グループの歴史の始まりを飾った曲
A.B.C-Zの『明日の為に僕がいる』という曲を、おそらくファン以外に知る人はまだ少ないだろう。この曲は彼らがデビュー前から歌ってきた曲であり、A.B.C-Zというグループの歴史の始まりを飾った曲でもある。
元々は、現在センターに立つ橋本良亮以外の四人のユニット「A.B.C.」から、その歩みは始まっている。ユニット名の由来は「Acrobat Boys Club」。今でもその名に恥じない、ジャニーズ随一のアクロバットパフォーマンスとダンスに特化した実力派として活躍している。
橋本が加入する時点で既にA.B.C.はベテランJr.ユニットであり、固定ファンも多くいた。2008年のとあるコンサート中、突如としてその中へ放り込まれたのが橋本だった。その時に「A.B.C-Z」の結成が発表され、彼が初めてA.B.C-Zとして歌うことになったのがこの曲である。
明日の為に僕がいる
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簡単なことさ「ABC」から やり直そう(As time goes by)
時間に流され(The only thing that does not change)
大事なもの 見失っていたんだ
君とイスを並べ 夢語り合う日々
思い出が 僕を誘う(I am at loss)
もう戸惑わないで Zeroから歩き出そう
今心に誓うよ 頑張れるさ!
≪明日の為に僕がいる 歌詞より抜粋≫
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橋本は事前に事情を知らされないまま、曲を覚えて本番に挑んだという。しかし後から振り返ってみれば、この曲は「A.B.C-Z」というものがありきで作られたようにしか見えない。この歌詞のとおり、A.B.C.につけられたZには「Zeroからのスタート」という意味が込められている。
橋本にとってA.B.C.は完全に先輩であり、その彼らと一緒にやっていくというのは相当なプレッシャーであっただろう。同時に、あまりにベテランユニットであったがゆえに当時彼は「デビューできない人達の中に入れられたと思った」と語っている。
だが逆に、ユニットとして実力はあれど停滞していたA.B.C.にとって橋本の加入は転機であった。のちにメンバーになる戸塚祥太は当時について、「額縁だったA.B.C.というユニットに橋本という画が入ったということ」と喩えている。
このような「ベテランユニットに若手を入れる」というのはしばしば行われてきたことであり、状況として見ればTOKIOの長瀬智也もこれにあたる。松岡昌宏がまさにユニット時代のTOKIO加入時に橋本と同じようなことを感じていたと同時に、長瀬が加入したときには戸塚と同じようなことを思ったという。
若手メンバーの追加はファンにとっては複雑なことだが、彼らにとってはチャンスなのだ。“「ABC」から やり直そう”や“Zeroから歩きだそう”という歌詞に、A.B.C-Zという5人への発展と期待が込められている。
"僕"が表す存在
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明日とは ただ待つだけじゃない
自分自身で 歩いてくもの
迷う日も 遠回りの日も
明日の為に 続いている
歩き出す 未来に何がある?(Uh...just forever)
それは誰も 知らないけど
わかるのは ただひとつだけさ(Ah…)
明日の為に 僕はここにいる
≪明日の為に僕がいる 歌詞より抜粋≫
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この曲には、再出発する“僕”の未来への祝福をするとともに、その背中を押すような詞が書かれている。未来に何があるかわからなくても、踏み出す“明日の為に僕がいる”のだ。この“僕”はもちろんA.B.C.であり、橋本であり、そしてA.B.C-Zだったに違いない。
何も持たない者に情けなどかけはしないだろう。A.B.C.には期待をかけられるだけの実力があった。橋本には彼らについていくだけの根性と、埋もれさせておくには惜しい華があった。
二つの要素が合わさってA.B.C-Zという絵は完成し、数々の同期や後輩のデビューを見送りながらも2012年、ジャニーズ事務所としては異例のDVDシングルデビューを飾ることができた。
これからに期待が高まる彼ら
A.B.C-Zはまだまだ発展途上のグループだ。下積みも長かったとはいえ、デビューしてまだ歴史は浅い。そして、これからもっと発展していく可能性を秘めている。
ファン以外にはまだアクロバットのイメージしかないかもしれないが、『明日の為に僕がいる』はバラード曲。これを最初に歌わされることになった橋本は、メインボーカルとして現在ソロコンサートなどを経験しその歌唱力に磨きをかけ続けている、元より歌へのこだわりが熱い男でもある。
TOKIO長瀬や関ジャニ∞渋谷などを憧れとして挙げる彼だが、その先輩たちに続けるようなボーカリストに成長してほしいものだ。
この曲を機会にぜひ、A.B.C-Zの違う側面にも注目してみてほしい。
TEXT 祈焔(Twitteri)