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【インタビュー】VALSHE、7つの物語を紡ぎ完成した、1年ぶりとなる7th Mini ALBUM「SAGAS」を語る。

VALSHEの1年ぶりとなる7th Mini ALBUM「SAGAS」を3月1日(水)にリリース。聴き手をファンタジックな世界へと誘う、コンセプチュアルな楽曲の数々は如何にして完成したのか。VALSHEが本作についてたっぷりと語っていただいた。

7つの物語が詰まった短編小説のようなアルバム

母親や祖父母の影響で、幼少期から音楽が身近な存在だったと話す、VALSHE。2010年のメジャーデビューから13年、これまで多くの楽曲を生み出してきた。そんなVALSHE の1年ぶりのリリースとなる7th Mini ALBUM『SAGAS』はファンタジックな世界観に重きをおき、コンセプチュアルな1枚に仕上がっている。『SAGAS』=冒険譚という名を冠したこのアルバムを紐解くと、そこには、VALSHEが紡ぎ出した7つの物語があった。今回はこの短編小説のような1枚について話を聞いていこうと思う。


──歌詞や音・映像の両方をとっても、7th Mini ALBUM『SAGAS』はとてもコンセプチュアルな作品という印象を受けました。


VALSHE:もともとデビュー当時からコンセプチュアルな作品を多く発表してきていて。ファンタジックな世界観や楽曲に物語を付帯させるようなことはVALSHEの作品には多いんです。その中で、2020年から2022年の2年間というのは、自分自身について歌っている楽曲をたくさん発表してきた。

それは、デビュー10周年のタイミングであったり、コロナ禍ということもあり、自分の考えや「あなた」に伝えたいことを積極的に作っていたんですが、2023年、新しい1年を迎えるにあたって自分がもう1つ大事にしている軸に足を踏み入れて、久しぶりにファンタジックなコンセプトで楽曲を作りたい。そこで生まれたのが『SAGAS』=冒険譚というタイトルを冠したものでした。


──表題曲である『KARASQADAR』はアラビアンな雰囲気をまとう楽曲で、なおかつメインビジュアルも中東・アラビアンなイメージをベースにしたものになっています。このイメージ、コンセプトはどこから生まれたものなのでしょうか。

VALSHE:今回のアルバムは、ボーナストラックを除いて、全7曲、1つ1つに世界観があり、歌詞の中の主人公は全て異なるんですが、表題曲に関しては、自分自身が好きなジャンルかつ世界観の強いサウンドを求めていました。自分はアラビアンなサウンドに対してそういう認識をしていて、色使いをはじめ、中東系の世界観はとても物語との親和性が高い印象があるんですよね。

だから、「冒険譚」という名前のアルバム1曲目の入り口としてアラビアンなサウンドを置くことで、よりファンタジックな世界観へ誘えるのではと思ったし、自分自身の好きなサウンド感ではあるものの、あまり手を出してこなかったサウンド感というところもあり、今回リード曲に据えるのに良いと思って決めました。


──アラビアンな雰囲気を軸にしつつ、全7曲のサウンドはロックやミドルバラード、そして音数も多く壮大なサウンドなど、かなりバラエティに富んだ作品に仕上がったと思います。この曲の羅列というのはどのように固めていったのですか?

VALSHE:今回の作り方としては、1曲目から7曲目まで全てにストーリーを描くテーマを1つずつ決めて、そのテーマに沿った楽曲を配置していった形なんです。なので、この楽曲のテーマはこれだからこういうサウンド感にしよう、こういうメロディにしよう、この人に頼んでみようというように、決まったテーマを軸にアルバムの全体像と曲順を同時進行で作っていく形でした。


──なるほど。全曲にテーマ、なおかつ「冒険譚」という名を冠していますが、アルバムを通してVALSHEさんが紡ぎたかったストーリーみたいなものは当初から明確にあったんでしょうか。

VALSHE:アルバムを通して聴いた際に、こういう風に思って欲しいなというのは今回に関してはなくて。今回は元々1曲1曲に物語があって、1話完結というものでしたので、どちらかというと1曲聴いて、歌詞を聴き手の皆さんが読んだときにどういう風に感じるのか。例えば、表題曲の『KARASQADAR』は「強欲」をテーマに書いた曲なんですが、この歌詞を読み終えたときに、聴き手をどういう気持ちにさせたいか、どういう風に解釈していただけるのかという。1曲1曲にファンに向けている思いが詰まっているアルバムなのかなと思います。


──短編小説のようなアルバムというか。

VALSHE:そうですね。まさに短編小説、7つの物語が詰まっているアルバムという風に捉えていただけたらいいのかなと思います。

▲【VALSHE】7th mini ALBUM「SAGAS」クロスフェード【OFFICIAL】

テーマを設け言葉を紡ぎ、完成した『SAGAS』

──歌詞に目を移すと、どこか世の中に対するアンチテーゼのような雰囲気を孕んでいたり、主人公の確固たる信念のような強い思いが反映されているものもあったりと、サウンド同様にバラエティに富んでいます。リリックを書き進めていく中でポイントをおかれた部分はありますか?

VALSHE:1曲ごとにテーマを設けているので、それぞれの主人公像というか。例えば、2曲目の『MORAL LICENCING』では「憎悪」をテーマに制作しているんですが、正直、自分自身の中では「憎悪」という感情はあまり感覚がない中で書いているんです。もちろん日常的に人に対して少なからず腹を立てたり、好き嫌いは誰もが抱えていると思うんですが、歌詞の中のような自分の人生をかけてでも許さない、許せない相手がいるってそんなにないことじゃないですか。自分の人生を破綻させてでも「憎悪」を抱く相手なんてもちろん自分にはいないし。

だから「憎悪」を膨らませてしまったこの曲の主人公はどういう行動原理のもとどういう気持ちを抱くのか、自分自身で想像して書いた部分があるんです。『MORAL LICENCING』には強い言葉が並んでいますけど、7曲全てにおいて散りばめられている言葉には、リアリティのある部分もありつつ、聞き手に想像してもらうような言葉選びを意図的にしている部分があったり、今回は特にそういう側面が強く出ているのではないかなと思います。



──確かに『MORAL LICENCING』では〈自分の両手をいま赤く染め上げて 憎しみだけが残っても〉など想像力を駆り立てられる言葉が出てきますよね。でもしっかりと「憎悪」というテーマを言語化できているというか。ちなみにその他の曲のテーマも教えていただけますか?

VALSHE:3曲目の『John Doe』は「マイナスの勇気」、4曲目の『Ash』は「変化・起点」、5曲目の『+one step』が 「プラスの勇気」、6曲目の『街路樹』が「愛好」、7曲目の『calm』が「無欲」をテーマに書いています。


──VALSHEさんは今回のように、テーマや物語を軸に歌詞を書くことが多いんですか?

VALSHE:そうですね。今回は特に7つの物語がある中で1つ1つに登場人物がいて、その人物を動かすテーマで世界観を作ろうと決めて制作に向かったので、ある程度自分の中で完成した物語、世界観というものがありました。ただテーマに引っ張ってもらって歌詞を書いた楽曲もあって。例えば、5曲目の『+one step』という楽曲は「勇気」というテーマに引っ張られて歌詞を作っていて、制作する中でこの主人公はこういうイメージで、こういう場面ではこう発言するだろうという主人公像からどんどん歌詞が広がっていきました。


──その一方で言葉の中にはVALSHEさんの経験から生まれる言葉もあるだろうし。

VALSHE:ありますね。自分自身が理想とするものだったり、相反するものだったり、自分が「そうだな」と思っていることだったり、そういうものが散りばめられていると思います。


──ファンの方が聴いたら、VALSHEさんの新たな一面を感じることができるかもしれないですよね?

VALSHE:そうですね! どこまではVALSHEの考えで、どこまでがそれ以外の感情なのか。そこを明確に1つ1つ話す機会ってそうそうあるものではないと思うので、聴き手の皆さんが想像して、楽しんでいただければいいなと思っています。


ライブを着地点としたトリック

──今回のアルバムを紐解く上で、もう1つテーマになっているのは、回文的な叙述トリックが内包されていること。4thアルバム『PRESENT』ではタイトルがダブルミーニングになっていたりと、以前から言葉遊びのようなギミックを取り入れていますが、こういった遊び心をプラスすることはVALSHEさんにとってどういう考えのもとからなのでしょうか。


VALSHE:全ての楽曲に遊び心という感じではなく過不足なくというイメージではありますが、「こうした方がきっといいよね」と思ったときにはするようにしている感覚ではありますね。


──では、今回の回文的な叙述トリックはどのような考えから?

VALSHE:アルバム全体における仕掛けとして、アルバムを作品として聴いた際に7つの物語がある中で、聴き手の方に楽しんでいただけるような作り方をしたかった。それと並行して、このアルバムを持ってお届けするストーリーライブというところまで観ていただけたときに全く別の物語が見えてくるというか。ライブを観て初めてなぜ回文的な表現をしているのかを分かっていただける仕掛けを作っているんです。

アルバムとしても楽しんでほしいし、アルバムを出せばライブをするよねという風にファンの方たちも期待してくださっていると思うんですよね。だからこそライブに来てくれた人にとって新しい発見であったり、行ってよかったと思えるような仕掛けを作りたかった。コンセプチュアルな部分を大事にしているからこそ、そういうことをやるべきだよねと。


──なるほど。

VALSHE:自分自身、13年目の活動に向かっていく中で、昨年ようやく10周年のアニバーサリーツアーが出来て、これからもう1つVALSHEが面白いことをやっていくとファンの皆さんには思ってほしい。ライブを着地点としたトリックを大きく仕掛けてみたいということを考えたことで回文的な叙述トリックが今回はあります。と名言させていただきました。1つ1つ追いかけていただくと1つ1つちゃんと謎が解けていくというところも期待してもらえる、ライブにいきたいなと思ってもらえる作品を今回は作りたかったんです。


アイディアソースは専門的な辞書から?!

──あと、聴いていて感じたのは、繊細な声色の変化というか。全て、VALSHEさんが歌唱されているのに7曲全て新鮮に聴こえてくるんです。個人的にはそこもVALSHEさんの強みなのかなと思っているんですが、これは意識的に変化させているのでしょうか。

VALSHE:ありがとうございます。嬉しいです。もともといろいろなジャンル感のサウンドを発表していきたいという気持ちに合わせて、今回は特に物語性の強い楽曲が7曲並んでいるので、楽曲ごとの主人公の目線というか気持ちを大切にしながら歌っているので、心情的なマインドセットからそういった聴こえ方になっているのかなと思いますね。


──今回は7人の主人公が存在するわけですもんね。確かに主人公それぞれに異なった感情がある。

VALSHE:そうなんです。3曲目の『John Doe』の主人公と7曲目の『calm』の主人公では絶対的に違いますし、そういう差異を聴いている方も音楽に合わせて楽しんでいただけたら嬉しいなと思う部分ではあります。


──今回はどの曲を1曲目に聴いても色が異なりますもんね。

VALSHE:そうですね。今だとサブスクで単曲で流れたりもしますし、自分の好きな曲から聴き始めてくれて全然良いというアルバムになっていますね。自分でセットリストを変えて聴いていただいてもいいですしね!


──もちろん全てがイチオシ曲だとは思うんですが、1曲選ぶなら、VALSHEさん的イチオシ曲はどの曲になるんでしょうか。

VALSHE:そうですね~。役になりきってすごく楽しかったのは、3曲目の『John Doe』ですかね。分かりやすくキャラクター性が強い楽曲で、ストーリーも世界観もあるので、本当に路地裏の殺人鬼のような気持ちで歌いましたね(笑)。



──『John Doe』って和訳すると「名無しの権兵衛」ということですよね?

VALSHE:そうですそうです! イメージ的にはロンドンの裏町に住んでる、名前すらもその日に決めるような生き方をしている主人公が中心になっている物語というところで。本当に路地裏にいる気持ちというか(笑)。楽曲もブルージーなサウンド感というところで後ろ乗りな気怠げさを意識して非常に楽しくレコーディングしましたね。


──お話を聞いていて気になったんですが、VALSHEさんの制作のアイディアソースってどこから引っ張ってくることが多いんでしょうか。先ほどの「ロンドンの路地裏」のイメージってきっと映画や小説で観たり読んだりしたからこそ出てくるイメージだと思うんですよ。

VALSHE:そうですね。もちろん映画も好きですし、本も好きですし、いわゆる風景集のようなものも好き。あとは、何かに特化した専門書ってあるじゃないですか。〇〇の辞書みたいな。そういう何かの辞書が好きなんですよ! そういうところからインスパイアされたりとか、例えば言葉とかでもこの言葉が美しいなと思ったりとか、こういう色使いがいいなとか、色や言葉から世界観を作ることもありますし、色の辞書とかも好きなんですよ。


──色の辞書って面白いですよね。変わった名前の色がたくさんある。

VALSHE:そうそう!その世界、その国の色使いとかそういうところから影響を受けることもあります。だから『KARASQADAR』のアラビアンなテイストというところも中東文化の配色パターンみたいなものを自分が見たことでどこか印象に残っていて、「この色使い好きだな」というところからデザイン面やさまざまなところできっと活かされていると思うんですよね。今回は特に1曲1曲にそういう物を落とし込めたのですごく楽しい制作になりましたね。


アルバムの核となる「冒険譚」というフレーズ

──UtaTenは歌詞を扱うサイトなのですが、『SAGAS』の楽曲の中で特にお気に入りのフレーズはありますか?


VALSHE:難しいですね~。でも4曲目の『Ash』の最後、〈自分の手で切り拓く物語の中で最悪死んだって/見せ場のある冒険譚だ〉というところが、このアルバムの核となる大事なフレーズなのかなと思います。



──確かにここはキーとなるフレーズですよね。

VALSHE:1曲1曲に物語があって、それを『SAGAS』というアルバムとして発表している中で、それぞれの主人公はそれぞれの結末を辿るけれど、それが良いものであっても悪いものであっても、それぞれに自分自身の意思があってクライマックスがあって、それが1つ冒険譚として音楽になっているような意味合いとして大事な言葉だなと思いました。


──ちなみに歌っていていちばん気持ちのいいフレーズはありますか?

VALSHE:表題曲の『KARASQADAR』のサビですね! ラストの部分が歌っていて気持ちいいと思いますね。アラビアンな雰囲気がより出ている部分なので、歌っていて楽しい部分ですね!



作品に合わせたステージメイクを心がける

──今回のアルバムはライブを着地点としたトリックを仕掛けたとお話されていましたが、VALSHEさんにとってライブはどんな存在なのでしょうか。ようやくコロナという大きな壁から脱することが出来そうな雰囲気もありますが。

VALSHE:そうですね。そのとき発表するアルバムによってライブがどういう立ち位置であってほしいかということが結構異なるんですよね。例えば、ロックに振り切った音楽性というところを楽しんでほしいアルバムをリリースして向かうライブってお客さまとの温度感であったりとか、生でのサウンド感を楽しんでもらうことを追求したいし、自分自身もそれを楽しみたいという風に臨むんですけど。

今回のようなコンセプチュアルなアルバムを持って向かっていくライブっていかにライブでその世界観を広げて、リアリティを持ってお客さまに体感していただくというところをどのくらいライブで表現できるかということがやる意味だと思っていて。そこで生歌を聴いてもらうってことはもちろん楽しみにしていただきたい要素ではあるんですが、それと同じくらい、もしくはそれ以上にそこでしか得られない世界観、色使いや照明、身体で浴びる音楽というところでこの物語をどう身体に落とし込んでもらうのかというところが1つ大きな命題だなと感じているので、今回のライブはそういう部分に注力したステージメイクになるんだろうなと思いますね。


──どんなステージメイクになるかすごく楽しみですね。

VALSHE:楽しみですね。過去を振り返っても本編でMCが0というようなものがあったり、逆にお客さまとコミュニケーションをたくさん取ってというようなツアーがあったりとか。その時々で作品に合わせてライブに持っていくにふさわしい作り方ができたらいいなと思っていますね。


──それでは最後に今後の展望などがあれば教えてください。

VALSHE:2023年、今は2月ですが、発表されている予定は4月までですかね、本当に現段階で1年分くらいなんじゃないかというくらい、いろんなものを詰め込んだ活動をさせていただいているので、1つ1つ大事にしながら春までしっかりやりきっていきたいなというところがまず1つ。

それと同時に、今後1年というところで明確にこれを作ろうというものは決めていなくて。ただ直近のコラボレーション(VALSHE×今夜、あの街から)を経て、今回こういったコンセプチュアルなアルバムを作ったことで、「こういうこともできるんだな」という気付きがあったりしました。いつもそうですが、今作っているものからちゃんと自分自身も学んで、そこで得たものを次に繋げていくということを大事にしたいなと思うので、そういう部分からまた新しい作品を考えていきたいなと思っていますね。


──このコンセプチュアルなアルバムを経て、どんなものが生まれるのか楽しみですね!

VALSHE:そうですね。正直、今本当にこのアルバムのことで100%のエネルギーを使っている中で次というところに関しては考えていないんですが、でも絶対に何か出てくるので。どんなものが出てくるか、自分と一緒に皆さんにも楽しんでいただきたいなと思っています。



TEXT 笹谷淳介
PHOTO Kei Sakuhara

Official Site YouTube Channel 010 年 9 月にコンセプトミニアルバム「storyteller」でメジャーデビュー。 少年のような中性的なハスキーボイスを持つデジタルロックシンガー。 主にアニメファン層やネットユーザーを中心に人気を獲得し現在に至る。 デビューから2013年までは、CD ジャケ···

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