「ミックスボイス」という言葉をご存じでしょうか。
プロの歌手の場合、100%このミックスボイスをマスターしているといっても過言ではありません。
話し声と歌声が違うように感じられる人も、ミックスボイスをマスターしている可能性があります。
「地声と裏声をつなげる」ことで声色を変える、習得の難しいミックスボイス。
この記事でわかること
ミックスボイスってなに?
カラオケを上達させる方法について調べると、「ミックスボイス」という発声法を見かけることがあります。
イメージ的に「ふたつ以上のなにかを合わせた歌声」ということは察しがつきますが、実際にはどのような発声法なのでしょうか。
ミックスボイスという声の特徴
ミックスボイスという言葉の定義には諸説あります。
そのなかでも今回取り上げるのは、「ミックスボイス=ミドルボイス」を起源とするものです。
ミドルボイスとは、地声(チェストボイス)と裏声(ファルセット)の中間の声を指します。
多くの人は地声から裏声に切り替えるときにブレイクポイント(一瞬無音になる瞬間=「喚声点」)を生じるのが普通です。
ところがこのミドルボイスをマスターすると、ブレイクポイントなしに地声から裏声へと切り替えることができるようになります。
その結果、プロの歌手のように地声のような力強い裏声で歌い上げることができるというわけです。
有名なところでは、アンジェラ・アキの「サクラ色」やSuperflyの「beautiful」、[Alexandoros]の「ワタリドリ」とった曲で聴くことができます。
よく「話し声と歌声がぜんぜん違う!」と感じるカラオケ好きの人がいますが、こういうタイプもミックスボイスをマスターしているといって良いでしょう。
ミックスボイスを習得するメリット
私たちの発声原理について簡単に触れておくと、声帯は息の通り道を広げたり閉めたりする「声唇」という部分と、それを覆うようにして存在する粘膜によって構成されています。
輪状甲状筋という筋肉が声帯を引っ張り甲状披裂筋という筋肉が声帯を閉める(声帯閉鎖)、このバランスを保ったうえで腹式発声による正しい息使いができればミックスボイスを習得することが可能です。
ミックスボイスをマスターすると、喉に負担をかけることなく高音を出せるというメリットが得られます。
習得する前に地声のまま高い音を出そうと力んでしまうと、喉を強く閉めて声帯を傷めてしまいますから注意してください。
カラオケで後半になると喉が疲れてしまったり、歌った後に声が枯れてしまったりするのはこのためです。
ミックスボイスなら必要以上に力んで喉を閉めることがなくなります。
喉の疲労軽減にもつながるため、カラオケで長時間歌っても疲れにくくなるはずです。
もちろんミックスボイスを使った力強い高音で、カラオケ上達を狙うこともできます。
地声と裏声をうまくつなげるには?
ミックスボイスの特徴である「地声と裏声をブレイクポイントなしにつなげる」ためには、いくつかのポイントがあります。
簡単なものから順番に解説していきますので、少しずつやり方を学びましょう。
自分の声を把握する
まずは、自分の声の性質を知るところからスタートです。
- 地声の方が出しやすいのか、裏声の方が出しやすいのか?
- 地声と裏声で雰囲気は異なるか?
- 地声のときだけ上を向くなど、姿勢に違いはないか?
- 裏声のときだけ息漏れが多いなど、息の使い方に差はないか?
こうしたポイントで、自分の声の特徴を分析してみましょう。
地声と裏声のバランスを意識する
続いては、地声と裏声のバランスを図っていきます。
多くの場合、地声の方がパワーがあり裏声の方が貧弱に聞こえるものです。
該当する方は裏声を鍛えるトレーニングを行う必要があります。
地声を出すときと裏声を出すときとで、姿勢や声量に極端な違いがないよう意識するのがコツです。
地声と裏声をつなげる練習法
地声と裏声とのバランスがとれるようになったら、いよいよつなげてミックスボイスにしていきましょう。
好きな母音でサイレンの練習
まず最初は、サイレンのように「ウウウウウゥゥゥゥゥウウウウウゥゥゥゥゥ」と、スムーズに音程を上下させるイメージで発声練習します。
手のひらを「上にすると高音」「下に降ろすと低音」というようなルールを決めて、アクションをつけながら音程を調節するのもおすすめです。
他の母音でもサイレンの練習を行う
サイレンの練習がうまくできるようになったら、ほかの母音でも同じようにできるようトレーニングしていきます。
たとえば、「ウ」に続いて「ア」の音でサイレンの練習。
それができるようになったら次は「イ」の音、「エ」の音と、違う母音でも同じようにスムーズなミックスができるよう訓練していきます。
ゆっくりと1粒1粒をていねいに発声
5つの母音で発声をマスターできたら、次に「ドレミファソラシド」で音階を意識しながら発声してみます。
これまでは滑らかに音域を上下させるサイレンの練習を行ってきましたが、今度はゆっくり音階を上下させるイメージです。
1粒1粒ていねいに発声し、実際に歌を歌うときにもしっかりミックスできるように意識してみてください。
ミックスボイスを上達させるコツ
ここからは、完成したミックスボイスをさらに上達させるためのコツを紹介します。
腹式呼吸で強い声を出す
まずは発声法としての基礎、腹式呼吸をマスターする必要があります。
力強く音域の高い音を出すために、腹式呼吸で横隔膜を支える訓練です。
横隔膜あたり(みぞおちあたり)に力を入れながら歌うように意識しましょう。
喉をリラックスさせる
ミックスボイスは、地声で力一杯高い音を出す発声法とは異なるものです。
基本的に喉を力ませることはせず、リラックスした状態で発声します。
がんばって高い声を出そうと喉を閉めるのは避け、常にリラックスした状態を維持できるように努めてください。
喉の周りに力を入れてしまうと、苦しいだけでなく喉を傷めてしまいます。
ハミングで感覚を掴む
ハミングとは、つまり鼻歌のことです。
口を閉じて声を出さない状態で、鼻歌によって高い音を出してみましょう。
喉から出た音を頭のてっぺんに持っていくイメージです。
このときに「喉」→「鼻」→「頭」と、鼻の奥を経由するようなイメージを持って歌ってみてください。
なんとなく鼻の奥で声が響いている感覚が得られるのではないでしょうか。
この鼻の奥で響く感覚が、ミックスボイスで発声する感覚です。
ちなみに、この響く感覚のことを「鼻腔共鳴」ともいいます。
試しに鼻歌で高い声を頭のてっぺんから出しているイメージのまま、口を開けて声を出してみてください。
するとこれまでにない高い音がきれいに発声できているはずです。
ここまできたら、ミックスボイスをほぼマスターできたといえるでしょう。
表情筋を動かす
続いて、口の周りの筋肉をほぐす練習です。
表情筋を動かすことで口角が上がり、口が横に広がりやすくなるため高い音が出しやすくなります。
また、筋肉がほぐれて口の周りも柔らかくなると口のなかで声が響きやすくなります。
その結果、よりきれいな発声ができるようになっているはずです。
具体的には目や口、顔全体をギュッとすぼめ、パッと開く動作を繰り返します。
目をギュッとつぶり、口は梅干しを食べたときのようにすぼめ、眉間にシワをつくってしばらく静止。
その後、目を見開いて口を大きく開け、額にシワを寄せるイメージです。
発声する前には、この表情筋のストレッチをしておくと良いでしょう。
息の使い方をマスターする
少し難易度が上がりますが、「息の使い方」をマスターすることでよりツヤのある声を出すことができます。
ミックスボイスの場合、地声と違って息の量は必要ありません。
むしろ、細く弱い息を「速く」出すのがポイントです。
この息の使い方をマスターするためには、腹式呼吸を身につけて腹筋で息をコントロールできるようになる必要があります。
これは独学で習得するには難易度が高いため、ボイトレ教室に通って専門のボイストレーナーによる指導を受けるのが一番の近道でしょう。
ミックスボイスを習得して歌のレパートリーを増やそう
ミックスボイスの仕組みと、声の出し方、トレーニング法、レベルアップのためのテクニックをご紹介してきました。
これらを習得することによって特に男性の場合、歌のレパートリーが劇的に増加します。
キーが高めな男性ボーカルの曲はもちろん、女性ボーカルの曲も難なく歌いこなせるようになるはずです。
喉を閉めた無理な発声を行っていないため、喉を酷使して疲れるということもなく、カラオケを長時間楽しめるようになります。
完全に習得するまでには時間がかかりますが、一度身につければ数多くのメリットが得られるミックスボイス。
この機会にマスターしてみてはいかがでしょうか。
この記事のまとめ!
- ミックスボイスとは地声と裏声の中間の声を出すテクニックのことである
- 地声と裏声をつなげるサイレンの練習を繰り返すことで、ミックスボイスを習得しやすくなる
- まずは腹式呼吸と鼻声(ハミング)をマスターすることがカラオケ上達への近道