作曲に興味がある人なら1度は耳にする用語・ドミナントモーション。
音楽に関連する言葉なのは分かるけど、詳しい内容や使い方は分からないという人も多いのではないでしょうか?
この記事のもくじ
ドミナントモーションとは?
ドミナントモーションとは、ポップスやロック、ジャズなどのポピュラー音楽で使われる定番のコード進行です。
現代音楽やモードジャズなど使用頻度が低いジャンルもありますが、普段耳にする曲のほとんどがこの進行を使っていますよ。
はじめに、ドミナントモーションとはどんな進行なのかを、構造や特徴と共に紹介します。
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Ⅴ7からⅠに解決する進行のこと
ドミナントモーションとは、Ⅴ7からⅠ・Ⅰmコードに解決するコード進行のことです。
ノンダイアトニックコードを使って、部分的にⅤ7→Ⅰの動きを作っている進行をドミナントモーションと呼ぶこともあります。
ルートが5度下、もしくは4度上に動く「強進行」という流れになっているのが特徴。
コードが強進行することにより、滑らかで耳馴染みの良いサウンドが生まれます。
定番のルートモーション(ルートの動き)を取り入れ、親しみやすいサウンドを演出しているのがドミナントモーションの特徴です。
解決感のあるサウンドを演出する
解決感の強いサウンドが演出できるのも、ドミナントモーションの特徴です。
これは、不安定な響きの「ドミナント」から、安定した響きの「トニック」に進行する構造を持つため。
加えて、Ⅴ7は3rdと7thが全音3つ分(増4度)の関係で不協和音的な響きの「トライトーン」を含んでいるので、Ⅰの安定感がさらに強調されます。
もちろん、三和音を使った「G→C」でも解決感を演出できますが、トライトーンを含むG7を使ったほうが解決感の強いサウンドになりますよ。
不安定な響きを強調する「トライトーン」を使った解決と、滑らかに聴こえる「強進行」を組み合わせて作られているのがドミナントモーションです。
日本だけで使われている音楽用語
ドミナントモーションは、日本だけで使われている音楽用語です。
海外の書籍では「Authentic cadence」や「resolution」「resolve」などと記載されています。
「strong root motion」など、motionを使った用語もあるものの「dominant motion」という表記は基本的にありません。
単語や表現を覚える必要はありませんが、基本進行を分かりやすく表現した和製英語と覚えておけば、作曲や演奏の幅が広げやすくなりますよ。
定番のドミナントモーション一覧
D7→Gmaj7(G) | A7→Dmaj7(D) | E7→Amaj7 | B7→Emaj7(E) |
C7→Fmaj7(F) | F7→B♭maj7(B♭) | B♭7→E♭maj7(E♭) | E♭7→A♭maj7(A♭) |
B7→Em7(Em) | F#7→Bm7(Bm) | C#7→F#m7(F#m) | G#7→C#m7(C#m) |
A7→Dm7(Dm) | D7→Gm7(Gm) | G7→Cm7(Cm) | C7→Fm7(Fm) |
実際の楽曲でよく使われているドミナントモーションがこちらです。
最上段が、GやDなど調号に#が付くキーで使われるもので、2段目がFやB♭、E♭、A♭など調号に♭で使われるもの。
3段目は、#系のマイナーキー(短調)の定番ドミナントモーションで、4段目が♭系のマイナーキーの定番進行です。
数は多いですが、ルートの動きや音の変化さえ覚えれば簡単に導き出せるので、気になるものをピックアップして弾き雰囲気を掴んでいきましょう。
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ドミナントモーションのおすすめの使い方
ドミナントモーションは、好みのサウンドが出ていたり、音楽的に聴こえたりするならどう使っても問題ありません。
しかし、コード進行作りに慣れていないとうまく使えず、思い通りのサウンドにならないものですよね。
次はドミナントモーションのおすすめの使い方を紹介するので、基本の使い方をマスターしたい人はぜひ参考にしてみてくださいね。
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カデンツを意識して使う
ドミナントモーションの基本をマスターしたいなら、カデンツ(ケーデンス)を意識して使ってみるのがおすすめです。
カデンツとは、コード進行の基本的なルールを指す言葉で、「T(トニック))→D(ドミナント)→T」「T→SD(サブドミナント)→D→T」「T→SD→T」の3種類があります。
ドミナントモーションが使えるのは「D」を含む型で、キーCメジャーの場合だと上の楽譜のような進行になります。
コードの機能と型を覚えるだけで、簡単にコード進行が作れるので作曲初心者にもおすすめです。
進行や曲の最後に使う
コード進行の末尾部分や、曲の最後など、安定感のあるサウンドが必要な部分に使うのが、ドミナントモーションの定番の使い方です。
2小節~8小節単位でコード進行を作っているなら、最後にⅤ7→Ⅰの進行を挿入するだけでも、手軽にまとまりや安定感を出せるでしょう。
曲の最後に使う場合はⅤ7を鳴らし、最後にⅠコードを伸ばす構成にするだけでも、曲が終わる雰囲気を簡単に演出できますよ。
定番のテクニックなので、作曲に興味がある人はぜひ覚えてみてくださいね。
パートが切り替わるタイミングに挿入する
基本形に慣れてきたら、パートが切り替わるタイミングにドミナントモーションを挿入してみましょう。
やり方はBメロの最後にⅤ7を挿入し、サビの頭でⅠコードを鳴らすだけ。
シンプルなテクニックですが、手軽に人気曲のようなサビで開放感を演出するサウンドが作れます。
他にも部分的にマイナーキーにする手法や転調など、応用テクニックにもぴったりな汎用性の高い使い方です。
ジャジーにしたいならテンションを入れる
ドミナントモーションに、ジャジーなサウンドやモダンな雰囲気をプラスしたいなら、テンションを入れるのがおすすめです。
テンションとは、4和音に装飾音を加えるテクニックで、G7なら9thを加えたG9、13thを加えるG7(13)などが定番。
より不安定なサウンドにしたいなら♭9や#9、#11、♭13などの「オルタードテンション」を足しても良いでしょう。
ⅠコードをⅠmaj7(13)やⅠm9にしても独特なサウンドが楽しめるので、色々と試してみてくださいね。
ドミナントモーション上で使えるスケール
ドミナントモーションにかっこいいメロディを付けたい、素敵なピアノやギターのソロを入れたいなら、使えるスケールを覚えましょう。
感覚だけでベストなメロディを作れることもありますが、スケールを知っておけば安定したクオリティでメロディを付けられるようになりますよ。
次はドミナントモーション上で使えるスケールを、コード別に紹介します。
Ⅰコード上で使えるスケール
ペンタトニックスケール
シンプルなメロディを付けたい、ロックな雰囲気を出したいなら、5音で構成されたスケール・ペンタトニックスケールがおすすめです。
ⅠコードがCメジャーコードならCメジャーペンタトニック、CマイナーならCマイナーペンタトニックを当てるだけで、簡単にメロディを付けられますよ。
「アボイド」という長く伸ばせない音もないので、作曲初心者でも安心して使えるスケールです。
メジャー・マイナースケール
ペンタトニックではシンプルすぎると感じるなら、メジャースケールやマイナースケールなどの7音で構成されたスケールを使ってみましょう。
当てはめ方はペンタトニックと同じで、CメジャーコードならCメジャースケール、CマイナーならCマイナーを当てはめるだけです。
ノンダイアトニックなⅤ7を使ってⅠ以外に解決する場合のみ注意が必要で、Ⅳmaj7に解決するならリディアン、Ⅱm7ならドリアンなどのモードスケールを弾く必要があります。
Ⅴ7上で使えるスケール
ミクソリディアンスケール
ミクソリディアンスケールは、Ⅴ7上でよく使われる、定番のモードスケールです。
メジャースケールを第5音から始めたスケールで、Cミクソリディアンスケールなら音の並びは「C・D・E・F・G・A・B♭」となります。
♭7thを含んでいる以外はメジャースケールと同じ構造になっているので、簡単にメロディを作れるのが特徴。
使用頻度が高いスケールなので、基本スケールを覚えた人はぜひ練習してみてくださいね。
オルタードテンションを含むドミナント系スケール
ドミナントモーションのⅤ7でジャズっぽさや不安定な雰囲気を強調したいなら、オルタードテンションを含んだドミナント系のスケールがおすすめです。
Ⅰメジャーコードに解決するなら、オルタードスケールやコンビネーションオブディミニッシュが定番。
Ⅰマイナーなら、ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウや、オルタードスケールが使えます。
中上級者向けのスケールですが、ジャジーで不協和音的なサウンドが楽しめるスケールです。
ドミナントモーションを応用したコードテクニック
モダンでおしゃれな曲を作りたい、音楽理論が好きで色々学びたい人は、ドミナントモーションを応用したコードテクニックを覚えてみましょう。
コードを置き換えたり、入れ替えたりするだけとシンプルなものが多いですが、使いこなせればプロレベルのコード進行も作れるようになりますよ。
最後に、ドミナントモーションを応用したコードテクニックを譜例と共に紹介します。
ツーファイブ
ドミナントモーションを使った定番のコードテクニックがツーファイブです。
ダイアトニックの2番目のコードから、5番目のⅤ7に向かう進行の名前で「Ⅱm7→Ⅴ7」をメジャーツーファイブ「Ⅱm7(♭5)→Ⅴ7」をマイナーツーファイブと呼びます。
Ⅰコードに解決している場合は「ツーファイブワン」に名前が変わりますよ。
Ⅴ7の前に解決先の1音上のコードを挿入するだけとシンプルですが、手軽にジャズっぽさや自然な印象を演出できるテクニックです。
裏コード
Ⅴ7からⅠコードへの流れがシンプルすぎると感じた場合には、裏コード(トライトーンサブスティテューション)を使ってみましょう。
裏コードとは、Ⅴ7を同じトライトーンを持った7thコードと置き換えるテクニックで、Ⅴ7の5thを半音下げた音をルートに持つ7thコード(♭Ⅱ7など)が良く使われます。
手軽に「♭Ⅱ7→Ⅰmaj7」のような、ベースが半音下降する進行が作れるので、アレンジにこだわりたいときに活躍しますよ。
サウンドのクセは強めなので、おしゃれな音楽が好きな人向けのテクニックです。
セカンダリードミナント
セカンダリードミナントは、進行内のコードをⅠと見て、対応するⅤ7を挿入するテクニックです。
手軽にドミナントモーションが作れるのはもちろん、ダイアトニック外のコードも簡単に追加できるのが特徴。
主にアクセントを付けたいときに使うのが定番で、違うキーに転調したいときにも活躍しますよ。
Ⅴ7コードを挿入したり、既存のコードを置き換えたりするだけで作曲の幅を広げてくれる便利なテクニックです。
偽終止
リスナーの期待を良い意味で裏切る、独特なサウンドを演出できるテクニックが偽終止です。
Ⅴ7を使うのはドミナントモーションと同じですが、解決先を構成音が似たコードと置き換え、Ⅰコードのときとは違った雰囲気を演出しています。
Ⅰメジャーコードの場合は、ⅥmやⅢmコードと置き換えるのが定番で、マイナーならⅠm7と似た構造の♭Ⅵmaj7がよく使われますよ。
解決感は弱いのため、進行にアクセントを付けたいときに使うのがおすすめです。
ドミナントモーションはコード進行の基本!仕組みや音の動きとセットで覚えよう
ドミナントモーションは、コード進行作りの基本となる音楽理論です。
もちろん、音楽制作や演奏には他の基本理論も必要になりますが、Ⅴ7からⅠへの進行の雰囲気を掴んでいるだけでも音楽を楽しめるようになりますよ。
まずは、ドミナントモーションを弾いてみて響きを感じてみましょう。
あわせて仕組みや音の動きを覚えると、演奏や作曲に応用しやすくなるので、演奏に慣れたら意識してみてくださいね。
この記事のまとめ!
- ドミナントモーションとは、不安定から安定の流れを作り出すⅤ7→Ⅰ進行のこと
- タイミングやカデンツを意識するだけでも、ドミナントモーションを効果的に使える
- ドミナントモーションで使えるスケールを覚えれば、手軽に調和するメロディが作れる
- 応用テクニックもたくさんあるので、基本をマスターした人は挑戦してみよう