ヒップホップを深堀りしていくと、必ず目にする言葉「オールドスクール」。
何となく聞いたことがあっても、説明するのは難しい人もいるでしょう。
この記事では、オールドスクールの定義や特徴、そしておすすめの名曲を紹介します。
この記事でわかること
オールドスクールの意味とは?
音楽における「オールドスクール」は、まだ「ヒップホップ」が世に知れ渡っていなかった頃のヒップホップを指します。
それが1970年代なのか、80年代なのかはメディアによって様々で、明確な時代区分の定義はありません。
そもそも「オールドスクール」という単語には「古き良き」「古典的」などという意味があります。
これらの意味から転じて、現代においてレトロ感のあるヒップホップのことをまとめて「オールドスクール」と分類することも多いようです。
オールドスクール・ヒップホップとはどんな音楽?
ヒップホップは元々、パーティーチューンのいい所だけ切り出して、踊れるようにループさせる遊びから生まれた音楽でした。
そこから、現在のような高いメッセージ性を持ち、商業的な音楽へと進化する途中にあった時期のヒップホップが「オールドスクール」と分類されることが多いです。
ラップパートはメッセージ性が強いものが少なく、加えて韻の踏み方が単純なことや、シンプルな楽曲構成、音数の少なさが特徴。
聴いてみると、現代のヒップホップに比べて素朴な印象を持つでしょう。
オールドスクール・ヒップホップの名曲7選
ここまでオールドスクール・ヒップホップの説明をしてきましたが、まずは実際に聴いてみましょう。
これから紹介する曲の中には、ラップという歌唱法が世間に知れ渡るきっかけとなった曲や、ヒップホップが1ジャンルとして認められた曲もあります。
現代に繋がる原点となる曲を聴けば、もっとヒップホップを楽しめること間違いありません。
Apache / The Sugarhill Gang
Apacheは1981年リリースの、The Sugar Hill Gangの代表曲の1つです。
サンプリングの元ネタは、Incredible Bongo Bandの「Apache」。
緩やかなフロウとラップが、まさにオールドスクールを象徴しています。
曲中で何度も繰り返される特徴的なフレーズは、きっとどこかで耳にしたことがあるはず。
ちなみに、Incredible Bongo Bandの「Apache」は、The Sugar Hill Gangがサンプリングした後も多くのヒップホップ・アーティストがサンプリングで使っていて、その数は300曲近くもあるそうです。
Rapper’s Delight / The Sugar Hill Gang
1979年にリリースされた、The Sugar Hill Gangの「Rapper’s Delight」。
「ヒップホップ」というジャンルが世界中に知られるきっかけとなった1曲です。
ただし、バッキングトラックはCHICの楽曲をそのまま使用、リリックもGrandmaster Cazのパクリなどと、今では考えられないような状態でリリースされました。
しかし、この曲を聴いてヒップホップを始めたアーティストもたくさんいるのだそう。
無茶苦茶なリリースでしたが、The Sugar Hill Gangがヒップホップ界に大きな功績を残したことには間違いありません。
Walk This Way / Run-D.M.C.×Aerosmith
ロックとヒップホップを融合させ、ロックファンの間にもヒップホップを浸透させたのがこちらの曲。「Walk This Way」。
元々は1975年にエアロスミスがリリースした楽曲を、Run-D.M.C.がカバーしました。
当初はRun-D.M.C.のメンバーのほとんどがカバーに反対していましたが「もしかしたら歴史が動くかも」と、考えをシフトしたのだそう。
また、エアロスミスのメンバーがレコーディングしたこともあり、最終的にはヒップホップ史に残る名曲となりました。
柔軟な考えを持っていた事で、世界的な大ヒットを生み出したRun-D.M.C.からは、人生における大切なことも学べそうですね。
The Breaks / Kurtis Blow
「The Breaks」は、ターンテーブルを持たず、バンド演奏でラップを繰り出すスタイルで注目を浴びたKurtis Blowの楽曲です。
ラッパーとして初めてメジャーと契約を結んだ人物としても知られています。
ファンキーなテイストに、存在感が一際目立つベース、そして次々と繰り出されるリリックは、まさに王道オールドスクール・パーティーチューン。
Kurtisはみんながハッピーになるようなラップをし、陽気なおしゃべりラッパーとして人気でした。
そのせいか、「The Breaks」には「おしゃべりカーティス」とおちゃめな邦題がつけられています。
The Message / Grandmaster Flash
ヒップホップの立役者として有名な三大巨頭と言えば、Kool Herc、Afrika Bambaataa、そしてGrandmaster Flash。
そのGrandmaster Flashがバンドを引き連れて発表した「The Message」には、世の中への不平不満、政治問題など強いメッセージ性が込められ、現代ヒップホップのパイオニア的楽曲として知られています。
それまでのヒップホップは、ハッピーでテンションをあげることに重きをおいていたため、ヒップホップのあり方を変えるきっかけになりました。
リリースから約40年後の2021年度グラミー賞では「生涯業績賞」を受賞するほど、ヒップホップ界に大きな影響を与えています。
U Can’t Touch This / M.C. Hammer
ラップをしながらストリートダンスをするスタイルで、一流アーティストの仲間入りを果たしたラッパー兼ダンサーのM.C.Hammer。
Rick JamesのSuper Freakをサンプリングした「U Can’t Touch This」は、彼の代表曲です。
あまりにも有名な曲なので、ヒップホップを知らない人でも聴いたことがあるに違いありません。
この曲を聴いて踊り出さない人はいないのではないかと言うくらい、ノリのいいパーティーチューン。
曲が流行った当時はM.C.Hammerのファッションやヘアスタイルを真似する若者が増えるなど、社会現象まで引き起こしました。
The Bridge Is Over / Boogie Down Productions
Boogie Down ProductionsとJuice Crewが起こした、ヒップホップの歴史の中で有名な「ブリッジバトル」。
その内容は、ヒップホップ誕生の地がブロンクスなのか、クイーンズブリッジなのかで論争しあったものでした。
ブロンクス側のBoogie Down Productionsは、反論ソングとして「The Bridge Is Over」をリリース。
落ち着いたバックトラックに辛辣なリリックをラップにのせた楽曲からは、当時の争いの酷さが伺えます。
オールドスクールの中でもかなり現代のものに近く、現代ヒップホップのファンでも聴きやすいのではないでしょうか。
日本が誇るオールドスクール・ヒップホップ3選
オールドスクール・ヒップホップが発展したのはアメリカですが、その影響を受けたアーティストは日本にもたくさんいます。
レトロなサウンドのため、現代のヒップホップに馴染みのある人にとっては少し違和感があるかもしれません。
しかし、熱い思いを込めたリリックには今の時代にも通ずるものがあり、きっと心に響くでしょう。
ここではジャパニーズ・ヒップホップ界の土台を作り上げたレジェンド達の、名曲を紹介します。
証言 / LAMP EYE
1995年にリリースされた、LAMP EYEの「証言」。
この曲はRINOやG.K.MARYAN、ZEEBRAなどジャパニーズ・ヒップホップの大物達がこぞって参加しています。
魂から叫んでいるかのようなラップにループされるビートは、多くの人の心を動かしました。
2016年にはリリース20周年を記念して7インチ版がリリースされるほど、まだまだ根強い人気のある1曲。
日本にヒップホップ文化がなかった頃にいち早くラップ文化を取り入れ、自分たちのものに昇華したこの曲は、ジャパニーズ・ヒップホップの歴史にはなくてはならない曲として崇められています。
蜂と蝶 / SOUL SCREAM
「蜂と蝶」は、リリックライティングのスキルの高さから「文系B-BOY」と呼ばれたSOUL SCREAMの代表曲です。
リリックのほとんどで韻を踏みつつも、ちゃんと前後の意味が通るように言葉選びがされていて、そのスキルの高さは多くのヒップホップファンをうならせました。
ビートはミニマルな構成ですが、流れるようなフロウはまさに空を飛び交う蜂と蝶のよう。
そのなめらかなラップに聴き入ってしまうでしょう。
BUDS MONTAGE / 舐達麻
ここまでジャパニーズ・ヒップホップのレジェンド達を紹介しましたが、最後はオールドスクールが行き着いた、現代のジャパニーズ・ヒップホップを紹介します。
舐達麻の「BUDS MONTAGE」 。
息継ぎをする暇もないくらい思いの溢れたラップの後ろで刻まれるビートとチルサウンドは、その辺のヒップホップとは一味違うことを思い知らされます。
影響を受けたアーティストはいないと豪語する彼ら。
きっと何十年か後、先人たちが0からヒップホップの世界を切り開いたように、この曲がオールドスクールとして語り継がれていくことでしょう。
オールドスクールはヒップホップの新時代の幕開け!古き良き名曲を楽しもう
ヒップホップの原点であるオールドスクール。
現代のヒップホップから入った人は受け入れるのに時間がかかるかもしれませんが、今の楽曲があるのはオールドスクールがあったからこそです。
今回は音楽にフォーカスした内容になりましたが、ヒップホップ文化にはダンスやグラフィティ、ファッションなども欠かせません。
エンタメを全て巻き込む「ヒップホップ」というジャンルはまだまだ、いい意味で私たちを裏切りながら進化していくことでしょう。
この記事のまとめ!
- ヒップホップがジャンルとして成り立つまでのヒップホップをオールドスクールと呼ぶ
- オールドスクールは現代のヒップホップに比べて素朴な構成
- オールドスクールヒップホップは現代のヒップホップに大きな影響を与えている
- ジャパニーズ・ヒップホップのオールドスクールにも名曲がたくさん