懐かしいメロディーが耳に残る
『深愛』の作詞は水樹奈々が担当し、作曲を手掛けたのは上松範康。この表題曲は、水樹奈々が出演した「WHITE ALBUM」の主題歌になっている。
一度聴くと、何度も聴きたくなる歌謡曲調の懐かしいメロディーが特徴的だ。いい意味でアニメの主題歌らしくない曲調がこの曲の魅力の1つでもある。
切なさ溢れるイントロ
イントロは心をつかまれるような印象があり、どこか切ないピアノサウンドのメロディーだ。ピアノとアルパが重なり合って、さらに切なさがこみ上げてくる。水樹奈々の歌い始めのブレス音と声が、心地よくメロディーと重なり合い曲が始まる。バラード調の曲であるものの、テンポはゆっくりではなく、”人が早歩き”をしているくらいの速さである。
水樹奈々の父が亡くなった1か月後に、『深愛』は、制作された。制作する過程で、水樹奈々が父を頭の片隅に置き、作詞をした曲でもあり、足早に過ぎ去っていく”時間”やすれ違う気持ちなどが、この曲のテンポと同じように感じられる。
バラードにしてはテンポが速い曲であるが、『深愛』が流れてくると静かに、立ち止まって聴きたくなるような曲である。
幻想的な世界へ引き込む歌詞に注目
深愛
----------------
雪が舞い散る夜空
二人寄り添い見上げた
繋がる手と手の温もりは
とても優しかった
淡いオールドブルーの 雲間に消えていくでしょう
永遠へと続くはずの あの約束
≪深愛 歌詞より抜粋≫
----------------
「WHITE ALBUM」は、1980年代が舞台になっている。どこか懐かしいメロディーとアニメの世界がリンクしている。
「雪が舞い散る夜空二人寄り添い見上げた 繋がる手と手の温もりは とても優しかった」という出だしは、ロマンチックな冬の情景が浮かんでくる。
「オールドブルー」とは、灰色のような青色を指しており、星が見えない曇っている夜空を印象付ける言葉になっている。
「永遠へと続くはずの あの約束」は、水樹奈々自身の”歌手になるという夢”も含まれているのだろう。
互いを思う気持ちは残っている
----------------
交わす言葉と時間 姿を変えていくでしょう
白い頬に解けた それは月の涙
「行かないで、もう少しだけ」何度も言いかけては
「また会えるよね?きっと」何度も自分に問いかける
突然走り出した
行く先の違う二人 もう止まらない
沈黙が想像を超え引き裂いて
一つだけ許される願いがあるなら
「ごめんね」と伝えたいよ
≪深愛 歌詞より抜粋≫
----------------
「交わす言葉と時間 姿も変えていくでしょう」とは、時間が経つことで、2人の関係性が徐々に壊れていく様子が示唆されている。
「行かないで、もう少しだけ」と本当は言いたいが言えず、「また会えるよね?きっと 」と、今は会えないけど(いつか)会えるだろうと信じている。
そのことが本当に正しいのかどうかを自身に問いかける様子が伝わる。自問自答をしている間にも、刻々と”別れ”の時間が迫ってきているということに気付いていないのかもしれない。
サビの「突然走り出した 行く先の違う二人 もう止まらない 沈黙が想像を超え引き裂いて」では、お互いが違う道へと歩みだし、ドンドン引き離されていく2人の様子が伝わってくる。時間は進むばかりで、いつしか、連絡もしなくなり、沈黙の時間が続くことの”切なさ”が伝わってくる。
「一つだけ許される願いがあるなら「ごめんね」と伝えたいよ」この歌詞は、1人が思っていることではなく、お互いに想い合っていることが分かる。
伝えられなかった思いへの後悔
----------------
いくら想っていても届かない
声にしなきゃ 動き出さなきゃ
隠したままの二人の秘密
このまま忘れられてしまうの?
だから・・・ねえ、早く今ココに来て。。。
≪深愛 歌詞より抜粋≫
----------------
「いくら思っていても届かない 声にしなきゃ 動き出さなきゃ」では、伝えられなかったことがたくさんある2人を表現している。
思っているだけでは、相手に届かないことや、声を出し、自分から動き出すことで、変わることができると考えている水樹奈々自身のことだと感じる。これは、ファンに向けてのメッセージにも捉えることができる。
「だから… ねぇ、早く今ココに来て。。。」という歌詞では、すれ違っている間にも話したかったことがたくさんあり、伝えられなかった思いを心にしまい込んでいた2人の気持ちが、重なり合った瞬間である。
問いかける形で「ねぇ、早く今ココに来て」と会いたい気持ちが溢れている様子が分かる。
自分の思いを貫き通す心の強さ
----------------
どんな時もどこにいる時でも
強く強く抱き締めていて
情熱よりアツイ体温で溶かして
あなたへのこの想いはすべて
終わりなどないと信じている
あなただけずっと見つめているの
≪深愛 歌詞より抜粋≫
----------------
これからも、この思いに終わりなどないということが「あなたへのこの想いはすべて 終わりなどないと信じている」でしっかりと自身の意思表示が感じられる。
「あなただけずっと見つめているの」というフレーズで終わるこの曲は、切ない思いが中心に一曲を通して描かれてきていたが、最後は、思い続ける気持ちをずっと忘れないという”未来”への約束が感じられる。
水樹奈々が作詞をした曲はこれまでにいくつもある。『深愛』の歌詞は、水樹奈々が作詞したどの曲よりも切なく、熱いメッセージが込められている。ぜひ、『深愛』という曲を聴いてみて欲しい。
●水樹奈々『深愛』(NANA MIZUKI LIVE CIRCUS 2013+ in Legacy Taipei)
TEXT pooh_nm77