「ブラジャー」から始まる歌詞の衝撃
「マイヘア」ことMy Hair is Badの人気曲『真赤』は、2015年に発売された彼らの2ndシングル『一目惚れ e.p.』の収録曲。
その後、2016年に『ミュージックステーション』の特集「アーティストが選んだとっておきの切ない1曲」で取り上げられたことで大きな注目を集めました。
まだメジャーデビューしたばかりだった彼らを一躍有名にした、切ない歌詞を早速見ていきましょう。
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ブラジャーのホックを外す時だけ
心の中までわかった気がした
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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ちょっとドキッとするようなフレーズから始まる『真赤』。
「ブラジャーのホックを外す」というフレーズだけで、男女が2人きりの時間を過ごしている情景が広がりますよね。
そして「心の中までわかった気がした」というフレーズが、2人の関係性を表しているような気がします。
主人公の男性は彼女と心が通じ合っているのかどうか自信がなく、2人きりで抱き合っている時だけ解り合えたような気がするのではないでしょうか。
「ブラジャーのホックを外す」という行為は「彼女の心を開く」と解釈できるかもしれません。
この衝撃的な冒頭を聴くと、この楽曲が大きな注目を集めたことにも納得がいきますよね。
「真赤」の読み方は「まっか」
衝撃的なフレーズで始まった『真赤』ですが、『真赤』の読み方は「まあか」なのか「まっか」なのか悩みませんか?
正解は「まっか」。
果たして『真赤』は何を意味しているのか、続きを見ていきましょう。
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携帯なんて出なくていい
いつの間にか
時間が止まればいい
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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2人きりで抱き合っている時だけ、彼女と解り合えているように感じる主人公は、この時間が少しでも長く続くようにと願っているのではないでしょうか。
そんな主人公の思いが伝わってくるようなフレーズです。
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翌朝、君は先に出ていった
僕にと、鍵、残して
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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抱き合った翌朝、彼女は先に起きて出て行きます。
「鍵、残して」とは、彼女の部屋への出入りを認める合鍵を彼に渡すという意味でしょうか。
きっと2人の関係は、彼女が主導権を握っているのでしょう。
出会いと別れを鮮やかに描く歌詞
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夕立ちの止んだ街が近付けた
ただ陽が落ちた、下北は地下のライブハウス
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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このフレーズは2人の出会いを描いているのではないでしょうか。
出会った場所は、ライブハウスが多く立ち並ぶ音楽の街「下北」こと下北沢。
そう歌っているようなこのフレーズは、ライブバンドとして活動してきた彼らならではのリアリティが感じられますよね。
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いつもは冷たくするくせに
二人の時は優しくするんだね
君は言う「あなた、犬みたいでいい」って
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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いつもは冷たいのに2人の時だけ優しくする彼女は、いわゆる「ツンデレ」でモテる女性なのでしょう。
そして「犬みたい」とは、主人公は彼女が呼べばいつでも喜んで飛んでくような男性という意味なのかもしれません。
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三番線に悲しい音が流れた
曖昧な誓い、会いたいが痛い
バイバイが聞こえなくなるように
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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付き合っているのかどうかよくわからなくて会っても胸が痛む。
それでもツンデレな彼女の言うことを聞かずにはいられない、そんな関係が続いたのでしょう。
そしてある日、彼女は姿を消した。
彼女と最後に別れた場所は駅のホーム。
「流れる悲しい音」とは発車のメロディでしょうか。
まるで主人公の悲しみを表現しているように聴こえてきます。
恋に落ちた男の心理描写がエモい
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春、恋に落ちて
耳を澄まして
君を探して
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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0.1秒で飽きる毎日が
突然、輝き出したんだ
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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今はスマホを見るたび新しい情報が入ってくる時代。
それと同時に、その情報は一瞬で過去に流れて、次の情報を求める時代でもあります。
そんな現代を「0.1秒で飽きる毎日」と表しているのではないでしょうか。
しかし、ネットの情報などたちまちどうでもよくなるくらい彼女を思って毎日が輝き始める。
それが恋に落ちるということでしょう。
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空っぽのコルクボードには
どんな写真があったのか気になった
見つめたまま隣で黙っていた
君の犬なりに気を遣ったんだ
振り向いて欲しくて
なぜか甘えてしまう
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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合鍵をもらった彼女の部屋で、彼女の過去が気になって仕方ないけれど黙っている。
そして、こっちを向いてほしくてつい甘えてしまう。
まさに飼い主に気を使う飼い犬のような主人公の心理です。
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合鍵を返して
首輪を外して
ちゃんと言おうって決めてた
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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それでもいつかは合鍵を返して「犬」とは呼ばせないよう、はっきり「愛している」と伝えようと思っていた主人公。
「恋愛は惚れたら負け」とはよく言いますが、惚れた弱みで彼女に頭が上がらない主人公の心描写が伝わってくるようなエモい歌詞ですね。
「真赤」に見るマイヘア椎木知仁の感性
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ついに失って
それでもいいって
君を待とうって決めてた
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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また髪を切って
ふいに風が吹いて
君に言おうって思ってた
夏の匂いがした
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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彼女が去ってからも忘れられない主人公は、彼女が帰ってくるのを待とう、そして「愛している」と告白しようと心に決めたのでしょう。
その想いの移り変わりを「髪を切って」「風が吹いて」「夏の匂いがした」と季節の移り変わりに重ねているような気がします。
パワフルなロックサウンドに乗せて、美しい言葉で詩的に綴られる『真赤』。
作詞作曲した椎木知仁のアーティストとしての感性に驚かされますね。
「真赤」が意味するものは?
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赤い首輪はついたまま
≪真赤 歌詞より抜粋≫
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最後のフレーズで、ついにタイトルの『真赤』に繋がる「赤」が登場します。
結局、まだ主人公の首につけられたままの赤い首輪は、彼女への断ち切れない想いを表しているのかも知れませんね。
また、「赤」は全ての色の中で最も鮮やかと言える色。
春に出会い夏が始まる前に去っていった彼女の姿は、主人公にとってとても鮮やかな記憶なのではないでしょうか。
首輪をつけた犬のままでいいから彼女に戻ってきてほしいと願う主人公にとって『真赤』は、美しい彼女と過ごした短かくも眩しかった時間を表しているのかもしれません。
情けない恋でもいいじゃない
この歌詞を読んでいると、主人公は彼女の尻に敷かれた上に未練タラタラの情けない男性のようにも聴こえてきますよね。
しかし、恋をすると楽しいことが増える代わりに自分が情けなくなることも起こるもの。
それも含めて恋なのです。
だから自分を否定せず、首輪をつけたままの主人公のように、情けない時は情けないままでいいのではないでしょうか。
マイヘアが2016年にリリースした『卒業』は、『真赤』と同じ女の子の曲だと椎木知仁は語っています。
『真赤』の続編と言えるのではないでしょうか。
果たして情けない主人公と彼女はどうなったのか、気になる方はぜひ聴いてみてくださいね。
・Gt.Vo. 椎木知仁(シイキトモミ) ・Ba.Cho. 山本大樹(ヤマモトヒロキ) ・Dr. 山田淳(ヤマダジュン) 新潟県上越市出身(在住)3ピースロックバンド 。 2013年2月に初の全国流通盤1stミニアルバム「昨日になりたくて」発売。 年間100本を超えるライブ本数を重ね、2014年には1stシングル「だま···