大切なのに傷つける矛盾
----------------誰かを愛する気持ち、一緒にいたいと願う気持ち。大切にしていたはずのものが、いつの間にか色あせてしまうことはしばしばあります。
どうして大切なものって儚くうつろ
やさしさが微笑みさえ色を変えていく
尖る言葉並べてぶつけ合った気持ちは
投げつけた分の激しさで僕の胸を切り付ける
≪愛してるのに、愛せない 歌詞より抜粋≫
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好きな人を、大切に思えない気持ち、そんな自分に嫌気が差すのも、非常にリアルな感情の動きです。
相手を思いやれないから、ちょっとした仕草や言動に苛立ち、言葉をぶつけ合ってしますのです。
しかし、相手を傷つける言葉は結局、自分にも返ってくるもの。
彼女を傷つけた分、自分も傷つき、やがてボロボロになってしまう…そんな、愛の終焉を感じさせる歌詞が胸に刺さります。
----------------愛するということは、とても幸せなことのように思えます。
愛してるのに愛せない
澄んだ瞳がなおさらにまぶしすぎて苛立ちが募る
抱きしめたくて抱けなくて
行き場なくす僕の手から
零れ落ちてく ねぇ君のことを愛してる
≪愛してるのに、愛せない 歌詞より抜粋≫
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好きな人が目の前にいる、ただそれだけで、胸が高鳴り、心が満たされます。
ただ、これまで通り、まっすぐ愛せればいいのに。
いつしか愛は複雑にねじれ、もつれ、愛情を刃で返すようになってしまいます。
好きなのに傷つけ、好きな人の言葉に苛立つ…これほど悲しいことがあるでしょうか。
「好き」という気持ちが迷子になる
----------------確かに愛し合っていたはずなのに、いつの間にか2人の心は違う方向を見始めていました。
いつから迷ったのかな はぐれた2人
求めれば求めるほど愛を見失う
どこにいるの教えて 欲しいものはなかった
迷いもなく好きだといえば君のもとへ行けるかな
≪愛してるのに、愛せない 歌詞より抜粋≫
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愛すれば愛するほど、欲しがれば欲しがるほどに、すれ違いは大きくなり、やがて取り返しがつかないほどに、こじれてしまいます。
好きなのに好きだと言えず、愛したいのに愛せないジレンマに、心はすり減るばかりです。
"今となっては、どうやって君を愛していたのかわからない…"そんな苦しい心の叫びが聞こえるようです。
----------------完全に壊れてしまった、愛しい人との関係。近づけば傷つけ、声を苛立つ、歪な関係に苦しんでいます。
戻りたいのに戻れない
無邪気すぎてたあの場所は記憶の中日差しに揺れてる
わかりたいのにわからない
もがきながら傷つけてた
伝えたい言葉 ねえ君のことを愛してる
≪愛してるのに、愛せない 歌詞より抜粋≫
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"お互い、無邪気に相手を愛していた、側にいられるだけで幸せだったあの日々は、一体どこへ行ってしまったの?"
そんな、答えの出ない疑問ばかりが浮かんでは消えます。
理解しようとしてできず、許そうとして許せず、抱きしめようとしては傷つける自分に疲れ果てたのでしょう。
「愛してる」の一言を伝えることもできないなら、いっそのこと、"あの日に帰りたい…"と願うのです。
壊れるならいっそ…
----------------"きっともう、少し時を戻したくらいじゃどうにもなれない2人だから。それならばいっそ、出会う前からやり直したい。"
あぁ叶うならどうか名前も知らないままの2人から
もう一度出会って辿りなおしてみたい君と
なにも言わず君を抱いてしまえばいいのかい
ねぇ涙色に染まる頬も照らせないまま濡れる心
間違いと間違いが交わりこじれて
せめてあの日までの巻き戻し方を ねぇ教えて
≪愛してるのに、愛せない 歌詞より抜粋≫
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愛しい人と始めて出会ったあの日に、まだ互いの名前も知らない、「気になるあの人」だった日に戻りたいと、切実に願います。
知り合って、恋をして、愛を育んだ2人の未来は、あまりにも暗く、痛いものでした。
出会ったことが、愛したことが間違いだったのでしょうか?いえ、きっとそんなことはありません。
2人には、幸せになれる未来もあったはずです。
それが、様々なすれ違いや過ち、誤解などをくり返す内に、手の施しようがないほどにこじれてしまったのです。
こうなってしまったら、これ以上先へは進めません。
前に進むには、別れを告げるか、時間を巻き戻して、すべてをなかったことにするしかありません。
しかし、時を巻き戻す魔法など、この世に存在しないことも事実。
だからこそ「せめてあの日までの巻き戻し方を ねぇ教えて」という言葉が、悲しいほどに虚しく響くのです。
愛というものは、熱を持っている間は美しく燃え上がりますが、ひとたび熱を失うと、途端に苦く、辛いものに変わる、諸刃の剣です。
果たして、はぐれてしまった愛を再び取り戻すことはできるのか、そんな恋の行方に思いを馳せながら聴くと、一層切なく響く楽曲です。
TEXT 岡野ケイ