プロ歌手も多用する「がなり声」は、テクニックが必要な手法です。
歌の中でアクセントになり渋くてかっこいいですが、出し方が難しく、一歩間違えると喉を潰す危険性もあります。
この記事でわかること
がなり声とは
がなり声は「唸り声」とも呼ばれ、シャウト系の発声方法です。
ガラガラした音が鳴ることから名前が由来しており、大声を出した時や怒鳴っている声がそれにあたります。
がなり声の正しい発声方法を身につけることで、歌のテクニックが向上し、自信を持って歌えるようになるでしょう。
歌唱テクニックの1つ
がなり声は習得するのが難しい歌唱テクニックの1つで、他の歌唱法に比べて認知度が低く、正しい練習法が浸透していません。
激しいロックジャンルで使用されることが多く、痛みや怒り、苦しみを表現することができます。
しかし、間違った方法で練習を続けると、上達しないどころか、喉を痛める危険性もあるので気をつけましょう。
仮声帯を使う
がなり声の正式名称は「仮声帯発声」といい、言葉通り仮声帯が大きく影響している発声方法です。
仮声帯は喉の口側に位置しており、食べ物や飲み物が気管に入らないようにする蓋代わりの役目を果たしています。
この仮声帯を鳴らすことで、がなり声を出すことができるのです。
仮声帯が鳴る理由
仮声帯が鳴る原理は息の圧力である呼気圧が大きく影響しており、声帯にかかる呼気圧の大きさによって仮声帯が動きます。
普段声を出すときは仮声帯は鳴りませんが、息の量が多すぎると声帯が息の力を支えられず声がでなくなります。
この時、仮声帯が閉鎖して息の圧力をなんとか支えようと補助の働きをするため、ガラガラ音が出るのです。
がなり声の出し方・練習法
がなり声をものにできれば、ワンランク上の歌唱力を手に入れることができます。
また、パワフルな印象や情動的な印象を楽曲に与える効果もあるでしょう。
次はがなり声の出し方や練習方法を段階に分けて紹介します。
仮声帯を閉める
まずは仮声帯を閉める感覚を覚えるために、唾を飲み込んでみてください。
飲み込んだ時に喉が締まる感覚が、仮声帯が閉まっている状態なのです。
その状態を常に意識するように心がけます。
閉めたまま声を出す
仮声帯を閉める感覚を掴んだら、閉めたまま声を出してみましょう。
咳き込むタイミングで声を出すイメージといえば、分かりやすいかもしれませんね。
咳き込むことで声帯が締まり、息が強く吐き出されます。
その時にガラガラという声がでれば成功です。
この出し方を間違えると、喉にダメージが加わり歌声に影響が出る可能性があります。
ミドルボイスやファルセットを使う人は特に、ダメージの少ないこの方法を実践しましょう。
腹式呼吸をあわせる
声が出せるようになったら、最後に腹式呼吸をあわせましょう。
腹式呼吸はボイストレーニングの基礎で、下腹部と肺を使った呼吸方法です。
肺は上からではなく下から押して圧をかけ、息を押し出すイメージをするといいでしょう。
下腹部にある横隔膜を下げて発声しながら、がなり声が出せるようになれば習得です。
正しい練習方法
がなり声の出し方を紹介しましたが、決して無理に出そうとしてはいけません。
上記の方法で出来なかった場合は、まずは練習から始めてください。
正しい練習方法として、まずはエッジボイスを出しながら、舌の奥を上アゴにつけるように動かせるようになりましょう。
喉仏が上昇し、喉の空間が狭くなった状態で息を強く吐けば、自然とがなり声になります。
喉仏を下げても閉鎖しますが、構造的にがなり声はでにくくなるのです。
仮声帯発声は練習するほど、仮声帯を上手く使えるようになるので音程を取りながら、根気よく練習しましょう。
がなり声で喉が痛くなる理由
がなり声を練習する中でデメリットとなるのが、喉を痛めてしまうことです。
しかし、正しい練習方法を行えば、そんな悩みもなくなります。
喉が痛くなる理由を知って、原因となる要素を取り払い練習を行いましょう。
仮声帯にダメージがある
がなり声は喉に負担がかかる発声方法で、声帯の中でもより大きいダメージを受けるのが仮声帯です。
そもそも仮声帯は発声するための器官ではないため、音を鳴らすことで受けるダメージへの耐久が弱いのです。
練習中はどうしても喉の負担がかかるので、短期間で習得しようとせずに、時間を分けて少しずつ練習をするように心がけましょう。
喉が開いていない
喉が開いていないと声帯が圧迫され、上手く振動できなくなってしまいます。
無理に振動させようとすると喉を痛めてしまうので、喉を開いて歌う技術を身につけましょう。
喉の開き方の練習方法として、ハミングを行うのが効果的です。
鼻歌と同じ声帯の状態で歌えば自然に喉が開き、声を鼻腔に響かせることができます。
がなり声が特徴的な曲7選
がなり声が習得できた後に歌ってほしいおすすめの楽曲を抜粋しました。
最後にがなり声が特徴的な楽曲7選を紹介します。
Fighter / クリスティーナ・アギレラ
クリスティーナ・アギレラはエッジ感がある鳴り系の声質で、英語圏に多い声の出し方をしています。
一定の閉鎖感を声帯に作り出し、強い鳴りの発声を可能にしているのです。
加えて仮声帯部分を鳴らして、がなり声を生み出しています。
特にこの「Fighter」は所々でがなり声が使われているので、練習にぴったりの楽曲です。
ここまで、がなり声を美しくかっこよくコントロールできる人はそういないので、原曲を参考にして練習するといいでしょう。
シャボン玉 / モーニング娘。
モーニング娘。の強みの1つは、がなり声でしょう。
特にがなり声が強調されやすいのが「シャボン玉」という楽曲で、カラオケでも盛り上がること間違いありません。
CD音源ではあまり、がなり声を感じることができませんが、ライブでは見事ながなり声を披露しています。
ライブ映像を参考に、ぜひがなり声の練習をしてみてください。
When You Believe ft. Mariah Carey / ホイットニー・ヒューストン
ホイットニー・ヒューストンの声域は、3オクターブをカバーする実力の持ち主です。
優雅に歌い上げる印象ですが、「When You Believe」では官能的ながなり声を披露してくれています。
少し上級者向けではありますが、パワフルな楽曲に挑戦してみたい人はぜひ歌ってみてください。
ロキ / みきとP feat.鏡音リン
若者に人気の「ロキ」は、ボカロPみきとが制作した鏡音リンの楽曲です。
ひび割れているがなり声と、曲中盤にある「お互いになぁぁぁぁ!!!」という歌詞で、かっこよく演出しています。
この部分を歌いたくてがなり声を練習している人もいるかもしれませんね。
もしがなり声を習得できたなら、ぜひ歌ってみてください。
カワキヲアメク / 美波
透き通る歌声に心を掴まれているファンが多い美波は、大人気シンガーソングライターです。
「カワキヲアメク」では地声の声質とは一転して、仮声帯を強く鳴らす発声をしているのが特徴的。
声帯の閉鎖を高め、仮声帯を強く鳴らすことでがなり声を生み出しています。
また、彼女のような特徴的な澄んだ声を習得するには、ハミングを練習する必要もあるでしょう。
完全感覚Dreamer / ONE OK ROCK
がなり声が特徴的なアーティストとして、ONE OK ROCKのTakaも挙げられます。
特に「完全感覚Dreamer」はがなり声を使って歌うとかっこよく決まります。
最高音は女性の限界音域を1音超えたハイヴォイスなので、女性の場合練習をすれば出せるようになりますが、男性は自分で練習すると年単位の期間が必要となるでしょう。
また、ONE OK ROCKのTakaのように特徴のある高音シャウトをすれば、ダミ声に近づけやすくなります。
ボッカデラベリタ / 超学生
「ボッカデラベリタ」はボカロPの柊キライがflowerを使って作った楽曲です。
様々な歌い手がカバーをしていますが、中でも歌い手の超学生がカバーした楽曲にがなり声が使用されています。
彼の低音ボイスとがなり声が合わさって、とてもパワフルでかっこいいです。
がなり声以外にも曲中で様々な発声方法を使っているので、ぜひ聴いて発声の参考にしてみてください。
がなり声を使えばパワフルで感情的な印象に!喉を傷めないように注意して練習しよう
がなり声が習得できれば、楽曲にパワフルな印象を与えることができ、とても大きな武器となります。
しかし、無理な発声をすると喉を傷つけやすいなどのデメリットもあるので注意が必要です。
喉を傷つけないためにも、正しい練習方法を行いましょう。
また、短期間で習得しようとはせず、時間を分けるなどして喉への負担を減らしながら練習しましょう。
この記事のまとめ!
- 歌唱テクニックの1つ「がなり声」は、痛みや怒り、苦しみを表現するのに効果的
- がなり声は仮声帯が重要だが、間違った練習方法で痛めてしまう可能性がある
- 仮声帯を痛めないためにも、喉を開けて発声練習することが大事
- がなり声を習得できたらアーティストの楽曲で練習しよう