アレンジや作曲で活躍する便利な理論・代理コード。
使いこなせるようになって自分好みの曲を作りたいけれど、使い方や見つけ方が分からないという人も多いのではないでしょうか?
この記事のもくじ
代理コードとは
代理コードとは、特定のコードの代わりに使えるコードのことです。
雰囲気を大きく変えることなく、メロディの印象やハーモニーに変化を与えてくれるのが特徴。
仕組みや使い方を理解するだけでも、もっと音楽が楽しくなる和声理論なのでぜひ覚えておきましょう。
はじめに、代理コードの仕組みや特徴を紹介します。
ライブUtaTenの関連記事!
-
セカンダリードミナントの使い方をわかりやすく紹介!一覧付きでコード進行も解説
続きを見る
似た機能や響きを持つコード
似た機能や響きを持っているのが、代理コードの特徴です。
機能とは安定感のあるトニック(T)、少し不安定なサブドミナント(SD)、不安定なドミナント(D)などのコードファンクション。
響きとは「聴こえ方」や「和声内の共通音の多さ」のことです。
代理コードはこれらが元のコードに近いため、代わりに使っても違和感なく使用できます。
似た部分も多いですが、ルート音の位置や構成音が微妙に異なるほか、メロディとコードトーンの関係も変わるためサウンドも変化しますよ。
アレンジや作曲で活躍する
代理コードは、アレンジや作曲をするときに便利な音楽理論です。
メロディにコードを付ける場合であれば、単純に選択肢が増えるので表現の幅も広げられます。
また、コードを入れ替えれば雰囲気を変えられるので、既存のコード進行のアレンジにも使えるのが特徴。
もちろん、代理コード使わなくても良い曲ができる場合もありますが、1つの方法として知っておくと安定したクオリティの楽曲が作れるようになりますよ。
代理コードの使い方
特徴を把握したら、次は定番の使い方を覚えていきましょう。
最終的に理想のサウンドが作れれば、どんな使い方でも良いです。
定番の使い方を知っておけば、音楽の知識やセンスに自信がない人でもハイクオリティな進行を作りやすくなりますよ。
次は、代理コードの使い方を紹介するので、ぜひアレンジや作曲の参考にしてみてくださいね。
ライブUtaTenの関連記事!
-
ダイアトニックコードとは?役割・覚え方・定番のコード進行をわかりやすく解説
続きを見る
既存のコードと置き換えて使うのが基本
代理コードは、既存の進行内にあるコードと置き換えて使うのが基本です。
キーがCメジャーの「C→F→G→C」という進行であれば「Am→Dm→G→C」といった具合に、入れ替えて使います。
ポイントは、置き換え後の和音とメロディが衝突していないかを確認すること。
簡単な入れ替えなら大丈夫なケースが多いですが、少し変わった代理コードを使うと、メロディとコードトーンが半音でぶつかる場合があります。
半音でぶつかると不協和音のように聴こえてしまうので、置き換え後は必ず楽譜や耳で確認しましょう。
雰囲気や響きを変えたい場面に使うと効果的
代理コードはやみくもに使うよりも、雰囲気や響きを変えたい場面を狙って使ったほうが効果的です。
例えば、Bメロを少しジャジーで複雑な響きにしたいときや、サビをシンプルに聴かせたいとき、間奏パートを歌が入る部分と違う進行にしたい場合など。
もちろん、全体的な置き換えが有効なケースもありますが、狙って使うほうがバランスの良い仕上がりになります。
これから使い方を覚えたいのであれば、進行の数ヶ所や1つのパートの置き換えからはじめてみましょう。
代理コードの見つけ方
代理コードは簡単な見つけ方を覚えるだけで、誰でも手軽に導き出せるものです。
ダイアトニックコードにないものを探す場合は応用理論も必要ですが、定番コードを見つけるだけなら簡単な見つけ方だけで充分に対応できますよ。
次は代理コードの見つけ方を紹介するので、ぜひ気軽に挑戦してみてくださいね。
ライブUtaTenの関連記事!
-
【名著】ギターの教則本おすすめ17選!初心者に人気の入門書や音楽理論解説本を紹介
続きを見る
構成音に注目する
代理コードは、置き換えたいコードと響きが似たものを使うと決められているものです。
そのため、見つけるときも構成音に注目すると簡単に見つけられます。
Cメジャーキーに登場する「Cmaj7(構成音:C・E・G・B)」なら「Am7(A・C・E・G)」や「Em7(E・G・B・D)」といった、構成音が2音~3音共通してるものが代理コードです。
例外はいくつかありますが、この見つけ方と耳を組み合わせれば、簡単に見つけられますよ。
音名をたくさん使う見つけ方なので、指板の音名を覚えているギタリストや鍵盤奏者におすすめの方法です。
同じ機能のコードを探す
構成音で見つけたものが正しいか確認したい、音楽理論を使って考えたい場合には、同じ機能のコードを探す方法がピッタリです。
代理コードは同じ機能の和音を使うテクニックなので、度数と機能を暗記すれば「トニックのⅠmaj7なら同じトニックのⅥm7かⅢm7が使える」とすぐに割り出せるようになります。
度数を基準に考える方法なので、キーが変わっても同じやり方で簡単に見つけられるのもポイント。
アレンジや作曲だけでなく、曲の分析にも応用できるので色々な音楽理論を覚えたい人は、ぜひ挑戦してみてくださいね。
メジャー・マイナーキーで使える代理コード一覧
使い方や見つけ方を覚えたら、次はメジャー・マイナーキーで使える代理コードを確認していきましょう。
置き換えるだけどシンプルな理論ですが、実は色々な解釈があり、前後の進行によって役割が変わるもの、サブドミナントとトニックの両方の機能を持つものなどもありますよ。
次は、メジャー・マイナーキーで使える代理コードを一覧形式で紹介するので、幅広く覚えたい人はぜひ活用してみてくださいね。
メジャーキー
ダイアトニックコード | Ⅰmaj7 | Ⅱm7 | Ⅲm7 | Ⅳmaj7 | Ⅴ7 | Ⅵm7 | Ⅶm7(♭5) |
ファンクション | T | SD | T or D | SD | D | T | D |
KEY=Cの場合 | Cmaj7 | Dm7 | Em7 | Fmaj7 | G7 | Am7 | Bm7(♭5) |
代理コード | Ⅲm7 Ⅵm7 |
Ⅳmaj7 | Ⅰmaj7 Ⅵm7 |
Ⅱm7 | Ⅶm7(♭5) Ⅱm7onⅤ Ⅲm7 |
Ⅰmaj7 Ⅲm7 |
V7 |
KEY=Cの場合 | Em7 Am7 |
Fmaj7 | Cmaj7 Am7 |
Dm7 | Bm7(♭5) Dm7/G Em7 |
Cmaj7 Em7 |
G7 |
メジャーキーの代理コードは、ルールがハッキリと決められているので音楽理論が苦手な人でも理解しやすいです。
主に使えるもの、キーCのときのコードネームは上記の通りで、Ⅲm7とⅤ7以外は同じファンクションの置き換えが基本となっています。
Ⅲm7はⅤのトライアドにⅢのベース音を加えた構造なので、ドミナントとカウントする場合もあるのが特徴。
Ⅱm7はサブドミナントですが、ベース音にⅤの音を使う場合のみドミナントとして機能します。
Ⅲm7やⅤ7は少し難しいですが、その他はシンプルな代理コードとして使えるので、まずは使いやすいものがら試してみるのがおすすめです。
マイナーキー
ダイアトニックコード | Ⅰm7 | Ⅱm7(♭5) | ♭Ⅲmaj7 | Ⅳm7 | Ⅴm7 | ♭Ⅵmaj7 | ♭Ⅶ7 |
ファンクション | T | SD | T | SD | D | SD or T | SD or D |
KEY=Cmの場合 | Cm7 | Dm7(♭5) | E♭maj7 | Fm7 | Gm7 | A♭maj7 | B♭7 |
代理コード | ♭Ⅲmaj7 ♭ⅥMaj7 |
Ⅳm7 ♭ⅥMaj7 |
Ⅰm7 ♭ⅥMaj7 |
Ⅱm7(♭5) ♭ⅥMaj7 |
♭Ⅶ7 | Ⅰm7 Ⅳm7 |
Ⅱm7(♭5) Ⅴm7 |
KEY=Cmの場合 | E♭maj7 A♭maj7 |
Fm7 A♭maj7 |
Cm7 A♭maj7 |
Dm7(♭5) A♭maj7 |
B♭7 | Cm7 Fm7 |
Dm7(♭5) Gm7 |
マイナーキーの代理コードは色々な解釈があるため、メジャーキーよりも少し複雑です。
ファンクションに注目した置き換えはメジャーキーと同様に使えるので、自信がない人は複数の解釈がある和音は避けるのがおすすめ。
慣れてきたら、Ⅰm7と似た構造ながらもSD的なサウンドの♭Ⅵmaj7、SDと分類されつつも♭Ⅲへのドミナントモーションが可能な♭Ⅶ7も試してみましょう。
ハーモニックマイナーやメロディックマイナーを考えるなら、ドミナントのⅤ7、サブドミナントのⅣ7なども使えるので、理論に自信がある人は使ってみてくださいね。
ノンダイアトニックな代理コード
代理コードとして使えるのは、ダイアトニックコード内に存在する和音だけではありません。
実は、モードや借用和音などの応用理論を使えば、ノンダイアトニックコードも置き換えに使えるようになります。
最後に、ノンダイアトニックな代理コードを紹介するので、基本をマスターした人はぜひ挑戦してみてくださいね。
Ⅰ7・Ⅳ7
楽曲にブルージーな響きをプラスしたいときにおすすめの代理コードが、トニックのⅠ7とサブドミナントのⅣ7です。
「Ⅰmaj7→Ⅳmaj7」を「Ⅰ7→Ⅳ7」に置き換えると、部分的にブルース進行になり、明るさと泥臭さの両方を感じさせる雰囲気に変化します。
ミクソリディアンモードのトニック・Ⅰ7、メロディックマイナー内にあるサブドミナント・Ⅳ7として考えると、単体で使えるのもポイント。
スケールやモードを元にした使い方は少し難易度が高いですが、ブルース風の進行は簡単に作れるので、ぜひ試してみてくださいね。
#Ⅳm7(♭5)
#Ⅳm7(♭5)はジャズっぽい雰囲気の曲や、おしゃれなポップスでよく使われる、トニックの代理コードです。
このコードは、メジャースケールの4thに#が付いたリディアンモードを借りてきたもので、キーCで考えるとF#m7(♭5)となります。
このF#m7(♭5)構成音は「F#・A・C・E」と、ⅠのCやⅥmのAmに近く、響きもトニックに似たものになっているのが特徴。
モードという少し難しい理論を使っていますが、ルート音の変化を意識してメロディを作れば初心者でも簡単に使いこなせますよ。
やや浮遊感のある響きになるので、安定感を出したい場面ではなく、進行の中央付近にあるトニックを狙って使うのがポイントです。
♭Ⅶmaj7
サブドミナントの代理コードとして使えるのが、ドリアンモードの♭Ⅶ、もしくはミクソリディアンの♭Ⅶから借りてきた♭Ⅶmaj7です。
メジャーキーならⅦm7(♭5)のルートを半音上げたもの、マイナーキーなら♭Ⅶ7の7thを半音上げたものと考えることもできます。
こちらもノンダイアトニックな音を含んでいるので、転調感のあるジャジーな響きを持つのが特徴。
進行内のサブドミナントを置き換えてあげるだけで、簡単におしゃれな雰囲気にできる便利な代理コードです。
#Ⅴdim7
#Ⅴdim7は、Ⅴ7のルートを半音上げた構造を持つ「ドミナントの代理コード」です。
Ⅴ7がC7(構成音:C・E・G・B♭)なら、#Ⅴdim7はC#dim7(構成音:C#・E・G・B♭)となります。
ルートが変化しただけなので、ドミナントセブンスの特徴である「トライトーン(C7ならEとB♭)」をそのまま保持しているのが特徴。
使い方もⅤ7と同じで、トニックに解決したい場面で使用します。
Ⅴ7をさらに不安定にしたような、独特な響きを演出できるドミナントの代理コードです。
代理コードは楽曲に新たな響きを加えてくれるコード!使い方や響きを覚えて作曲に生かしてみよう
代理コードは、置き換えてあげるだけで楽曲に新たな響きを加えてくれる、便利な和音です。
難しい理論を使ったものもありますが、使い方はシンプルなので音楽理論が苦手な人や、作曲初心者でも気軽に使えますよ。
まずは、使い方を覚えたり、演奏しながら響きを覚えたりしながら基本をマスターして、慣れたらアレンジや作曲で使ってみましょう。
この記事のまとめ!
- 代理コードは特定のコードと置き換えて使えるコード
- 部分的に雰囲気を変えたいときや、コード進行を調整するときに代理コードは活躍する
- 代理コードは共通音や機能に注目すると簡単に見つかる
- メジャーキーとマイナーキーでは、代理コードの使い方が微妙に異なる
- ノンダイアトニックな代理コードを使うための理論もたくさんある