UVERworld新曲は人気アニメエンディング曲
UVERworldのニューシングル『NAMELY』が2021年6月2日に発売されました。
この楽曲は人気TVアニメ『七つの大罪 憤怒の審判』のエンディングテーマ。
人気作品のテーマソングということで、注目度も高い新曲は、作品世界とのマッチングはもちろん、現実世界にリンクするような歌詞が印象的です。
今の時代を表す象徴的な言葉は「コロナ禍」でしょう。
これまでのようにライブができず、ツアーを組んで全国公演を行うことも難しいご時世だからこそ、バンドはそれぞれ工夫して、ファンに音楽を届ける術を模索しています。
レコード会社からCD形態で新曲が発売される従来の形だけではなく、配信リリースという手法が浸透してきました。
働き方はリモートが増え、曲作りでさえも自宅で作業し、リモートで行えるようになりました。
音楽業界を取り巻く環境がここ1~2年で大きく変動していることは確かです。
そんな中で発売された曲だからこそ、歌から伝わるメッセージを非常に強く感じます。
オープニングではなくエンディングに相応しい、聴く人の心に寄り添うようなメロディ。
曲全体に流れる世界観と優しい歌声と共に、歌詞に込められた意味も考察しながら紹介していきます。
唯一無二の出会いと永遠への憧れ
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初めて目が合った時 例えば普通の感覚は
ハイタッチくらいなもん 流れてく程度だとしたら
あの日 君と目が合った瞬間に感じたのは
手と手を握り合ったような感覚だった
≪NAMELY 歌詞より抜粋≫
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人生を生きていると、数え切れないほどの人との出会いがあります。
そんな中でも自分にとって特別だと感じる出会い。「手と手を握り合ったような感覚だった」という表現が秀逸です。
明らかにこれまで出会って来た人とは違うものを感じたのでしょう。
どんなにかけがえのない人であっても、生きていく中ですれ違ったり、別れたり。
一緒に過ごせる時間は長くないかもしれません。
いつか、もしかしたら明日、別れの時が訪れるとしても、今だけは一緒にいたい。
そんな切実な思いがひしひしと伝わってきます。
大切な人と過ごす幸せなひとときは、永遠にも感じるもの。
穏やかで幸せな時間がずっと続けばいいと、願わずにはいられません。
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気づかないふりをして このままもう少し一緒に居ようよ
どんなに悲しい終わりだって 素敵な思いに変えるから
こうしてる今は 乱暴な例えかもだけれど
このまま終わって良いと思うほど幸せだよ
≪NAMELY 歌詞より抜粋≫
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楽しい時間は永遠ではない。そのことに気づいていても、今は目をつむって、見ないことにしようと決めたのでしょう。
「このまま終わって良いと思うほど幸せだよ」という歌詞に、仲間や大切な人への愛情深さを感じます。
人生の中で、ほんの一時でもこのように思える時間があったら、きっとその人の人生は豊かなものだと言えるのでしょう。
迫り来る終わりの予感
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失いものを探し 気付かずに進んでた
思えばわずかに 砂が舞っては消えてった
埋めてはいけないドーナツの穴 距離感はもう
埋めては意味を失うものなのか?
≪NAMELY 歌詞より抜粋≫
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足りないものを探して突き進んでいく内に、かえって失っているものもあります。
「ドーナツの穴」が意味するものは、埋めてはいけない適度な距離感でしょうか。
人には、それ以上踏み込んではいけない領域があり、それを侵せば、互いの関係に亀裂を生じさせることもあります。
あまりにも一生懸命になりすぎて、前が見えず、気づいたら関係が壊れてしまっていた…ということは、現実にも起こりうることです。
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落ち葉をすくうように 心をさらって
このまま離れても変わらないという事を
それも分かってる でも今はあともう少しだけ
≪NAMELY 歌詞より抜粋≫
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信頼関係を築けている相手なら、たとえ会えなくなっても、関係は変わらないはず。
頭では分かっていても、いつも隣にいた人と会えなくなることは寂しいものです。
別れを予感しながらも「今はまだ…」と、一緒にいられる時間を愛おしく思う。
「あともう少しだけ」という歌詞に、1分1秒でも長く一緒にいたいという願いが込められているような気がしますね。
『NAMELY』に描かれる避けがたい運命
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永遠なんていう 言葉を使う君と
明日には消えてしまうとしても 騙されていたい僕
タイムリミットが まだ先だと思ってた頃
あの月さえ遠く感じてなかったよ
≪NAMELY 歌詞より抜粋≫
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「タイムリミット」という言葉に、楽しい時間の終焉を感じます。
出会った頃は、別れの時がやってくることなど考えもしないでしょう。
永遠に一緒にはいられないことが分かっていても、「今」という時間が永遠に続くように感じてしまうものです。
刻一刻と迫っていた終わりにようやく気づいた時、いかに特別な時間だったかを思い知るのでしょう。
楽しい夢から覚めるように、長い旅が終わるように、「君」との時間が終わっていく。
「永遠なんていう 言葉を使う君」に騙されていたいと願うほど、終わりの時を迎えるのが辛いのです。
ほんの気休めでも「永遠」という「君」の言葉を信じたいという「僕」の思いは、誰しも感じたことのある願いではないでしょうか。
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惹かれ始めた逆の手順で 離れられやしない
運命が目を離してる隙に あともう少しだけ
≪NAMELY 歌詞より抜粋≫
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「君」と「僕」が離ればなれになることが運命だとしても、運命さえ騙して一緒にいられたら…。
「運命が目を離してる隙に」という歌詞には、”あと少し…あと少しだけ”という悲痛な願いが込められているようです。
幸福な時間が終わると察した時、無駄だと思っても足掻いてしまうのが人間ではないでしょうか。
ほんの一瞬、気休めでも”運命から逃れられるかも””運命を変えられるかも”と感じてしまう瞬間はあります。
結局、何も変えることはできずに悲しい別れを迎えることになるとしても。
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気づかないふりをして このままもう少し一緒に居ようよ
どんなに悲しい終わりだって 素敵な思いに変えるから
こうしてる今は 乱暴な例えかもだけれど
このまま終わって良いと思うほど幸せだよ
≪NAMELY 歌詞より抜粋≫
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いつか、そう遠くない未来に「君」と離ればなれになるとしても、今が幸せなら構わない。
別れを受け入れた訳でも、運命から逃れることを諦めた訳でもなく、ほんのひとときの気休めに過ぎません。
それでも「このまま終わって良いと思うほど幸せだよ」と言えるなら、2人が過ごした時間はとてつもなく幸せだと言えるのではないでしょうか。
コロナ禍だからこそ響く歌詞
『NAMELY』には、避けることのできない別れが描かれています。
それでも、1度きりの人生で、かけがえのない存在を見つけられることは素晴らしいこと。
出会えたことを悲しむ必要はありません。
一瞬一瞬を大切に、心に刻む。その尊さが『NAMELY』には詰まっているのです。
アニメのエンディング曲でありながら、聴く人の心に強く訴えかけるこの歌。
その秘密は、歌詞に込められた意味にあるのかもしれません。
作詞を手がけたメンバーのTAKUYA∞によれば、『NAMELY』の歌詞には長引くコロナ禍の中で感じた、バンドとしての思いも込められているようです。
思うようにライブができない、音楽を届けることができないからこそ、バンドの終焉についても考える。
高齢になっても音楽活動をしている人はいますが、永遠ではありません。
バンドにもいずれ終わりは来ます。普段通りに活動できている時には考えないことを、コロナ禍で考える…そんな人は多いのではないでしょうか。
まさに『NAMELY』はコロナ禍だからこそ生まれた楽曲とも言えるでしょう。
だからこそ、コロナ禍を生きる人々の心に刺さるのです。
『七つの大罪』の世界観と、今のご時世だからこそ胸に響く歌詞をじっくりと堪能してみてください。