難しそうな雰囲気が漂う、独特な表記の分数コード。
練習中に見かけたけれど、どんなコードなのか、どう弾けば良いのか分からないという人も多いのでは?
この記事のもくじ
分数コード(オンコード)とは
分数コードとは、アレンジや作曲でよく使われるコードです。
オンコードやスラッシュコードとも呼ばれるもので、ポップスやロックだけでなく現代音楽やジャズ、R&Bなど色々なジャンルで使われていますよ。
はじめに、オンコードの構造や特徴、表記方法を紹介するので、どんな和音か知りたい人はぜひ参考にしてみてくださいね。
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ルート以外の音を最低音にしたコード
分数コードとは、ルート以外の音を最低音(ベース音)にしたコードです。
テンションコードのようにルートより高い音を加えるのではなく、音を並び替える・低音を追加するというところが特徴。
「ルート・3rd・5th」の基本構成はそのままで、変化しているのはあくまでベース音のみとなっています。
仕組み自体はシンプルですがハーモニーに深みを与えたり、曲の雰囲気を変えたりできたりと、とても奥が深いコードです。
元のコードとは一味違った響きを持つ
元となる基本のコードとは一味違った響きを持っているのも、分数コードの特徴です。
構成音は基本的に変わりませんが、積まれている音と最低音との距離感が変わるので、響きも変化しますよ。
E音をベースにしたC/EならEmとCの中間のようなサウンド、C/Bなら安定感の中に不思議な響きを感じさせるものに変わります。
C/FやAm/Dといった低音を追加するパターンなら、曖昧で幻想的な響きに。
構成音を大きく変えずにサウンドを変えられるのが、分数コードの魅力です。
3種類の表記方法がある
分数コードには、「/」を使うパターンと「on」を使うもの、分数のように記載するパターンの合計3種類の記載方法があります。
「/」を使うパターンが定番で、日本のコードサイトや楽譜では「on」表記も良く使われています。
分数で表記するパターンは、特定のコードに別のコードを乗せるアッパーストラクチャートライアドやポリコードと似た表記なので、使用頻度は少なめです。
どの表記でも読み方は同じで「(分子)オン(分母)」と読みます。
3種全ての読み方を覚えたほうが良いですが、書く場合は「/」か「on」のどちらかに統一したほうが分かりやすいでしょう。
分数コード(オンコード)の種類
分数コードはベース音と元のコードの関係や、構造などでいくつかの種類に分けられています。
どれも表記は全く一緒ですが、サウンドや機能が大きく異なっていますよ。
全てを理解しなくても演奏はできますが、作曲で使いこなしたいなら各種類の特徴を覚えておきましょう。
次は、分数コードの種類を、サウンドや構造と共に紹介します。
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転回形
分数コードの中でも、特に使用頻度が高いのが「転回形」のパターンです。
転回形とはコードトーンのいずれかをベース音にし、残りの音を上に積んだもの。
コードの機能や構成音はそのままで、響きのみが元のコードと違ったものになっています。
基本の種類は、3rdベースにした第一転回形、5thベースの第二転回形の2種。
セブンスコード(四和音)の場合は、7thベースの第三転回形が加わります。
複雑に感じるかもしれませんが、音を並べ替えるだけとシンプルな技法なので、初心者でも気軽に使えますよ。
テンションコードの省略形
分数コードは、テンションコードを省略したいときにも使われます。
「Cmaj9(構成:C・E・G・B・D)」といったコードも、オンコードに変換すれば「Em7/C」とスッキリとした表記になります。
作り方も簡単で、根音以外の音に注目して、似た三和音や四和音がないか探すだけです。
テンションコードをサッと弾ける人には不要かもしれませんが、コード譜や譜面を作るとき、ベースのアレンジをするときに便利なので、ぜひ覚えておきましょう。
特殊な響きを演出するタイプ
おしゃれなポップスや現代音楽などでよく使われている分数コードが、特殊な響きを演出する「ハイブリッドコード」です。
Am7/DやF/Gのようにコードトーン以外がベース音になったタイプで、ベース音から考えて3rd・♭3rdの距離にある音が存在しない構造をさします。
明暗を決める3rdが無いので、メジャーでもマイナーでもない曖昧で浮遊感のあるサウンドを持つのが特徴。
上級者向けの音楽理論なので使いこなすのは難しいですが、分数コードの基本をマスターした人はぜひ挑戦してみてくださいね。
分数コード(オンコード)の読み方
分数コードの特徴や種類を把握したら、次は読みとり方を覚えていきましょう。
ちなみに、表記でも説明したとおりコードはすべて「【分子】オン【分母】」で読むのが基本です。
読み取るとなると普通のコードよりも少し難しいですが、慣れれば表記を見ただけでサッと弾けるようになりますよ。
次は、分数コードの読み方や、演奏するときのコツについてを紹介するので、ぜひ練習の参考にしてみてくださいね。
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分数表記の場合
「/」や「-」を使った分数表記の読み方がこちらです。
分母に当たる部分がベース音、分子部分が元のコード名を表しています。
Cmaj7やAm7などのセブンスコード、Am9やG7(♭9)などのテンションコードの場合も同様です。
右もしくは下にあるのがベース音で、先に目に入る・上にあるほうがコード名と覚えておくと簡単に覚えられるでしょう。
on表記の場合
「on」で表記されている分数コードの読み方は「/」表記のパターンと同じです。
右側に記載されているのがベース音で、左側がベース音を指定するアルファベットが記載されています。例の場合は「ミ(E)+ドミソ(C)」です。
分数表記よりも文字数が多いため読み間違えやすくなっていますが、左から「Eの(no)上にC」と読めば簡単なので、ぜひ試してみてくださいね。
ベースがいる編成ならコード部分のみを読んでも良い
最低音をしっかりと出してくれるベースがいる編成なら、コード部分のみを読んでも問題ありません。
C/Gを例に考えると、ギターやピアノがCコードだけを読んで音を出しても、ベースがG音を出していれば全体のハーモニーはC/Gと表記通りのサウンドになります。
ソロ演奏や弾き語りでは響きが変わってしまうので使いにくいですが、シンプルに演奏したい、アレンジを工夫したいときに便利な裏ワザです。
分数コード(オンコード)のギターでの押さえ方
ピアノは左手を変えるだけで分数コードが作れますが、ギターの場合は普段と違ったフォームで押さえる必要があります。
そのため、ギターで弾くのは難しいと感じてしまう人も多いです。
もちろん、難しいフォームもありますが、基本コードをアレンジした簡単な押さえ方もありますよ。
次は、分数コードの押さえ方を、簡単なフォームから応用的な押さえ方まで幅広く紹介します。
6弦ベースのフォーム
6弦ベースのフォームは弾き語りやソロ演奏などの、低音をしっかり出したいシーンに便利なフォームです。
定番フォームはこちらで、オープンDにF#をプラスしたD/F#、バレーコードをもとにしたC/G、4弦ルートのパワーコードから派生したF/Aの3つは、特によく使います。
下の3つはドロップボイシングという、音の積み方を変える手法から派生したもので、セブンスコードの響きを変えたいときに役立ちますよ。
低音から高音までバランス良く響くフォームなので、分数コードの響きを感じてみたい人はぜひ弾いてみてくださいね。
5弦ベースのフォーム
5弦にベース音を配置した分数コードのフォームがこちらです。
6弦ベースのフォームと同様に、音域のバランスが良いので弾き語りにも使えます。
C/EはオープンGの音の並びを応用したもの、G/BとG/Dはバレーコードをもとにしたフォーム。
下の3つはドロップボイシングを活用した、少し難易度が高いフォームです。
上段のフォームだけでも幅広く対応できるので、分数コードがはじめての人はこちらから練習してみましょう。
4弦ベースのフォーム
アルペジオやソロギターを演奏するときに活躍するのが、4弦にベース音を配置した分数コードです。
定番の押さえ方がこちらで、どれも全体の音域が高めな繊細なサウンドを持っています。
特に、Dmaj7/F#のフォームはルートと7thが半音でぶつかる構造なので、より繊細で幻想的なサウンドが出せますよ。
弾き語りでは使いにくいですが、知っておくと演奏の幅が広がるフォームなので、5・6弦の分数コードをマスターした人はぜひ挑戦してみてくださいね。
分数コード(オンコード)の使い方
分数コードについてはある程度分かったけれど、使い方が分からないのでアレンジや作曲に生かせないという人も多いはず。
定番コードと比べると少し特殊な使い方をしますが、いくつかのポイントや定番手法を覚えれば、簡単に使えるようになりますよ。
押さえ方の次は、アレンジや作曲にそのまま使える、分数コードの使い方を紹介します。
コードの響きを少しだけ変えたいときに使う
分数コードの1つ・転回形は、コードの雰囲気や機能を保ちつつ、響き方を少しだけ変えたい場面に便利です。
転回形は音の順番を入れ替えただけの構造なので、サウンド全体が大きく変化することはありません。
構成音や機能をそのまま維持しながら、サウンドに微妙な変化を付けられるので、多くのアレンジャーや作曲家が好んで使っています。
また、代理コードやテンションなどの難しい知識が不要なのもポイント。
とても使いやすい手法なので、作曲初心者にもおすすめです。
ベースが上昇・下降する流れを作りたいときに使う
ベースが上昇・下降する流れを作りたいときに使うのも、分数コードの定番の使い方です。
こちらは定番のカノン進行をアレンジしたもので、3rdベースのG/BとEm/G、F/A、5thベースのC/Gを挿入し、ベース音がスケールに沿って動くラインを作り出しています。
最低音が1音ずつ動いているので、サウンドも滑らかになっているのが特徴。
後半の上昇ラインでは、盛り上がりや加速感を演出していますよ。
ポップスやアニソンなどでは定番の使い方なので、キャッチーな曲が好きな人はぜひ試してみてくださいね。
ベース音を固定するアレンジ
分数コードは、ベース音を固定するアレンジ「ベースペダルポイント」を作りたいときにも便利です。
上記の譜面は「C→G→F→C」というシンプルな進行にベースペダルポイントを組み込んだもの。
C音が鳴り続けているので進行感もマイルドになり、落ち着きや統一感が際立ったサウンドに変化していますよ。
ポップスやジャズはもちろん、ハードロックの名曲にも使われる個性的な分数コードの使い方です。
分数コード(オンコード)が効果的に使われている曲
分数コードの基本を覚えたら、効果的に使われている曲を聴いたり、分析したりしながらサウンドのイメージを作り上げていきましょう。
はじめはテンションコードや定番コードとの違いが分からないかもしれません。
しかし、進行を見ながらしっかり聴き込めば、耳だけでもオンコードの響きが分かるようになりますよ。
最後に、分数コードが効果的に使われている曲を、最近のヒット曲からヘヴィメタルの名曲まで幅広く紹介します。
Cry Baby / Official髭男dism
分数コードを効果的に使い、個性的なサウンドを演出している曲がOfficial髭男dismの人気曲「Cry Baby」です。
こちらはサビ部分の進行で、2小節目からオンコードを使った上昇ラインが登場します。
最低音が「B→C#→D→E♭→F」と上昇しているのが特徴で、転調先のD♭キーのG♭maj7に滑らかに進行していますよ。
「Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅲ」のカノン進行をベースにしつつも、ツーファイブやⅢ7の挿入、分数コードの使用によりモダンな雰囲気に仕上げられた楽曲です。
James / Pat Metheny Group
「James」は有名ジャズ/フュージョンギタリスト・Pat Methenyの名曲です。
メロディアスな曲調の聴きやすい曲ですが、分数コードを多用し唯一無二のサウンドを演出しています。
注目はBメロ部分の進行。
ベースラインの上昇・下降を上手く使い、滑らかな動きと盛り上がりの両方をコントロールしています。
ノンダイアトニックコードもいくつか使われていますが、ベース音やメロディのアレンジにより難しさを全く感じさせません。
ジャズに馴染みがない人でも聴きやすい曲調なので、気になる人はぜひ音源をチェックしてみてくださいね。
Shape of My Heart / Sting
Stingの「Shape of My Heart」は、ジャン・レノ主演の名作映画「レオン」の主題歌です。
イントロからAメロにかけてのアルペジオに分数コードが使われている楽曲で、3rdベースの転回形を上手く使った下降ラインを楽しめます。
該当部分のコード進行はこちらで、F#mのルート音からベースが1音ずつ下り、ドミナントのC#7を経てF#がルートのコードに戻る構造になっています。
シンプルな進行ですが、分数コードを上手く使い切なさを演出している楽曲です。
Crazy Train / Ozzy Osbourne
オジー・オズボーンの独特な歌声と、ランディ・ローズのギターが冴え渡るヘヴィメタルの名曲が「Crazy Train」です。
この楽曲のイントロ~Aメロ部分には、分数コードを使ったペダルポイントが登場します。
「A→E/A→D/A」とA音を鳴らし続ける構造で、ペダルポイントらしい安定感のあるサウンドになっているのが特徴。
さらに、バンドのキレのある演奏が加わり、メタルらしいスピード感もある仕上がりになっています。
ベースペダルポイントの雰囲気を掴むのにピッタリの楽曲なので、気になる人は聴いてみてくださいね。
分数コードとはベース音が変化しただけのシンプルなコード!響きの違いを意識しながら使ってみよう!
分数コードとは、定番コードのベース音が変化しただけのシンプルなコードです。
弾き方と構造を理解して焦らずに練習を続ければ、初心者でも定番コードと同じ感覚で使えるようになりますよ。
まずは、響きの違いを意識しながら弾いてみるところからはじめてみましょう。
慣れてきたら、好きな曲の楽譜をチェックしたりコピーしたりしながら使い方のイメージを固めて、作曲や演奏の幅を広げてみてくださいね。
この記事のまとめ!
- ルート以外の音をベースにしたものを分数コードと呼ぶ
- 分数コードには転回形とテンションコードの省略形、特殊な響きのコードの3種がある
- ギター初心者は定番フォームに似た、簡単な押さえ方の分数コードから練習するのがおすすめ
- 分数コードはコードの響きを変えたいとき、ベース音をアレンジしたいときに便利
- 使い方を覚えたいなら、実際に使われている曲を参考にするのがおすすめ