先人たちが、音での表現を追求する中で生み出してきたギター奏法。
色々な奏法をマスターして演奏の幅を広げたいけれど、そもそもどんな種類があるのか知らないという人も多いでしょう。
この記事のもくじ
ギター奏法の基本的なテクニックの種類一覧|
これから色々な種類のギター奏法を覚えていきたい人は、まず基本的なテクニック・奏法からチェックしましょう。
基本テクニックは比較的簡単なものが多いので、ギター初心者でも気軽に挑戦できます。
また、応用がきくもの、実用的なものが揃っているので、習得すれば演奏力も高められるでしょう。
はじめに、基本的なギター奏法・テクニックを、弾き方やコツと共に紹介します。
アルペジオ奏法
「アルペジオ」は、コードの構成音を1音ずつ弾くギター奏法です。
分散和音とも呼ばれるもので、コードを押さえたあとに、それぞれの音を重ねるように弾いていきます。
1度に全ての音を鳴らす場合よりも、広がりのあるサウンドを演出できるのが特徴。
メロディアスな雰囲気とコード感を兼ね備えているため、ギターソロや歌の伴奏、リフなど幅広いシーンで使われています。
演奏のポイントは「コードをしっかりと押さえる」「1音1音をリズムに当てはめながら正確に弾く」の2点。
慣れるまでは少し難しいですが、手軽にギターらしい音が出せる奏法なので、ぜひマスターしておきましょう。
オクターブ奏法
特定の音と、その1オクターブ上の音を同時に弾くのが「オクターブ奏法」です。
5弦3フレットの「C(ド)」と、3弦5フレットの「C」のように、同じ音名で高さのみが異なる音を同時に弾くことで、厚みのある音を出すテクニック。
ジャズギタリストが使用し有名になった奏法ですが、歪ませた音とも相性が良いため、ポップスやロックでもよく使われますよ。
弾き方は簡単で人差し指と薬指、もしくは人差し指と小指を使って2箇所を押さえるだけ。
ただし、余計な音が鳴るとかっこ悪いサウンドになるので、人差し指の側面や先端、中指の腹などを使ってしっかりとミュート(消音)するようにしましょう。
タッピング奏法
テクニカルなプレイが好きな人にとくにおすすめのギター奏法が「タッピング」です。
「ライトハンド奏法」とも呼ばれるテクで、左手での押弦に加え、ピックを持つほうの手の人差し指、もしくは中指を使って弦を押さえます。
難易度は高めですが、演奏に取り入れるだけでトリッキーなサウンドが演出できるため、個性的なサウンドを求めるギタリストから人気です。
主に使われるのは、ハードロックやヘヴィメタルのギターソロ。
また、Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」、[Alexandros]の「Rock The World」といった邦ロック曲でも使われています。
カッティング奏法
「カッティング」は、弦を押さえている左手を使って音を短く切るテクと、弦に指を軽く触れさせた状態で弾き打楽器的な音を出す「ブラッシング」を組み合わせた奏法です。
ファンクやR&Bのようなリズミカルなジャンルはもちろん、ポップスやロックといったメジャーなジャンルでもよく使われています。
基本的な演奏方法は、コードストロークと同じです。
右手のみ若干異なり、こちらは手首のスナップを使う、もしくはうちわを仰ぐイメージでスピーディーに動かします。
音符の長さは普段より短め。
ブラッシングに関しては、コードフォームを保ったまま軽く指を浮かせて、音が出ないようにするのが基本です。
ハーモニクス奏法
特定の音を弾いたときに、目立つ音「実音」の裏でほのかに鳴っている「ハーモニクス(倍音)」。
このハーモニクスだけを狙って出す奏法が「ハーモニクス奏法」です。
その他の倍音を含まない「純音」のような美しい音が出せる奏法で、主に効果音的なサウンドが欲しいとき、個性的な響きが欲しいときに使われます。
主な種類は以下の3つ。
- ナチュラルハーモニクス
- ピッキングハーモニクス
- タッピングハーモニクス
ハーモニクスポイントと呼ばれる場所(5フレットや12フレットの真上など)に軽く触れ、ハーモニクスを出すのが「ナチュラルハーモニクス」。
ピッキングと同時に、ピックを持っている手の親指の端を弦に軽く触れさせ、ハーモニクスを出すのが「ピッキングハーモニクス」です。
少し特殊なのが「タッピングハーモニクス」で、こちらはコードや単音を弾いたあとに、そのポジションの7フレット上や12フレット上などを右手で軽く叩きハーモニクスを出します。
ギター奏法の種類一覧|左手
フレーズをよりかっこよく聴かせたい、表情豊かなフレーズを弾きたいなら、左手と関連が深いギター奏法を覚えるのがおすすめです。
左手関連の奏法をマスターするだけでも表現力が上がり、フレーズもよりかっこよく聴こえますよ。
対応できるフレーズや、サウンドの幅が広がるのもポイント。
次は、左手に関連するギター奏法の種類一覧を紹介します。
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スライド
単純なフレーズをよりかっこよくしたい、滑らかなサウンドを出したいときに活躍するギター奏法が「スライド」です。
こちらは、特定のフレットを押さえた状態でピッキングし、その後指を滑らせながら次のフレットに移動させるテクニック。
最初の音と次の音が滑らかにつながるので、フレーズも滑らかな雰囲気になります。
演奏のポイントはたったの2点です。
- 指がスムーズに移動できるほどの力加減で押さえる
- リズムに当てはめて弾く
グリッサンド(グリス)
「グリッサンド(グリス)」はスライドと同様に、押弦している指を滑らせるように移動させるギター奏法です。
スライドとの違いは始点や終点、もしくはその両方が決まっていないこと。
こちらは主に、指を滑らせたときに出る個性的な音を出すために使用されます。
手を大きく上下に滑らせて「ブーン」という音を出す、普通に弾いたあとにグリッサンドをして、独特な余韻を生み出すなど、色々なパターンがあるのも特徴の1つ。
着地地点(終点)に向かってグリッサンドして、弦楽器らしいニュアンスを演出するという使い方もありますよ。
使いこなせると、より味のある演奏ができるようになるので、ぜひマスターしましょう。
チョーキング
「チョーキング」は、弦を上方向、または下方向に引っ張って音程を上げるギター奏法です。
ポップスやブルース、ロックの必須テクで、ギターソロはもちろん伴奏の際にも使用されます。
よく使われるのはこちらの3種類です。
- 音程を1音上げる「1音チョーキング」
- 半音上げる「半音チョーキング」
- 半音よりも若干低めに音程を上げる「クォーターチョーキング」
普通の押弦と動きが違うため少し難しいですが、人差し指の側面と親指でネックを挟み、ドアノブをひねるように手を動かせばスムーズに音程を上げられますよ。
あわせて、一気に目標とする音程まで上げるイメージを持つと、かっこよく弾けるでしょう。
ビブラート
音程を一定の幅で変化させて、音に揺れを生み出すギター奏法が「ビブラート」です。
音の表情をより豊かにするためのテクニックで、ヴァイオリンやヴィオラなどの弦楽器や歌でもよく使われています。
アコースティックギター・エレキギターでの弾き方は、普通に音を弾いたあとに、わずかなチョーキングと音程を戻す動作を繰り返すのが基本。
コードにビブラートをかけるとき、クラシックギターを演奏するときには、指を水平方向(身体から見て横方向)に揺らしてビブラートを演出します。
アーム付きのエレキギターを使っている場合は、アームを使って音を揺らしてもOKです。
プリング
「プリング(プリング・オフ)」は、今弾いている音と同弦の特定のフレットの音、または開放弦の音に滑らかにつなげたいシーンで使われるギター奏法です。
弾き方はシンプルで、押弦した指を弦に軽く引っ掛けながら離すだけ。
特定のフレットの音につなげる場合は、事前にそのフレットを押さえた上で、指を引っ掛けながら離します。
ギターソロはもちろん、ちょっとした単音フレーズやコードに装飾音を足す際にも使われる使用頻度の高いテクニックなので、ぜひマスターしておきましょう。
ハンマリング
フレットを軽く叩くように押さえることで、ピックを使わずに音を出すギター奏法が「ハンマリング(ハンマリング・オン)」です。
プリングの押弦版のテクで、今弾いている音から同弦上の違う音につなげるとき、開放弦から同弦上の音につなげるときに使われます。
スライドやプリングと同様に、アタック感の弱い滑らかなサウンドが演出できるのも特徴の1つ。
とくにフレーズを滑らかに聴かせたいとき、流れるような雰囲気を出したいときによく使われる、定番のギター奏法です。
トリル
「トリル」は、プリングとハンマリングの2種類のテクニックを、素早く繰り返すギター奏法です。
音程が細かく切り替わる、効果音的なサウンドが得られるのが特徴。
聴覚的なインパクトも抜群なので、目立つ音が欲しい場面でよく使用されます。
使用頻度に関してはプリングやハンマリングよりも低めですが、サウンドの幅を広げてくれるテクでもあるので、こちらもぜひ習得しておきましょう。
ギター奏法の種類一覧|右手
左手の次は、右手関連のギター奏法の種類をチェックしてきましょう。
右手で行うギターテクニックには、サウンドを左右するものがたくさんあります。
しっかりとマスターすれば、良質なサウンドが出せるだけでなく、リズムも安定するので演奏がよりかっこよくなるはず。
ここからは、ぜひマスターしておきたいギター奏法の種類を5つ紹介します。
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ピッキング
右手関連のギター奏法の中でも、とくに重要なものが「ピッキング」です。
ピッキングとは、ピックを使って弦を弾くテクで、サウンドの質や演奏のグルーヴ感に大きく影響します。
主な種類は
- 上から下にピックを振る「ダウンピッキング」
- 下から上に振る「アップピッキング」
- この2つを繰り返す「オルタネイトピッキング」
の3つ。
この3つができるだけでも多くの曲が演奏できるようになるので、しっかりと練習してマスターしておきましょう。
フィンガー・ピッキング
「フィンガー・ピッキング(指弾き)」は、その名の通り指や爪を使って弦を弾くギター奏法です。
柔らかな指・爪を使うため、自然で柔らかいサウンドが出せるのが特徴。
加えて、細かなニュアンスも出しやすいため、フォークを演奏するアコギ弾きやクラシックギタリスト、ジャズギタリストが好んで使用していますよ。
代表的な種類は以下の3つです。
- 人差し指と中指を使う「ツーフィンガーピッキング」
- 親指〜中指を使う「スリフィンガーピッキング」
- 親指~薬指までを使う「フォーフィンガーピッキング」
ストローク
ピックや指を使って、複数の弦を弾くギター奏法が「ストローク」です。
アコギ・エレキの基本奏法の1つで、ポップスやロックはもちろん、その他のギターが使われるジャンルでもよく使われています。
基本の種類は上から下に手を振る「ダウン」、下から上に振る「アップ」、両方を繰り替えす「オルタネイト」の3つ。
最初のうちはぎこちない動きになりがちですが、濡れた手の水を切る動作をイメージしながら弾くとスムーズな動きになるので、ぜひ試してみてくださいね。
ブリッジミュート
「ブリッジミュート」は、エレキギターを弾くならマスターしておきたい、必須テクニックの1つです。
こちらは右手の手刀部分をブリッジの上より若干ヘッド側に置き、弦の振動をわずかに抑える奏法で、主にリフや伴奏でよく使用されます。
歪ませた状態では「ズンズン」「コンコン」とした音、クリーンでは伸びの少ないパーカッシブな音と、音質によって響きが変わるのも特徴の1つ。
弾き方自体はシンプルですが、手刀の位置が悪いと上手くミュートできない、音痴に聞こえる場合があるため、手の置き方や位置には常に気を配るようにしましょう。
ストリングスヒット
親指で低音弦を叩き「チャッ」という音を出すギター奏法が「ストリングスヒット(サムヒット)」です。
演奏をよりグルーヴィーにしてくれるテクニックで、主にアコースティックギターやクラシックギターを演奏する際に使われます。
弾き方は、親指の側面を4弦〜6弦あたりに軽く当てるのが基本。
叩くタイミングに関してはとくに決まりはありませんが、スネアドラムのように2拍目と4拍目に鳴らしたほうがグルーヴ感を演出しやすいでしょう。
ギター奏法の種類一覧|アコギ
アコギ演奏に役立つギター奏法を、もっと知りたいという人も多いのではないでしょうか?
せっかくなら色々な種類の奏法をマスターして、個性的なサウンドを奏でてみたいものですよね。
そこで最後に、アコギ弾きにおすすめのギター奏法の種類を紹介します。
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スラム奏法
「スラム奏法」は、アコギのボディをパーカッションのように叩くことで、打楽器的な音を演出するギター奏法です。
押尾コータローやMIYAVIが披露していることで有名なテクで、マスターできるとよりグルーヴィーな演奏ができるようになります。
代表的な叩き方は、手のひらでサウンドホールの上周辺を叩き、バスドラム的な音を出す「パームヒット」、指先で指板の終わり部分を叩く「スネア」の2種類。
また、左手で指板を叩きハイハット的な音を出すこともあります。
8ビートの基本パターンは以下の通りです。
- 1拍目:パームヒットと同時に手をパーにしコードを弾く
- 1拍目の裏:指を曲げるように動かしながらコードを弾く
- 2拍目:スネアを叩く
- 2拍目の裏:指板上に置かれた指を引っ掛けるように離しコードを弾く
- 3拍目~4拍目:上記のパターンを繰り返す
難易度は高めですが、グルーヴ感溢れる演奏が好きな人はぜひ挑戦してみてくださいね。
スラップ奏法
アタック感が強い、パーカッシブなサウンドを生み出してくれるギター奏法が「スラップ奏法」です。
もともとはエレキベースのテクニックで、親指で弦を叩く「サムピング」と、人差し指を引っ掛けながら弦を引っ張る「プル」を組み合わせてフレーズを組み立てます。
特殊な弾き方のため慣れるまでは難しいですが
- サムピングの際はスナップを効かせる
- プルはできるだけ浅く引っ掛ける
の2点を意識すれば、キレイな音が出せますよ。
練習に関しては、まずはオクターブ関係にある2音をサムとプルで弾くところからはじめ、慣れてきたら他の音を織り交ぜると良いでしょう。
ナチュラルハーモニクス奏法
「ナチュラルハーモニクス奏法」は、ハーモニクスならではのクリアで柔らかなサウンドを演出してくれるギター奏法です。
ハーモニクス奏法の種類の1つで、この奏法の中では一番手軽に実践できますよ。
弾き方は、まず弦の上にあるハーモニクスポイント(5・7・12フレットの真上など)に、指を軽く添えるイメージで触れます。
次に普通にピッキングし、ポーンというハーモニクス音が出た状態で指を離せばOKです。
ネイルアタック
チャリーンという、アタック感の強めなサウンドを演出してくれるギター奏法が「ネイルアタック」です。
アタック感が強い点はスラップと似ていますが、こちらは中指と薬指の爪の先端を、弦に勢い良く当てて音を出すテクニック。
コードにも対応できるので、幅広いシーンで使われていますよ。
演奏のコツは以下の3点。
- デコピンのような動きで指を動かす
- スナップを軽く効かせる
- 高音弦側だけを狙う
難易度は少し高めですが、サウンドの幅を拡げてくれる奏法なので、基本のストロークをマスターした人はぜひ挑戦してみてくださいね。
ギター奏法は種類がたくさんある!いろいろ試して練習しよう
ギター奏法には基本的なものから、特殊なものまでたくさんの種類があります。
出せるサウンドや弾き方、難易度もテクニックによってさまざまです。
全てをマスターする必要はありませんが、自分の好みにマッチしたものを習得し演奏に取り入れれば、個性が際立った素敵な演奏ができるようになりますよ。
まずは、弾きたい楽曲に登場するもの、好きなジャンルでよく使うものを中心に、色々と試してみましょう。
試す中でお気に入りのギター奏法を見つけたらぜひマスターして、演奏の幅を広げてみてくださいね。
この記事のまとめ!
- ギター初心者は、基本的なギターテクニックから覚えるのがおすすめ
- 表現力を強化したいなら、左手に関連するギター奏法を覚えよう
- 右手関連のギター奏法をマスターすれば、より安定したサウンドとリズムで演奏できる
- アコギ演奏の幅を広げたいなら、スラム奏法やネイルアタックといった個性的な音が出せるギター奏法を覚えよう