ハイトーンボイスに酔いしれるB'zのかっこいい名曲
『LOVE PHANTOM(ラブファントム)』は、B'zの中でも特に知名度の高い楽曲ではないでしょうか。
タイトルを聞いてピンと来なくても、サビのメロディを聴けば大抵の人は知っているかと思います。
そんなB'zの名曲『LOVE PHANTOM』がリリースされたのは、1995年10月11日。
8枚目のアルバム『LOOSE』の先行シングルとして発売され、26年経った今もなお輝きを放っています。
『ラブファントム』はテレビ朝日系で放送されたドラマ『X-ファイル』第一シーズンの主題歌にも起用されているため、テレビを通して知ったという人も多いかも知れません。
かなりインパクトのあるメロディですが、元々はライブでの演出目的に制作された楽曲で、リリースの予定がなかったというのも面白いところ。
作詞を手がけた稲葉浩志によれば、歌の主人公はドラキュラやフランケンシュタインのような「人ではない」生き物をイメージしたそうです。
どこか怪しく、非日常的な世界観はここから来ているのかもしれません。
また、一部の歌詞を宇徳敬子が担当している点にも注目です。
突き抜けるようなハイトーンボイスが特徴のB'zと女性の声のマッチも見所ですよ。
そんな歌の世界観にも注目しながら『LOVE PHANTOM』の歌詞を解釈していきます。
「いらない何も 捨ててしまおう」
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いらない何も 捨ててしまおう
君を探し彷徨う MY SOUL
STOP THE TIME, SHOUT IT OUT
がまんできない 僕を全部あげよう
≪LOVE PHANTOM 歌詞より抜粋≫
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歌い出しの歌詞は、B'zファンでなくとも耳なじみのあるものでしょう。
このフレーズに曲のすべてが詰まっているといっても過言ではないほど、『LOVE PHANTOM』の世界が見事に集約されています。
「いらない何も 捨ててしまおう」と言ってしまえるほど、すべてをかけて手に入れたい愛。
それはまさに、雷に打たれたような、運命的な出会いだったのでしょう。
星の数ほどいる人間の中から、たった一人の女性に出会い、恋に堕ちる男…ドラマチックなストーリーです。
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ふたりでひとつになれちゃうことを
気持ちいいと思ううちに
少しのズレも許せない
せこい人間になってたよ
≪LOVE PHANTOM 歌詞より抜粋≫
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愛が深まっていく内に、相手を思いやるよりも自分自身の欲望に飲まれ、ひとりよがりになっていく。
愛すれば愛するほど満たされないジレンマに陥っていきます。
恋愛というものは、どちらか一方が愛情を注ぐだけでは上手くいかないもの。
愛が暴走してしまった「僕」は、どれだけ愛されても満足できず、渇望を感じ始めているのかもしれません。
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君がいないと生きられない
熱い抱擁なしじゃ 意味がない
ねぇ、2人でひとつでしょ
≪LOVE PHANTOM 歌詞より抜粋≫
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「2人でひとつ」と聞こえはいいですが、「君」の存在なしには生きられなくなり、「君」を束縛し、支配し始めている危険さが漂っています。
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君が僕を支えてくれる
君がぼくを自由にしてくれる
月の光がそうするように
君の背中にすべりおちよう
(そして私はつぶされる)
≪LOVE PHANTOM 歌詞より抜粋≫
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「僕」が気持ちよくなるために必要とされた「君」は、その後一体どうなったのでしょうか。
「(そして私はつぶされる)」という一文が不穏です。
幻を愛した男の狂気と悲しみ
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濡れる体 溶けてしまうほど
昼も夜も離れずに
過ごした時はホントなの
君は今何おもう
≪LOVE PHANTOM 歌詞より抜粋≫
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「君は今何おもう」という歌詞から、「君」がいないと考察できます。
昼夜問わず一緒にいた、愛し合った人が、今はどこにもいない。
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腹の底から君の名前を
叫んでとびだした It's my soul
カラのカラダがとぼとぼと
はしゃぐ街を歩く
≪LOVE PHANTOM 歌詞より抜粋≫
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身体を重ねる快感に溺れ、身勝手な愛情で壊してしまった愛しい「君」。
その人を失った今、あれほど満たされていたはずの身体も空っぽで、足取りもおぼつかないようです。
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丁度 風のない海のように 退屈な日々だった
思えば花も色褪せていたよ 君に会うまでは
≪LOVE PHANTOM 歌詞より抜粋≫
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「僕」にとって「君」の存在は、色褪せた世界を鮮やかに染めてくれる救世主。
そして、欲望全部を受け止めてくれる女神のような存在だったのかもしれません。
ラブファントム(LOVE PHANTOM)の意味
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欲しい気持ちが成長しすぎて
愛することを忘れて
万能の君の幻を
僕の中に作ってた
≪LOVE PHANTOM 歌詞より抜粋≫
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タイトルにも入っている「PHANTOM」という英語には、幽霊や幻といった意味があります。
『LOVE PHANTOM』に込められた意味は、まさにこれではないでしょうか。
愛する余り、欲する余り、いつしか一人の女性としてではなく、理想の存在へと作り替えてしまった「僕」の罪。
いつしか「僕」が愛していたのは「君」ではなく、「万能の君の幻」だったのです。
等身大の姿を見失えば、求める要求も大きくなり、欲望のままにワガママをぶつけることになるでしょう。
そして、一番愛しいはずの人を自らの手で壊してしまったことに、今さら気が付くのです。
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いらない何も 捨ててしまおう
君を探し彷徨う MY SOUL
STOP THE TIME, SHOUT IT OUT
がまんできない 僕を全部あげよう
幻をいつも愛してる
何もわからずに
≪LOVE PHANTOM 歌詞より抜粋≫
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目の前にいる「君」のありのままの姿ではなく、理想化した幻の姿を愛する「僕」。
どこにも存在しない幻を追い求める姿には、狂気と虚しさが漂っているようです。
きっと、いつまでも手に入れることのできない愛、満たされることのない欲望こそが『LOVE PHANTOM』なのでしょう。
「僕」が行き着く先には何があるのか、考えさせられますね。
溢れ出す情熱は、時に人を突き動かし、心満たしてくれます。
「でも、一歩間違えば破滅ヘと向かう…」
そんな愛の相反する面が、多くの人を惹きつけて止まないのかもしれません。