歌が上手くなりたくてボイストレーニングをしようと思っても、なにから練習して良いのか分からないという人は多いのではないでしょうか。
そんな人には、ボイスレッスンに通わなくても自宅で簡単にできるボイトレの基礎練習法「リップロール」がおすすめです。
この記事でわかること
リップロールとは
リップロールとは口を閉じた状態で息を吐き、唇(リップ)をプルプルと震わせる(ロール)発声方法です。
ボイストレーニングの基礎練習のひとつで、プロの歌手も本番前のウォーミングアップの一環として行っています。
小さいころに発声練習とは知らずにふざけてやったことがあるという人もいるのではないでしょうか。
リップロールの効果
リップロールはボイストレーニングの基礎として、プロから初心者までさまざまな人におすすめの発声練習です。
リップロールをすることによって発声の基本が身につくのはもちろん、リラックスできたり、音程のコントロールができたりとメリットはたくさんあります。
まずは、リップロールの効果について見ていきましょう。
表情筋のリラックス
リップロールをすることで、表情筋がほぐれてリラックスできます。
歌う時に無駄な力が入っていては良い発声はできません。
そもそもリップロールは唇や周りの筋肉、喉がリラックスした状態でないと上手にできないので、歌う前のウォーミングアップには最適なのです。
スポーツ選手が運動前にストレッチをするのと同じだと考えればわかりやすいでしょう。
音程のコントロール
リップロールができるようになれば、自然と音程が正しく取れるようになります。
リップロールでは唇の形が一定であるため、口の形で音程の高低を調節できません。
そのため、リップロールで一定の音程をキープするには、声帯のみで音程をコントロールする必要があります。
すると、結果的にリップロールの練習が音程をコントロールすることにつながるのです。
発声の基本の習得
リップロールをすると、発声の基本である腹式呼吸を習得できます。
リップロールをするには、喉を開き、吐く息を常に一定の量に調節しなければいけません。
そのためには、横隔膜を上手く使って腹式呼吸を行う必要があるのです。
リップロールを安定して長く出せるようになったら、横隔膜を上手にコントロールできるようになった証拠ですよ。
地声・裏声のコントロール
リップロールは、地声と裏声(ファルセット)をなめらかに繋ぐ練習にもなります。
リップロールをしている時は口が閉じているので、あまり声量が出ません。
そのままだと、高音になればなるほど声が裏返りやすくなるので、裏声と地声を上手くコントロールできないと綺麗に声が出せないでしょう。
リップロールで裏声と地声を交互に出す練習を繰り返すうちに、裏声へスムーズに切り替えられるようになるのです。
リップロールの練習方法
リップロールは、小さいころにふざけてやっていた人もいると思いますが「発声練習」としてきちんとやったことがない人は多いでしょう。
そんな人にとっては、そもそもリップロールはどのようにすれば良いか分からないですよね。
また、やり方が間違っていたという人もいるでしょう。
ここでは、リップロールの正しい練習方法を紹介します。
唇の上下をくっつける
リップロールをするには、まず唇の上下をくっつけます。
この時、力が入りすぎてはいけないのですが、初めは少し強めにくっつけたほうが唇を震わせる感覚を掴めますよ。
徐々に唇を震わせる感覚が掴めたら、リラックスしてできるように練習しましょう。
どうしても上手くいかない場合は、アヒル口をする時の口唇の形をイメージすると上手くできますよ。
指で口角を押し上げる
上手く唇が振動しない場合は、指で口角を押し上げながら息を吐きましょう。
リップロールが上手くできない人は、表情筋が固まっている可能性があります。
表情筋を和らげないと、リップロールはできないので指を使って表情筋の動きを助けてあげるとやりやすくなりますよ。
指の位置を少しずつ上下させながら、リップロールがやりやすい位置を探してみてくださいね。
息を吐いて振動音を出す
ここまでできたら、実際に息を吐いて唇が振動する音を出してみてください。
唇がうまく振動しない場合や、振動しても長く続かない場合は、息の量が不安定になっている可能性があります。
力を抜いて、一定の量で息を吐き続けられるまで練習しましょう。
上手くできない場合は、指の位置や唇の形を少しずつ調節してみてくださいね。
音・音階を加える
唇を振動できたら、息だけでなく声も出してみましょう。
初めは、出しやすい音程の「ウ」の発音を出すのがおすすめです。
一定の音程で声が楽に出せるようになったら、出した声の音程を上下させます。
まずは「ドレミファソラシド」や「ドレミレド」など、簡単にできるものから始めましょう。
慣れてきたら好きな歌のメロディをリップロールで試してみたり、地声と裏声の切り替えを練習してみてください。
リップロールを使ったトレーニング
リップロールができるようになったら、さらに具体的な発声練習をしていきましょう。
単純にリップロールをするだけでも良い練習になるのですが、ピアノや曲に合わせて歌ってみるとさらに効果が上がりますよ。
さらに発展した発声法の習得にも繋がるので、もっと歌が上手くなりたい人にもおすすめです。
さまざまな練習方法がありますが、歌を上達させるのに効果的な練習をいくつか紹介します。
喉を開く練習
リップロールを使って、喉を開いていく練習です。
まず、リップロールをしながら、「オ」を発音します。
普通のリップロールは「ウ」を発音する時に近いので、完全に「オ」の音にならなくても問題ありません。
その状態で「ドレミファソラシド」と音階をたどっていきましょう。
「オ」の発音は喉仏が下がるので、喉を開く練習に最適です。
唇の振動が止まらないように注意しながら練習してくださいね。
吐き出す息のコントロール
次は吐き出す息の量をコントロールする練習です。
リップロールをしながら、1秒ごとに少しずつ弱くしていき、そのあと徐々に強くしていきましょう。
これを繰り返すことで、歌う時に重要な息の強弱をコントロールできるようになります。
息の量をコントロールできるようになれば、歌う時に自然と抑揚が付けられるようになりますよ。
ミックスボイスの開発
リップロールは、ミックスボイスの習得にも繋がりますよ。
まずは音階を上下させながら、地声から裏声までをリップロールで繋ぐ練習をします。
自然にできるようになったら、地声で出せる音域の少し上を地声で出せるように頑張ってみましょう。
無理な力が入らないように注意しながら、根気強く練習することが大切ですよ。
リップロールが続かないときの対策
リップロールは基本的な発声練習ですが、唇の振動が上手くできなかったり、長く続かないという人もいるでしょう。
リップロールが上手く出きるまでは大変かもしれませんが、コツを掴んでしまえばすぐに出せるようになりますよ。
ここでは、リップロールを続かせるためのコツや意識するべきことを紹介します。
”一瞬だけ”のリップロールを繰り返す
唇は振動するのに長く続かないという場合は、一瞬だけのリップロールを繰り返すのがおすすめです。
長く続けることも大事ですが、まずは唇が振動する感覚を掴むことが重要です。
これを何度も繰り返すことで、体にリップロールの感覚を覚えさせることができますよ。
慣れてくると必ずできるようになるので、根気強く続けてみてくださいね。
お腹に力を入れる
リップロールを長く続けるには、しっかりとお腹に力を入れることが重要です。
リップロールをする時にお腹がきゅっとへこんでいることを確認しましょう。
手で下腹部を押さえると、力が入っているかの確認がしやすいでしょう。
お腹に力を入れることで呼吸が安定し、口周りの筋肉をリラックスさせられるためリップロールを出しやすくなりますよ。
息の量を増やす
それでも上手くいかない場合は、息の量を増やしてみましょう。
リップロールが長く続かない時は、そもそも息の量が足りていない可能性があります。
リップロールはある程度息の量がないと出せないので、上手くいかない場合は息の量を見直してみてください。
ただし、息の量を増やした時にお腹以外に無駄な力が入らないように注意が必要です。
リップロールの注意点
リップロールにはたくさんのメリットがある一方で、デメリットもあります。
また、間違った練習方法を続けると逆効果になってしまう可能性がありますよ。
せっかく練習を頑張っても、歌が上手くならないのでは意味がないですよね。
リップロールを習得するにあたり、注意点もしっかり知っておきましょう。
最後に、リップロールを練習する時の注意点とデメリットを紹介します。
力まずにリラックスする
リップロールを練習する時に最も注意するべきことは、力まないことです。
リップロールだけでなく、歌う時に無駄な力が入っていると首筋や肩、口周りに負担がかかってしまい、良い発声ができません。
綺麗な声を出すだけでなく、喉を痛めずに歌い続けるためにも、発声練習の時にはなるべく無駄な力を入れないように意識しましょう。
声がやせ細る可能性がある
リップロールをすることで、声がやせ細ってしまう可能性があります。
リップロールに慣れすぎると、声帯が閉鎖していることが当たり前になってしまうのです。
リップロールによって低音域~高音域を楽に出せるようになると、その状態が癖になってしまい声が弱々しくなってしまいます。
特にミックスボイスや高音発声に影響が出る可能性があるので、あまりやりすぎないように注意しましょう。
リップロールは自宅で簡単にできるボイトレ!ただし練習のやりすぎには注意しよう
リップロールは発声練習の基本で、プロも実践しているおすすめのボイストレーニングです。
あまり大きな声を出さなくても練習できるので、音楽教室や声楽教室などに通わなくても、自宅でも簡単にできます。
しかし、練習をしすぎると喉に負担がかかったり、声がやせ細ってしまう可能性もあります。
すぐに歌声が上達することはないので、喉を休めながら根気強く練習してみてくださいね。
この記事のまとめ!
- リップロールは唇を振動させる発声練習で、プロの歌手も実践している
- 喉の脱力、裏声と地声のコントロール、ミックスボイスの習得などに効果的
- 上下の唇をくっつけ、息を出して唇を振動させよう。頬に手を当てながらやるとやりやすい
- リップロールが続かない時は、一瞬だけ繰り返したり、息の量を見直してみよう
- リップロールは声がやせ細ってしまう可能性もあるので、やりすぎには注意しよう