激しいロックやメタルで主に使われている、「シャウト」や「デスボイス」と呼ばれる発声法を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
「シャウト」とは直訳すると「叫ぶ」という意味ですが、叫ぶことはもちろん、猛獣のように低くうなる声も「シャウト」に含まれます。
真似して出そうとしたことがある人はわかると思いますが、見よう見まねで叫んでいるだけでは出せません。
この記事でわかること
シャウトの種類
「シャウト」は「叫ぶ」という意味の言葉ですが、音楽で使われる場合、特に海外では「スクリーム」と呼ばれています。
シャウトは発声法によって、
- 「フライ・スクリーム」
- 「フォールス・コード・スクリーム」
の2種類に分かれているのです。
それぞれ出し方も音色も全く違うので、自分の出したい音を見極めるためにも、それぞれの特徴について知っておきましょう。
フライ・スクリーム
「フライ・スクリーム」は、声帯を閉じたままで発声するシャウトです。
映画「呪怨」の「あ゛あ゛あ゛あ゛」という声(エッジボイス)を裏声に乗せ、叫ぶことでシャウトします。
エッジボイスで出したブツブツと途切れるような歪みが乗り、中音域~高音域のシャウトで活躍することが多いです。
フォールス・コード・スクリームより発音が聞き取りやすく、幅広いジャンルで使われているので、「シャウト」と聞くとフライ・スクリームを想像する人が多いでしょう。
フォールス・コード・スクリーム
「フォールス・コード・スクリーム」は、声帯を大きく広げ、そこに声を通すことで歪ませるシャウトです。
- 「グロウル」
- 「ガテラル」
といった低音のシャウトは、フォールス・コード・スクリームで出していることが多く、日本で「デスボイス」と言われるとこの発声をイメージする人が多いのではないでしょうか。
シャウトを出す前の準備
シャウトは乱暴に叫ぶイメージがあるため、喉に悪そうだと思っている人も多いのではないでしょうか?
実は、シャウトはボーカルの様々なテクニックを応用した、かなりハイレベルなテクニックなのです。
前提として、クリーンボイスできちんとした発声ができていないとシャウトは出せません。
通常の発声練習と一緒で、
- 腹式発声
- 姿勢
- 喉の使い方
など基本的なことができていない人はしっかりと身に付けてから練習しましょう。
ウォーミングアップをする
シャウトをする前は、必ずウォーミングアップをしましょう。
ウォーミングアップを怠ると、思ったように発声ができなかったり、喉を痛める原因になってしまいます。
- 発声の際に力が入りがちな首や肩を回す
- お腹の筋肉をほぐして体を温める
などの簡単なウォーミングアップをするだけでも、ベストな状態でシャウトができるようになりますよ。
姿勢を整える
姿勢を整えると、発声するときに使う筋肉が動かしやすくなります。
特に腹筋や背筋に力を入れやすくするため、まっすぐに立って前を向きましょう。
猫背になったり、顎が上がりすぎてしまうと無駄な力が入ってしまうので、注意が必要です。
慣れないうちは、
- 壁に背中を付ける
- 鏡を見ながら姿勢をチェックする
などをして、正しい姿勢で歌う癖を付けましょう。
腹式呼吸をする
シャウトも発声法の一つなので、通常の発声と同じく腹式呼吸が重要です。
シャウトをする前の準備として、腹式呼吸を意識しながら大きくゆっくりと呼吸をしましょう。
「ドッグブレス」といって、犬のように「ハッ!ハッ!」と小刻みに力強く吸って吐く、という呼吸法です。
どちらも、息を吸うときにお腹が膨らみ、吐くときにお腹がへこむのをしっかりと感じながら行いましょう。
喉を開く
喉を開くことでしっかりと体の外に、音が出せるようになります。
喉が締まっている状態でシャウトをすると、声が詰まって出しづらく、喉を痛める原因にもなりかねません。
喉の力を抜き、あくびをするときのイメージで喉仏を下げ、口の中を大きく広げる練習をしましょう。
しっかりと喉を開けてシャウトすることで、大音量で迫力のある声が出せるようになります。
間違ったシャウトの出し方
シャウトはクリーンボイスと比べてまだまだ正しい出し方が知られていないため、間違ったやり方で練習してしまう人も少なくありません。
間違った練習法を続けると、シャウトが上達しないだけでなく、喉を痛めてしまう可能性もあります。
最悪の場合、喉が潰れてしまうこともあるので、以下で紹介するやり方は絶対にしないように注意しましょう。
ただ叫んでいるだけ
ただ叫ぶだけでもシャウトのような声は出るかもしれませんが、絶対にやめてください。
ロックバンドやメタルバンドのボーカルを見ていると、感情に任せてただ叫んでいるようにも見えますが、そうではありません。
ただ喉を締めて声を歪ませるやり方ではすぐに喉を痛め、ポリープや結節の原因になる可能性があるので注意が必要です。
大量に息を吐いて歪ませる
大量に息を吐いて歪ませるのも絶対にやってはいけません。
歪ませるためには通常の発声よりも多く息を吐く必要がありますが、息が多ければ多いほど良いということではありません。
歪ませるのに必要な量以上の息を出してしまうと、息が続かなくなって瞬間的なシャウトしか出せなくなります。
声を歪ませるには、どの程度息を吐けば良いかを把握し、息の量をコントロールする感覚をつかみましょう。
咳払いのように出す
咳払いのように出す発声法も、間違ったシャウトです。
風邪をひいたときに出る咳を想像するとわかりますが、咳をしすぎると喉が痛くなりますよね。
それと同じで、咳をするようにシャウトをすると喉を痛める原因になります。
ただ叫んでいるだけの場合と同じく、ポリープや結節の原因にもなるので絶対にやめましょう。
正しいシャウトの出し方と練習方法
シャウトは間違ったやり方で行うと喉を痛める危険性があるので、正しい出し方で練習することが大事です。
正しい練習のやり方を知ることで、喉を痛める危険性も低く、上達も早くなります。
- フライ・スクリーム
- フォールス・コード・スクリーム
で出し方が違うので、まずは自分の出したい音色のスクリームを練習してみましょう。
まずはエッジボイスを習得
シャウトの練習で特にフライスクリームを出したいときは、まずエッジボイスを習得しましょう。
エッジボイスは「ボーカルフライ」とも呼ばれ、声帯を閉じてブツブツと途切れた声を出すことです。
映画「呪怨」に出てくる、子供の「あ゛あ゛あ゛あ゛」という声をイメージし、真似してみる。
エッジボイスはシャウトだけでなく、通常のボイストレーニングでも行われる練習なので、シャウト以外でも役に立ちますよ。
フライ・スクリームの出し方
フライ・スクリームは、エッジボイスに通常の歌声を乗せるイメージで発声します。
- まずは少ない息の量で感覚をつかみ、音程を上げながら息の量を増やしていきましょう。
- 舌の根本を下げて勢いよく息を吐き、頭の先から声が出るイメージでやるとコツをつかみやすいです。
- 最初は「イヤー」や「イエー」などの発音で出すとやりやすいですよ。
フォールス・コード・スクリームの出し方
フォールス・コード・スクリームでは、声帯を大きく開き、通常の発声よりも多めに息を通して声を歪ませます。
- あくびやため息をするときのイメージで口を開き、喉仏が下がっていることを意識しましょう。
- 上手く喉仏が下がらない場合は、舌先を丸めると舌の根元が自然と下がり、喉仏も下げやすくなります。
フォールス・コード・スクリームは主に低音のシャウトで使われるので、普段の声よりも低音ボイスで出すと感覚をつかみやすいですよ。
シャウトの出し方を真似したくなるバンド7選
ラウドロックやメタルではシャウトが使われることも珍しくありませんが、ポピュラーな音楽ではあまり見かけませんよね。
しかし、日本のバンドでもかっこいいシャウトを披露し、国内外のフェスに引っ張りだこのバンドもいます。
最後にシャウトが上手く、出し方を真似したくなるバンド7選を紹介します。
マキシマム ザ ホルモン
マキシマム ザ ホルモンは、日本のラウドロックシーンで活躍している有名なバンドで、普段激しい音楽を聞かない人でも名前は知っているという人は多いのではないでしょうか?
- メタル
- ハードコア
- ラップ
ボーカルのダイスケはんは、キャーキャーと叫ぶ高音のシャウトや、極悪にうなる低音のグロウルを見事に使いこなしています。
Fear, and Loathing in Las Vegas
「ベガス」の愛称で親しまれているFear, and Loathing in Las Vegasは、ラウドロックとエレクトロミュージックを組み合わせた「ピコリーモ」と呼ばれるジャンルを確立しました。
ボーカルはSoとMinamiの2人で、シャウトだけでなくオートチューンをかけたクリーンボイスを効果的に取り入れ、激しいだけでなくキャッチーな曲もたくさんあります。
アニメの主題歌も歌っているので、ラウドロックファン以外にもファンの多いバンドです。
Pay money To my Pain
「PTP」の略称で知られているPay money To my Painは、現在日本のラウドロックシーンで活躍するバンドに大きな影響与えたバンドです。
ボーカルのKは海外のスクリーモやメタルコアから大きな影響を受けており、エモーショナルな歌声と激情的なシャウトを織り交ぜて歌っています。
2012年12月にKが急逝し、バンドは活動停止していますが、間違いなく日本のラウドロック史に残る偉大なバンドです。
coldrain
- エモ
- スクリーモ
- ポストハードコア
ボーカルのMasatoの突き抜けるようなハイトーンボイスと激しいシャウトは、どちらも日本トップクラスの実力で、2018年には武道館公演も成功させました。
海外のプロデューサーを迎えて楽曲を製作することも多く、日本だけでなく海外での人気も高まっています。
Crossfaith
Crossfaithは、メタルコアの激しいサウンドとデジタルサウンドを組み合わせた楽曲が特徴です。
ボーカルのkoieのシャウトは太くて迫力があり、地声成分が多いため耳に馴染みやすく、発音もはっきりしています。
海外でのライブも積極的に行っており、DOWNLOAD FESTなどの超大型フェスのメインステージに立つほど大人気のバンドです。
SiM
SiMはレゲエやスカ、ヒップホップなどのジャンルとへヴィミュージックを組み合わせた「レゲエパンク」で人気となったバンドです。
へヴィなリフやブレイクダウンを多用し、所々にレゲエやスカのリズムを取り入れることでキャッチーな楽曲に仕上げています。
ボーカルのMAHは、
- フォールス・コード・スクリームを中心としたシャウト
- ラップ
- オートチューン
Survive Said The Prophet
Survive Said The Prophetは「サバプロ」の略称で親しまれており、ラウドロックやエモ、ポップミュージックなどさまざまな音楽を取り入れています。
ボーカルのYoshはバイリンガルで英語詩の歌を巧みに歌いこなし、伸びやかなハイトーンボイスや激しいシャウトを使い分ける抜群の歌唱力の持ち主です。
激しいラウドロックやおしゃれでポップな曲など、曲によって全く表情の違う歌声を楽しめますよ。
a crowd of rebellion
2007年に新潟県で結成され、出身地にちなんで「コシヒカリーモ」を自称するラウドロックバンドa crowd of rebellion。
ボーカル宮田大作のエモーショナルなシャウトと、ギターボーカルの小林亮輔の超ハイトーンボイスのコンビネーションが魅力です。
メロディアスな歌や重たいブレイクダウンなど、目まぐるしく展開する曲を見事に弾きこなすアレンジ力にも注目してみてください。
シャウトは間違った出し方をすると喉を痛める!まずはエッジボイスから習得しよう
ロックやメタルでよく耳にするシャウトは、見よう見まねで出してしまうと喉を痛める可能性があるため、非常に危険です。
しかし、シャウトはクリーンボイスの延長線上にある発声法なので、正しい方法で出せば喉を潰すことはありません。
まずはミックスボイスなどの練習でも使うエッジボイスを習得し、正しい順序で練習をしましょう。
正しい方法でかっこいいシャウトを習得すれば、カラオケやライブでひときわ目立つ存在になれますよ。
この記事のまとめ!
- シャウトにはフライ・スクリームとフォールス・コード・スクリームの2種類がある
- 発声前にはウォーミングアップをして、正しい姿勢で腹式呼吸を意識しよう
- ただ叫ぶだけになったり、大量の息や咳払いのような方法で歪ませるのは間違い
- まずはエッジボイスを習得し、高音ならフライ・スクリーム、低音ならフォールス・コード・スクリームを練習しよう
- 日本にもかっこいいシャウトをするバンドがたくさんいるので、出し方の参考にしよう