歌声が不安定で弱々しく、思うように歌えないという悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか?
ボイトレや腹式発声の練習を続けていてもなかなか上達せず、諦めてしまう人もいるでしょう。
そんな人は、全ての歌声の土台となる「チェストボイス」を練習するのがおすすめです。
この記事でわかること
チェストボイスとは
「チェストボイス(胸声)」とは、しっかりと胸に響かせた地声のことです。
「チェスト」は「胸」という意味で、胸に響かせることでどっしりとして安定感のある印象を与えます。
チェストボイスを使いこなすだけでも、低音に芯がある歌声になり、歌を上手く歌えるようになるのです。
歌だけではなく、普段の話し方も堂々とした雰囲気になるため、会話や人前で話す場面でも役立ちますよ。
チェストボイスがおすすめな理由
腹式呼吸を練習したり、裏声やミックスボイスを磨けば歌は上手くなると考えている人は多いのではないでしょうか?
しかし、安定感のある力強い低音を手に入れるためには、土台となるチェストボイスを使いこなせるようになる必要があるのです。
チェストボイスの出し方を知る前に、チェストボイスがなぜおすすめなのか、その理由について解説します。
個性が表現しやすい
チェストボイスは、自分の個性を表現しやすい発声法です。
合唱など自分の個性を抑え、周りと合わせる歌唱の場合は別ですが、ソロパートを担当する時や自分ひとりで歌う時は、自分の個性を豊かに表現できるほうが良いですよね。
チェストボイスを使いこなせるようになると、自分の個性を最大限発揮できるようになるのです。
持ち歌の幅が広がる
チェストボイスを鍛えると、持ち歌の幅が広がります。
裏声は低音になるほど音量が小さくなるという性質があるので、全ての音域を裏声でカバーしようとするとどうしても弱々しい発声になってしまいます。
また、裏声で無理に低音を出そうとすると、喉を痛める原因にもなりかねません。
しかし、チェストボイスを鍛えれば、音域が広がるため裏声を使わない歌い方ができるのです。
無理なく広い音域を出すためにも、チェストボイスをしっかり習得しましょう。
高音が力強くなる
チェストボイスを練習すれば、低音だけでなく高音も力強く出せるようになります。
力強い声を出すには、声を体の中で響かせるのが重要です。
音が高くなるにつれて響かせる場所も高くなるので、高音を力強く出したいなら胸で響かせることが必要になります。
そのため、胸を使った発声法のチェストボイスを鍛えれば、低音から高音まで力強く出せるようになるのです。
音の響きを体感できる
チェストボイスを鍛えることで、声が体の中で響いている感覚を体感できます。
良い発声をするには、体の中で声を効率良く響かせなければいけません。
ボイトレ初心者にとっては、この「響き」の感覚を掴むのが難しいという人が多いでしょう。
チェストボイスは声の響きが最もわかりやすい発声法なので、「響き」を体で覚えるには最適なのです。
声質をコントロールできる
歌に合わせて声質をコントロールできるようになる点も、チェストボイスを鍛えるメリットです。
どんな場面でも太くて力強い声を出せば良いというわけではなく、歌によっては細く儚い声が重要になることもあります。
体の中で声を響かせる感覚を掴めば、あとはその響きの割合を変えるだけで声質をコントロールできるのです。
表現力を鍛えるためにも、チェストボイスをしっかりと使いこなせるようになりましょう。
チェストボイスの出し方
チェストボイスを鍛えるとさまざまなメリットがあるため、すぐにでも習得したいと思った人も多いでしょう。
しかし、ボイストレーニングに通ったことがない人は、どうすればチェストボイスを鍛えられるのかなんてわからないですよね。
ボイストレーナーがいなくてもチェストボイスを習得できるように、チェストボイスの出し方を説明します。
声帯を閉じる
力強いチェストボイスを出すには、まず声帯を閉じましょう。
この時、声帯を閉じすぎても声が詰まってしまうので、注意してください。
声帯をちょうど良い具合に閉じるには、「エッジボイス」という発声法が効果的です。
声帯を閉じ、映画「呪怨」に出てくるような「あ゛あ゛あ゛あ゛」という声を出し、感覚を掴みましょう。
喉を開く
上手く声帯を閉じれたら、喉を大きく開きましょう。
チェストボイスは体をスピーカーのようにして、大きく声を響かせる発声法です。
そのため、喉が閉じていると音の振動が伝わりづらく、声も前に出てきません。
また、喉を開くことで息が通りやすくなり、発声もスムーズになります。
すると、自然に温かみがある低音が出せるようになりますよ。
鼻腔と胸を響かせる
最後に出した声を鼻腔で響かせます。
「チェストボイス」で響かせるのは胸だけだと思う人も多いかもしれませんが、実は鼻腔で響かせることも重要なのです。
まずは声を鼻腔で響かせる感覚を掴み、その感覚を残したまま、胸に響きを落としていきましょう。
胸に手を当ててしっかり振動していれば、チェストボイスが出せている証拠です。
チェストボイスを鍛えるコツ
チェストボイスの出し方を説明しましたが、練習を繰り返してもなかなか感覚が掴めないという人もいるかもしれません。
チェストボイスは地声に近い発声なので、地声との違いがわかりづらいのも難しいポイントなのです。
しかし、せっかく練習するなら、効率的に鍛えてチェストボイスをマスターしたいですよね。
ここでは、チェストボイス鍛えるのに効果的な練習方法を紹介します。
地声の抵抗感をなくす
チェストボイスを習得するために、まずは地声で歌う抵抗感をなくしましょう。
長年裏声しか使っていない人は、地声を出す筋肉が衰えている可能性があります。
筋肉が衰えている分、地声を出すと喉に負担を感じるため、発声としては良くないと考えてしまうのでしょう。
そのため、いざ地声で歌うとすぐに疲労を感じてしまい、練習を途中でやめてしまう人も多いのです。
地声で歌うことに慣れれば、声帯を閉じる筋肉が鍛えられ、負担も軽くなります。
まずは地声を出すことに対する抵抗感をなくし、練習を続けましょう。
話し声の延長で発声する
話す時と同じような意識で声を出すのも、おすすめの練習法です。
裏声でしか歌えないという人も、話す時は地声の人がほとんどでしょう。
そのような人は、地声で歌う感覚を掴むためにも「チェストボイスは話し声の延長だ」という意識で発声するのが大切なのです。
普段話している感じで声を出し、徐々に歌声に移行していくような意識で声を出してみましょう。
腹式呼吸を使う
チェストボイスを出す時も、発声の基本である腹式呼吸を意識しましょう。
腹式呼吸を行うには、息を吸う時にお腹を膨らませ、肺にたくさんの空気を入れます。
息を吐く時はお腹をへこませ、肺を収縮させるように空気を吐き出しましょう。
無駄な力を入れず、リラックスした状態で呼吸を行うことが重要です。
しっかり発音する
チェストボイスを出す時は、母音の発音が重要です。
- まずは口を大きく開け、「あ・い・う・え・お」とはっきり発音します。
- それができたら、それぞれの音を「あー・いー・うー・えー・おー」と伸ばしていきましょう。
この時、音程はあまり気にする必要はありません。
少し大げさなくらい口を開き、一音ずつはっきりと発音するのがポイントです。
チェストボイスの練習曲
チェストボイスがある程度出せるようになったら、いよいよ実践的な練習をしていきましょう。
基礎的な発声練習も大事ですが、ずっと地味な練習ばかりではモチベーションも落ちてしまいますよね。
そんな時は、男性キーと女性キー、それぞれのチェストボイスの練習にちょうど良い曲を歌ってみるのも良いでしょう。
ここで紹介するアーティストはどれもチェストボイスを上手く使っているので、参考にしながら練習してみてくださいね。
みんな空の下 / 絢香
チェストボイスが上手い女性歌手と言えば絢香です。
絢香が歌う「みんな空の下」は、チェストボイスで高音を力強く歌っています。
- スローテンポなのでキーが高くても雑にならず、丁寧に出すことを意識しましょう。
- 特にサビは胸で声を大きく響かせ、力強く歌うことが重要です。
裏声を出す部分もあるので、チェストボイスとの切り替えも練習できますよ。
瞳を閉じて / 平井堅
平井堅は男性歌手の中でも、特にチェストボイスを上手く操っています。
「瞳を閉じて」はゆったりとしたバラード調の曲なので、声の響きを上手くコントロールする必要があります。
- ファルセットが出てくる部分も多いので、チェストボイスと上手く切り替えながら歌うことを意識しましょう。
- 声を張り上げすぎず、優しい歌声で歌い上げるのがポイントです。
しるし / Mr.Children
Mr.Childrenの「しるし」もチェストボイスの練習に最適です。
ドラマの主題歌として話題になったので、知っている人も多いのではないでしょうか?
- スローテンポで一音を長く伸ばすことが多いため、一音ずつしっかり声を響かせられているか確認しながら歌いましょう。
- サビ以外は落ち着いた低音が多いので、サビとそれ以外では声の響かせ方を変えて強弱をつけるとさらに上手く歌えますよ。
チェストボイスを使えば力強くはっきりとした声で歌える!母音の発音に気をつけながら全身で声の響きを感じよう
歌声が弱々しくて悩んでいる人は、チェストボイスを習得すればはっきりとした力強い声で歌えるようになります。
また、
- 声質をコントロールできるようになる
- 自分の声質を最大限に活かせるようになる
はっきりと母音を発音することを心掛けながら、声が胸で響く感覚を掴みましょう。
この記事のまとめ!
- チェストボイスは声質で個性を出しやすく、広い音域で力強い声を出せるようになる
- 声帯を閉じて喉を大きく開け、胸と鼻腔に声を響かせる意識が重要
- 地声への抵抗感をなくし、話し声の延長という感覚で練習しよう
- 腹式呼吸を意識し、一音ずつ丁寧に発音しよう