の光じゃなかった?
多くの人が、閉店時のBGMは「蛍の光」だと思っているかもしれません。
しかし実は、閉店するときにかかる曲は、日本人作曲家の古関裕而が編曲した「別れのワルツ」という別の曲です。
「別れのワルツ」は「蛍の光」と同じ楽曲から誕生した曲で、映画「哀愁」の劇中曲を元に編曲されました。
映画のヒットと共に「別れのワルツ」も大ヒットし、日本でも公共施設や商業施設などでよく流されるようになり、今のような有名曲になったのです。
映画「哀愁」
映画「哀愁」は1949年日本公開で、悲恋を描いたラブストーリーです。
「風と共に去りぬ」で有名な女優ヴィヴィアンリーが主演を務めたことでも話題を集めました。
戦時下のロンドンで、ヒロインは軍人のロイ大尉と出会い恋に落ちます。
大尉が再び戦場に向かう前、レストランで楽しい時を過ごす2人。
店の閉店時間になり、2人が別れを惜しむように踊るシーンで演奏されていたのが、「オールド・ラング・サイン」のワルツです。
このシーンは印象的な場面として映画を観た人の心に強く残り、「オールド・ラング・サイン」のワルツも有名になりました。
「別れのワルツ」はこのシーンで使われた曲を、レコード化するために日本で作られた曲です。
なぜ閉店間際のBGMに使われている?
なぜ「別れのワルツ」が閉店間際のBGMに使われるようになったのかというと、映画のイメージによるものが大きいでしょう。
映画「哀愁」で2人が初めてのデートをしたレストランが閉店する際、最後に演奏されたのが「別れのワルツ」でした。
「名残惜しいけれど、この曲でまた逢うまでお別れ」というメッセージをこめた曲は、恋人たちの別れだけでなく、閉店時のお客と店の別れにも重なります。
日本でヒットした「別れのワルツ」は、別れを連想する物悲しい音楽の効果もあり、閉店を知らせる定番BGMとして浸透していきました。
「蛍の光」と「別れのワルツ」の違い
「蛍の光」と「別れのワルツ」は同じメロディなので、聴き分けるのは難しいかもしれません。
しかし、リズムを聴いてみるとその違いが簡単に分かります。
「蛍の光」は4分の4拍子、「別れのワルツ」は4分の3拍子なので、「1・2・3・4 1・2・3・4」とカウントできれば「蛍の光」で、「1・2・3 1・2・3」になるなら「別れのワルツ」。
「4拍子でカウントしたら合わない」「3拍子でカウントしたら気持ち悪い」と感じるなら、もう1つの曲だと聴き分けられるでしょう。
ここで気を付けたいのが、どちらの曲も始まりは最初の小節の前の拍から始まることです。
4拍子の「蛍の光」ならスタートが「(4) 1・2・3・4 1・2・3・4」となり、3拍子の「別れのワルツ」なら「(3) 1・2・3 1・2・3」になります。
蛍の光を聴くとなぜ帰りたくなる?
お店にいる時に「蛍の光」または「別れのワルツ」が聴こえてくると、誰もが反射的に「閉店だから、帰ろう」と感じますが、それには2つの理由があります。
その1つは「別れのワルツ」のリズム。
「別れのワルツ」のリズムは3拍子ですが、日本の楽曲は4拍子の曲が多く、3拍子の曲は日本人にとって違和感のあるリズムと言われています。
したがって、日本では3拍子の曲が流れていると何となく落ち着かなくなり「もう帰ろう」という雰囲気に。
また「別れのワルツ」と同じメロディの「蛍の光」は卒業式のイメージが強い曲なので、音楽が始まると「もう、ここでの時間は終わった」という締めの気分になります。
蛍の光を閉店間際に流すメリット
多くの店で閉店が近づくと「蛍の光」の放送を始めますが、音楽を流すことはお店側には何かメリットがあるのでしょうか?
閉店時間は最初から決まっているので、音楽など流さずにいきなり閉店させたり、お客に「閉店の時間です」とアナウンスしたりしても、同じような気もしますよね。
最後に、「蛍の光」を使って閉店を知らせるBGMにする効果について紹介します。
お客の退店を促す
「蛍の光」を閉店のBGMにするメリットは、客に対するお店側の気遣いです。
いきなり閉店すれば驚く客もいますし、アナウンスで一方的に告げられても「まだ用事が済んでいないのに」と気を悪くする客もいるかもしれません。
しかし、閉店のサインとして誰もが知っている「蛍の光」のメロディーを流せば、客側は「そろそろ閉店の時間なんだな」と気づくので、自然に退店することができます。
店側にとっても「閉店ですから、出て下さい」とストレートに言わなくても退店を促せるので、客との関係を壊すことがありません。
終業意識を高める
「蛍の光」のBGMは従業員や企業にとっても、終業意識を高めるメリットがあります。
場の雰囲気を重んじる日本人は、終業時間になってすぐに仕事を終えたり帰ったりするのが苦手です。
他の従業員の様子に合わせて、残業している人がいれば付き合いで残業したり、先輩が残っているなら先に帰りづらかったりすることも多いでしょう。
しかし、終業前に「蛍の光」がかかることが決まっていれば、それを合図に「もう終業しても大丈夫」という雰囲気ができます。
ノー残業デーの意識を高めて従業員に終業時間を守らせるため、「蛍の光」を使って残業ができない空気を作ることもできるでしょう。
蛍の光を閉店間際に流すことには理由があった!歌詞の意味にも注目して聴いてみよう
閉店時間を知らせるBGMは「蛍の光」と同じ曲から編曲された「別れのワルツ」。
「別れのワルツ」は、映画「哀愁」の劇中曲をレコード化するために、古関裕而が編曲しました。
2曲の決定的な違いはリズムにあって、「別れのワルツ」3拍子、「蛍の光」は4拍子です。
「蛍の光」は卒業式に歌われる定番曲で、映画のイメージもあるヒット曲なので、閉店を知らせるBGMとして浸透してきました。
「蛍の光」は日本では苦学の卒業イメージですが、英語圏では違う意味の歌詞もあるので、それぞれの意味に注目しながら聴いてみるのも面白いでしょう。
この記事のまとめ!
- 「蛍の光」の原曲は友情がテーマのスコットランド民謡だったが、日本では卒業式の定番曲になった
- 閉店のBGMは同じ曲を原曲とした「別れのワルツ」
- 2曲の違いはリズムで「蛍の光」は4拍子、「別れのワルツ」は3拍子
- 曲のヒットや3拍子のリズム、別れのイメージで、閉店の曲として定着した
- 反射的に帰りたくなる「蛍の光」の歌詞にも注目して聴いてみよう