TK from 凛として時雨 初のベストアルバム収録の新曲が「コードギアス」15周年を飾る
人気スリーピースバンド・凛として時雨のギターボーカルを務めるTKが、ソロプロジェクト10周年の節目となる2021年10月13日に初のベストアルバムを発売。
ベストアルバム収録内容には、n-buna fromヨルシカRemixの『unravel』や『melt with suis from ヨルシカ
』といった豪華なコラボ楽曲が満載です。
また、TVアニメ『東京喰種 トーキョーグール :re』最終章のOPテーマに起用されている『katharsis』をはじめとする様々なタイアップ曲も収録され、TKの10年の軌跡がぎゅっと凝縮されたアルバムとなっています。
このアルバムで新曲としてリリースされたうちの1曲である『will-ill』は、2006年の放送以来根強い人気を誇るTVアニメ『コードギアス -反逆のルルーシュ-』の放送15周年を記念する再放送企画のEDテーマに起用されています。
疾走感のあるサウンドに力強いシャウトと呟くような歌声が混じり、心を掻き立てられるような楽曲です。
歌詞にはアニメのストーリーに合わせたフレーズが散りばめられ、TKらしい風刺の効いたメッセージ性の高い楽曲に仕上がっています。
どんな内容になっているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
愛する妹の幸せのために突き進む主人公
----------------
七つの光 碌でもない独りよがり
命のオーダー 失意は共犯
見つめてあげるから 服従してごらんよ
意識はいつからか もう零だろう
Transparency すべて失くしても
君のことを離さないから
≪will-ill 歌詞より抜粋≫
----------------
「見つめてあげるから服従してごらんよ」の歌詞が示すのは、主人公のルルーシュに発現したギアス“絶対遵守の力”です。
この部分では、対象と目を合わせることで服従させられるギアスを用いて、神聖ブリタニア帝国への復讐のために手段を選ばず行動するルルーシュの人物像が見えてきます。
「禄でもない独りよがり」で突き進み、あらゆる「命のオーダー」をして国や人々を混乱に陥れます。
母国であるブリタニアへの「失意」をパワーにし、同じく失意で繋がった仲間と戦っていく姿が窺えますね。
さらに「失意」という言葉には「C.C(シーツー)」の存在が感じられます。
C.C.が共犯となってルルーシュを支えていることも表現されているのでは?
そして「意識はいつからかもう零だろう」というフレーズは、ルルーシュが仮面の男・ゼロとなったことを表しているのでしょう。
ルルーシュとしての意識がゼロに奪われてしまうほど、復讐心が育っていることが伝わってきます。
実はここまでの歌詞でカウントダウンがされていることに気づきましたか?
「七つ」から始まり、「禄(六)でもない」、「命(五)」、「失意(四)」、「見(三)つめて」、「服従(二)」、「意識(一)」、「零」と進むカウントダウン。
一つ一つの言葉に意味を持たせるだけでなく、言葉同士の繋がりを持たせることで楽曲とアニメ両方のこの先の展開に期待感が高まりますね。
続く「Transparency」は「透明性」を表す単語で、物事の本質が明らかになる様子を示しているのかもしれません。
もし事実が明らかになって他の「すべてを失くしても」最愛の妹ナナリーのことだけは絶対に守ろうとする強い気持ちが「君のことを離さないから」という言葉で宣言されています。
----------------
朽ちるまで奪わせて
突き刺さすまで愛させて
すべての憎しみを逆さまにして
願いを放った
Bloody Transparency
剥がせない罪達を一つに繋いで
己よ くたばれ
≪will-ill 歌詞より抜粋≫
----------------
サビの歌詞にも、ルルーシュの激しい感情が込められているように感じられます。
憎しみの反対の言葉は、愛や慈しみ。
国や父親に対して抱く強い憎しみの感情は、そのままの熱量で妹への愛情となって、妹との幸せのために世界を変えたいという大きな野望となりました。
大勢の人が血を流したことにより見えてくる真実は、確かに「Bloody Transparency(血まみれの透明性)」と言えるかもしれませんね。
ルルーシュは自分のしていることが罪だと分かっていて、決して妹の耳に入れたくないとも思っています。
しかし、野望を遂げるためにそうした「剥がせない罪達」を背負う覚悟を決めているようです。
----------------
汚れた僕が君には何色に見える?
誰にも似合う幸せなんかいらないよ
誰にも見えない願いも 世界も
君にだけ映した 見える?
≪will-ill 歌詞より抜粋≫
----------------
妹のためとはいえ、多くの罪で汚れた自分をふと見つめ直すこともあります。
トラウマで瞼を開くことができなくなったナナリーは、ルルーシュの姿を見ることはできません。
それでも「何色に見える?」と尋ねるのは、彼女の中でだけは妹を愛するただのルルーシュでいたいと思うからなのではないでしょうか。
彼が求めるのは、もはや目に見える平凡で「誰にも似合う幸せ」ではありません。
妹のためだけに捧げる幸せとは、どんな景色なのでしょうか。
もし自分がルルーシュの立場だったら、同じように他のすべてを捨ててでも大切な人のために行動できるだろうかと考えさせられますね。
苦しい感情も力に変えて
----------------
放つの光 苦しい夢物語
天才は猛毒 11って冒涜かい?
位置についてごらんよ 意味の不明な暴徒
意識はいつからか もう無限だ
≪will-ill 歌詞より抜粋≫
----------------
どんなに幸せを願っても目の前の現実は無情で、願いを叶えることが「苦しい夢物語」のように感じてしまいます。
ルルーシュは優れた頭脳の持ち主ですが、その賢さは時に「猛毒」のように自分自身を苦しめることさえあり、思い悩む様子が垣間見えます。
「11(イレブン)」とは、戦争を経てブリタニアに支配され“エリア11”と名づけられた日本のこと。
ブリタニア人が蔑称として日本人を「イレブン」と呼ぶことは確かに「冒涜」で、ブリタニアに敵対するルルーシュにとっても同じと言えるでしょう。
ゼロとして活動する彼は憎しみに心を落としながらも、持ち前の頭脳と妹への愛による無限の力で敵に立ち向かっていきます。
----------------
憎しみよ こちら向いて
悲しみよ こちら向いて
すべての醜さは 僕だけのものだ
すべての痛みは 僕だけの
鮮やかな革命が血だらけに見えるんだろう?
逆さまの Transparency
≪will-ill 歌詞より抜粋≫
----------------
ここでは「憎しみ」「悲しみ」「醜さ」「痛み」という苦しさのにじむ言葉が並んでいます。
本来なら避けて通りたいそれら負の感情を、ルルーシュはあえて自分の中に取り込もうとしているようです。
それは、その負の感情がなければ敵を打ちのめすことを躊躇してしまうからかもしれません。
敵の中にも大切に思う人がいる時、最愛の人のためであってもその人をためらいなく傷つけられる人がどれほどいるでしょう。
そう考えると、完全無欠に見えるルルーシュの人間らしい部分を感じ取ることができますね。
革命を起こそうとすれば、必ず誰かが傷つくことになります。
目を覆いたくなるような現実の中で、何が正しいのかを人は考え続ける必要があるのではないでしょうか。
----------------
願いを放った
Bloody Transparency
欺いて 抱きしめて
君だけを繋いで すべてを捧げた
この心臓突き刺して
その隙間から会いに行ける
≪will-ill 歌詞より抜粋≫
----------------
ゼロとして周囲の人を欺き、ルルーシュとして妹を抱きしめる日々。
そんな偽りだらけの生活の根底にあるのは、ただ妹を一心に愛する気持ちだけです。
自分を傷つけるとしても、それで彼女と共にいられるなら何だってしてみせる。
そんな狂気にも似た愛情がルルーシュを突き動かしていることが分かります。
決して曲げられない強い意思の土台は純粋な愛
----------------
君のために奪うなら 君のために失うから
命を引き裂いて 光に透かして
プリズムを超える
剥がせない罪達を一つに繋いで
己よ くたばれ
≪will-ill 歌詞より抜粋≫
----------------
奪うのも失うのも、ルルーシュの行動のすべての理由は妹ナナリーです。
妹のために苦労して得たものであっても、それが妹の幸せを害すのならためらいなく手放すことができます。
「プリズム」とは光を屈折させる透明体の三角柱のこと。
「プリズムを超える」という言葉から、常識に抗って光が真っ直ぐ伸びる様子を想像できるでしょう。
ここまでの歌詞と同じように透明のプリズムも「真実」と捉えるなら、どんな真実に直面しても決して曲げないルルーシュの強い意思や信念のことを歌っていると考えられますね。
また、プリズムは虹が生まれるのに大きな影響を与えるものなので、冒頭に出てきた「七つの光」もこのプリズムと関連していると解釈すると、真実を知った先に希望が待ち受けているような印象を受けます。
----------------
Transparency
君が目覚めれば
何色だって美しいから
≪will-ill 歌詞より抜粋≫
----------------
最後に「君が目覚めれば何色だって美しいから」という素敵なフレーズで締めくくられています。
もし再びナナリーの目が開けるなら、ルルーシュには世界のどんな景色も美しく見えるのです。
それほどまでに真っ直ぐに妹の幸せを願えるルルーシュほど、ピュアな人はいないでしょう。
だからこそ15年経っても変わらず愛され、その強くひたむきな姿に心を打たれるのかもしれません。
この楽曲のタイトルに用いられている「will」は「意思」を、「ill」は「病気」を意味する単語です。
「ill-will」とつなげると「反感・悪意」を意味するようになりますが、あえてひっくり返して用いられています。
この点に注目すると、人の悪意で塗り固められた世界はやがて覆されるということを表しているように感じられます。
歌詞から考察すると、ルルーシュが妹のために復讐を誓う意思が病気のように彼の心を巣食っていることを示しているのではないでしょうか。
願うのは妹の幸せだけ。
それが叶うのならどんな罪を背負おうが些細なことなのです。
憎しみが原動力になることもありますが、愛は憎しみをも超越した力があります。
大切な人を想って行動する時、人は世界を変えるほどの大きなことを成し遂げることができるという無限の可能性が伝わる歌詞に引き込まれますね。
「will-ill」がコードギアスの魅力を伝えてくれる
TK from 凛として時雨の『will-ill』は、アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』の世界観をそのまま切り取り、さらに力強く押し上げるような熱意と優しさが込められた楽曲です。ベストアルバムの発売日には、ジャケットにコードギアスのビジュアルを使用したシングル『will-ill』の完全限定盤CDも同時リリースされます。
コードギアスファンもこれからアニメを観始める方も、ぜひ音楽でコードギアスの魅力を感じてみませんか?
TEXT MarSali
凛として時雨のフロントマンでボーカル&ギターであり、全作曲、作詞、エンジニアを担当し鋭く独創的な視点で自らの音楽を表現している。 2012年にリリースした「abnormalize」は、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」OPとしても話題を呼んだ。 ソロプロジェクトである「TK from 凛として時雨」···