東野圭吾の「加賀恭一郎」シリーズ最終作を映画化!
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2018年公開の映画『祈りの幕が下りる時』は、日本橋署の刑事・加賀恭一郎が人形町で起きた焼死事件の真相を追うヒューマンミステリー作品。
原作は東野圭吾の人気ミステリー小説「加賀恭一郎」シリーズの最終作である同名小説です。
「加賀恭一郎」シリーズとは、刑事の加賀恭一郎が登場する東野圭吾作品のことで、全10作品あります。
映像化は2010年のテレビドラマ『新参者』から始まり、その後「新参者」シリーズとしてスペシャルドラマや映画など本作を含めて全5作品製作されてきました。
原作小説と映像作品ともに人気が高く、胸の内をえぐられるような哀しい事件に多くのファンが涙しています。
本作の監督を務めるのは『半沢直樹』や『私は貝になりたい』で重厚な人間ドラマを描く福澤克雄です。
「新参者」シリーズの集大成となる本作のあらすじや見どころを解説します。
映画「祈りの幕が下りる時」のあらすじ
ある日、東京都葛飾区にある荒川沿いのアパートで、死後20日ほど経過した腐乱死体が発見されます。
発見された当初は顔も年齢も不明で、女性であることが判明しただけでした。
その後DNA鑑定された死体の身元が、滋賀県彦根市在住の押谷道子であると判明。
現場となったアパートの住人である越川睦夫も行方不明になっていたため、警視庁捜査一課は越川を加害者として追い始めます。
一方、一課の松宮脩平は、同時期に新小岩の河川敷で起きたホームレスのビニールハウス放火殺人事件との関連性を疑っていました。
越川の部屋を見た時の生活感のなさから、彼と焼死したホームレスが同一人物ではないかと考え、独自に捜査を始めることに。
押谷の行動を追うため滋賀での聞き込みを始めると、明治座の人気演出家である浅居博美との繋がりが浮上します。
ところが完璧なアリバイがあることが判明し、捜査は行き詰まってしまうのでした。
その頃、松宮は遺留品のカレンダーに日本橋をはじめとする12の橋の名前が書かれていることを発見。
加賀恭一郎はその事実を知ると、子供の頃に失踪した母親との繋がりに気づき動揺します。
日本橋署の新参者の原点が明らかになるミステリー作品です。
豪華キャストによる名演技に心が揺さぶられる
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本作の主演を務めるのは、約8年も加賀恭一郎役を演じ続けた俳優の阿部寛です。
自身の基盤と語る思い入れのある役で、完結作ということもあり過去の作品を再度見直して演技に挑んだそうです。
茶目っ気があり飄々とした雰囲気の中にも、人としての芯の強さを感じる刑事を真っ直ぐに演じています。
ストーリーの鍵を握るヒロインを演じるのは、シリーズのファンだという女優の松嶋菜々子です。
気鋭の美人演出家という役どころで、謎の多いミステリアスな雰囲気がストーリーに深みを持たせています。
また、回想シーンの博美役を演じた桜田ひよりと飯豊まりえ、加賀の母親役である伊藤蘭、ストーリーに大きく関わってくる男を演じた小日向文世の繊細な演技も見どころです。
そのほかにも、溝端淳平や田中麗奈、山崎努など「新参者」シリーズでおなじみのキャストも総出演。
完結作にふさわしい豪華キャストで、難解な人間模様が表現されていますよ。
事件と数々の嘘に隠された哀しい真実が泣ける
「新参者」シリーズは「なぜ人は嘘をつくのか」をテーマにしています。
本作でも事件の真相よりスポットが当てられるのが、事件の裏にある人間ドラマと吐かなければならなかった嘘に隠される哀しい真実です。
加賀は関係者と交わした些細な会話から、思わぬ切り口で真実へと近づいていきます。
そのプロセスの面白さに加えて、事件の真相に近づく度に複雑な人間関係や想いに触れる重厚なストーリーが、このシリーズの醍醐味です。
特に本作では、それまで語られなかった加賀自身に関わる秘密も明らかになります。
なぜ日本橋署にこだわっているのか、なぜ父親との確執があるのかなどの疑問が解き明かされ、シリーズのファンにとっても様々な発見があるでしょう。
それぞれの親子が心に宿していた「祈り」がすべて明らかになる結末からは、不器用で温かな家族愛を感じられます。
また、シリーズを通して舞台となる日本橋界隈の人形町の景色も、大切な見どころです。
日本橋を含む12の橋や明治座など、人々の生活に根差した場所が事件に関わる重要なスポットとして登場します。
さらに、震災前後の世相を映す宮城、博美が幼少期を過ごした滋賀、ある人の人生を変えた石川の風景が、ストーリーと相まって観る人の涙を誘います。
登場人物たちがどのように生きてきたかを知ると、犯人にすら感情移入してしまうはずです。
シリーズのファンも初めて観る方も、きっとこの切ない物語に入り込めるでしょう。
「東京」は温かな家族愛を描く主題歌
本作の主題歌は、切ないバラードの名手であるJUJUが歌う『東京』です。
JUJUがシリーズの主題歌を手がけるのは、2011年公開の映画『麒麟の翼 劇場版・新参者』以来の6年ぶりとなります。
この楽曲は、切なく美しいメロディーに優しい歌声が響くミドルバラードです。
歌詞には多くの出会いと別れが訪れる東京を舞台に、大切な人との切ない別れが描かれています。
離れて暮らす愛する人を想う気持ちや、共に過ごした時間の愛おしさなど、忙しい毎日で忘れてしまいがちな大切なことを思い出させてくれるでしょう。
「泣ける」と話題のMVは、萩原健太郎監督による全編ドラマ仕立てになっていて、父親と娘の深い愛を感じられます。
映画内に込められたメッセージと重なり、さらに心に沁みる感動の主題歌です。
映画「祈りの幕が下りる時」から家族について考えよう
映画『祈りの幕が下りる時』は、家族の愛と絆を深掘りした作品です。
罪は決して許されるものではありませんが、悪と分かっていても助けようと必死になれるのが家族なのかもしれません。
本作で描かれる親子の無償の愛は、きっと多くの親子にとって家族の在り方を改めて考えるきっかけをくれるでしょう。
家族の愛は、失ってからでは取り戻すことができない唯一無二のものです。
本作を観て、ぜひ家族の繋がりの尊さを感じてみてください。
TEXT MarSali