甘く切ない恋の行方
日本を代表するアイドル歌手、松田聖子の『SWEET MEMORIES』は、1983年に発売されたシングル『ガラスの林檎』のカップリングとして収録された楽曲です。
オリジナル版では2番の歌詞前半部分が英語詞となっていますが、2020年にデビュー40周年を記念して、全編日本語詞のリアレンジされたものが配信され話題を集めました。
松田聖子の優雅で美しい歌声と、甘く切ない恋模様を描いた歌詞が魅力となっている楽曲です。
そんな歌詞に登場する「甘い記憶」とはどんな意味を持つのでしょうか?
『SWEET MEMORIES』の歌詞を読み解いていきましょう。
なつかしい恋の訪れ
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なつかしい 痛みだわ
ずっと前に 忘れていた
でもあなたを見たとき
時間だけ 後戻りしたの
「幸福?」と 聞かないで
嘘つくのは上手じゃない
友だちならいるけど
あんなには燃えあがれなくて
≪SWEET MEMORIES 歌詞より抜粋≫
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煌く雪が降り注ぐような美しいイントロから、この楽曲は幕を開けます。
歌詞に登場するのは主人公と、過去に恋人関係だった「あなた」。
なつかしい痛みというのは、切ない恋心に胸が締め付けられる気持ちを表しているように感じられます。
久しぶりの再会に時間を巻き戻したいと想う主人公は、あなたと別れたことを後悔しているのでしょうか。
そんな主人公を見たあなたは「幸せ?」と問いかけます。
本心を悟られたくない主人公ですが、過去のように幸せではないことを上手く隠せないようです。
歌い出しから甘く切ない恋模様が描かれていますね。
久しぶりの再会がもたらす恋の行方は、どのような展開が待っているのでしょうか?
続く歌詞を見ていきましょう。
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失った夢だけが
美しく見えるのは何故かしら
過ぎ去った優しさも今は
甘い記憶 Sweet memories
≪SWEET MEMORIES 歌詞より抜粋≫
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夢のようだったあなたとの思い出は美しい記憶となり、失ってから初めて本当の優しさを感じることができるということなのでしょうか。
恋は盲目という言葉がありますが、相手と向き合おうとすればするほどすれ違いや距離ができてしまうもの。
離れてから初めてわかる相手の優しさに気づけることを、この歌詞は伝えているように思います。
色褪せない恋の記憶
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Don't kiss me baby We can never be
So don't add more pain Please don't hurt me again
I have spent so many nights Thinking of you
longing for your touch I have once loved you so much
あの頃は若過ぎて
悪戯に傷つけあった二人
色褪せた 哀しみも今は
遠い記憶 Sweet memories
失った 夢だけが
美しく 見えるのは何故かしら
過ぎ去った 優しさも 今は
甘い記憶 Sweet memories
≪SWEET MEMORIES 歌詞より抜粋≫
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英語詞の部分で主人公は「キスをしないで、私たちは昔のようにはなれないわ」とあなたを振り切ろうとします。
「心の痛みを増やしたくないの」と言っていることから、これ以上傷つきたくないのでしょう。
ここでは恋焦がれる気持ちを抑える主人公の葛藤が感じ取れます。
付き合っていた頃、若かった二人がお互いを傷つけあってしまっていたのは、本気で愛し合っていたからではないでしょうか?
甘い恋の記憶というのは、終わってしまった過去の恋愛から時が経ち、大人になった主人公の心に残る色褪せない思い出を表しているように思います。
昔の恋人との再会がもたらしてくれるのは、恋の再開ではなく、色褪せることのない甘く切ない記憶だと『SWEET MEMORIES』は伝えているのでしょう。
そんな、大人の女性が持つピュアな気持ちが感じられる素敵な楽曲です。
TEXT Roy